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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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仮入部と創部

「仮入部って、他に興味のある部活とかないの?」

 私はあっさりとかり入部を決めてしまったオカルリちゃんに 思わずそう問い掛けてしまった。

「既存の部活とかだと、合いそうなのが無くて、帰宅部の予定だったから、全然構わないよ」

 そんなオカルリちゃんの言葉に、茜ちゃんが「でもぉ、オカルリちゃんなら、自分で部活作りそうだと思ったんだけどぉ」と、どこか期待するような気配の混じる問い掛けをする。

 対してオカルリちゃんは「そうかな?」と首を傾げた。

「確かに、行動力だけはあるからな、茜がそう思うのもわかる気がする」

 ユミリンがそう言うと、オカルリちゃんは「あーでも、私、ほら、求心力みたいなの無いから」と返す。

「そんなわけで、ハヤリンが部長やってくれるなら、部活作っても良いかも」

 オカルリちゃんの上段とも、本気とも撮れるような撮れないような発言に、私は「え、私!?」と驚きで少し大きめの声が飛び出てしまった。

「るさん、凛華様を悪の道に誘わないでください」

 ぬっと私とオカルリちゃんの間に割って入りながら、史ちゃんがとてつもなく抑揚のない声でズバリと言い放つ。

 対して、オカルリちゃんは「あらぁ~~」と何か企んでいるような顔を見せた。

「悪の道とは限りませんわよ、フミキチさん」

 徐々に近づきながら、オカルリちゃんは笑みを深めつつ、そう囁く。

 対して史ちゃんは「いいえ、絶対に悪です!」と断言した。

 完全に平行線の気配が漂っているのに、オカルリちゃんは怯むどころか、態度を変えること無く微笑み続ける。

 明らかに何かがあるという直感が、私の好奇心を強く刺激してきて、ついワクワクしてしまった。

 そんな気持ちで待ち構える私の耳に、オカルリちゃんの言葉の続きが届く。

「例えばですよぉ~私の部活が、ハヤリン、いえ、林田凛華様親衛隊、もしくはファンクラブ、だとしたら、それは悪でしょうか?」

 耳に入ってきた想定外の言葉に、頭が理解を拒み、思考が停止した。

 そんな私の視界の真ん中で、強いショックを受けた史ちゃんが膝から崩れ落ちる。

 崩れ落ちた史ちゃんに、ニヤニヤとどう見ても悪人のような笑みを浮かべたオカルリちゃんが「どうなの、悪なの?」と問いを重ねた。

 対して、両手両膝を床に付けていた史ちゃんは、錆びた機械のような擬古値のない動きで頭を上げると「悪なワケがありません……むしろ正義です」と言い出す。

 そんな史ちゃんに、オカルリちゃんは手を差し伸べながら「思い込みは可能性を潰してしまうんだよ、フミキチ!」と声を掛けた。

「自分の考えの浅さに気付きました……もの凄く悔しいですけど……」

 史ちゃんは本当に悔しそうにいいながらオカルリちゃんの手を取る。

 オカルリちゃんの手を借りて立ち上がった史ちゃんは「委員長」と視線を向けながら声を掛けた。

「何かしら?」

 急に振られたのに、委員長は動じる様子も見せず平然と返事をする。

「凛華様を崇拝する部を作るにはどうしたらいいか教えてください!」

 全く躊躇いのない史ちゃんの富んでも発言で、私は一気に我に返った。

「まって、何それ、部活!? そんな私的なの駄目に決まってるよね!」

 私の強めの言葉に、委員長は「顧問、メンバーが揃って、公序良俗に反してなければ、許されるんじゃ無いかしら」と言い出す。

 もの凄く冷静にいう委員長に、思わず「えぇっ」と驚きが声になった。

「ん?」

 すると、委員長が不思議そうに首を傾げてくる。

「い、いや、だって、おかしいですよね。個人を崇拝する部活とか!」

 私がそう返すと、委員長は「例えば、聖母マリア様の奇跡を探求する会とか、弘法大師の足跡を辿る会とか、個人の偉業を学び、足跡を記録して研究する部活というのはあり得るわよね」と返してきた。

 一瞬、確かに個人を研究してるなぁと思って、反応に遅れてしまったが「そ、それ俳人じゃない! 私は偉人じゃないし!」と慌てて主張する。

「奇跡の人だとは思うけど?」

 意味深な笑みを見せる委員長に、具現化を見せてしまったことを私は全力で後悔し始めていた。

 そんなタイミングで、茜ちゃんが「こらぁ、美保ちゃん! あんまり凛花ちゃんをからかったらダメだよぉ」と割って入ってきてくれる。

 助けが来たということに感動してしまって気付くのが遅れたけど、茜ちゃんが気になる私的をしていた。

「え? からかう?」

 確かにそう言っていたよねと思いながら委員長を見れば、その当人はちょろりと下を出している。

「は? え?」

「だって、凛花ちゃん、本気で狼狽えるのが、可愛くて~」

 私に向けられた委員長の目に妖しい光を感じて、思わず背筋が寒くなった。

 これを指摘するのは危険だと、私の中の何かが訴えているので、敢えて触れずに「流石に、私のファンクラブとか、部活とかあり得ないですよね」と溜め息を吐き出す。

 そんな私に対して、委員長は「いや、大野先生とか顧問になってくれそうだし、名称をどうにかしたら、申請は通るんじゃ無いかしら」と返してきた。

「はぃ?」

 意図せず、聞き返す私の声が裏返ってしまう。

 そんな私を見て笑みを深めながら、委員長は「勘違いしてるみたいだけど、そんな部活は作れない……じゃなくて、凛花ちゃんが作ってほしくないなら作らないって話よ」といった。

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