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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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事態の中心は

「姫のそばに一日いないだけで、そんなに大きく事が起きるなんてね。もの凄い影響力だね」

 演劇部の部室について簡単な状況説明すると、話を聞いたまどか先輩が手を叩いて笑い出した。

「いや、たまたまいろんなタイミングが重なっただけで、ですね……」

 私の説明を、ユミリンが「いや、どう考えても、リンリンが中心になってるでしょ」と横やりを入れてくる。

「そうね、切っ掛けはどう考えても凛花ちゃんよね」

「い、委員長まで!?」

 私が驚きで声を上げると、千夏ちゃんが「凛花ちゃんの認識がどうなっているかわからないけど、皆、中心は凛花ちゃんだと思ってると思うよ」と困り顔で言った。

 そんなわけ無いと思いながら、視線を巡らせる。

 加代ちゃんは視線を逸らし、史ちゃんは目を輝かせているように見えた。

 私が視線を向けたことに気が付いた茜ちゃんは、目を閉じてうんうんと頷いている姿からは、私が中心じゃ無いと否定してくれそうな気配はない。

『そういえば!』と思って、演劇部の部室まで付いてきたオカルリちゃんに視線を向けた。

 バチッと視線が交わった直後、オカルリちゃんは「事実はねじ曲げられないモノだよ、ハヤリン」と言ってくる。

 ここで、背後に回ってきていたお姉ちゃんが声を掛けながら、私の肩に手を置いた。

「中心になるつもりが無くても、なる人っているのよ。一般的にはスタァの風格みたいに言われるヤツね」

「お、お姉ちゃん?」

 背後を振り返った私と大姉ちゃんの視線が交わる。

「凛花の自覚と、皆の認識が違うのはわかるでしょ?」

「そ、れは……」

 正直、それは嫌というほどわかっていた。

 仮に、それが私じゃ無くて、例えば私の教え子だったら、間違いなく背中を押すくらい、皆の期待を見事に集めているし、大雨風の目になってもいる。

 覚悟を決めるために、私は長い溜め息を吐き出した。

 諦めの境地で目を閉じて右手を小さく挙げながら「不本意ながら、認めます」と宣言する。

 その上で目を開いて「どうせやるなら、全力でやろうと思うので、皆にも付き合って貰うからね!」と宣言した。


「クラスでグループアイドル、部活で新人賞に、文化祭公演、神社で神楽舞い……と、いや、本当に引っ張りだこだね」

 指を折りながら、その数が増えるほどに、まどか先輩の苦笑いの苦みが増していった。

「でも、不可能じゃ無いと思うんです」

 まどか先輩の発言に対して、ノートにメモを取りながら、委員長は笑ってみせる。

「確かに不可能じゃないかもしれないけど、その、凛華の姉としては、心配だわ。凛華は丈夫な方ではないし」

 お姉ちゃんが少し堅めな表情でそう口にした。

 誰でも無くお姉ちゃんが釘を刺したのは、自分が嫌われ役になっても良いと思ってるからだと思う。

 それくらい、(わたし)を大事に思ってくれているのだと思うと、申し訳なさと嬉しさで胸が一杯になった。

「そこは安心してください。私は凛花ちゃんを全力で支えるつもりですけど、無理をして貰うつもりはないので!」

 自信満々に宣言した委員長と、お姉ちゃんの間に入るように飛び出した茜ちゃんが鼻息も荒く「あの、美穂ちゃん……いいんちょーがやりすぎだなぁって思ったらぁ、エイっていいんちょーを止めるので、安心してください!」と行って腕を振り回す。

「ちょっと、茜、危ないから腕を振り回さないで!」

 無茶苦茶に振り回される腕を見事に避けながら、委員長が茜ちゃんにストップを呼びかけた。

 そんな二人を放置したまま、加代ちゃんが「私もちゃんと見守ります!」と宣言する。

「凛華様のことは、私にお任せください。お姉様!」

 真面目な顔で史ちゃんが言い、千夏ちゃんも「私だって、きっちりフォローするし、演技も私が教えられることは教えます!」と断言した。

 皆の言葉を聞いて、お姉ちゃんは苦笑しながら「嫌だわ。別に私は反対しているわけじゃ無いのよ。皆の反応だけでも凛華を皆が大事にしてくれているってわかるしね」と言う。

 それから私を見て「珍しく、凛華もやる気みたいだし、皆で協力して全てを大成功に導きましょう!」と力強い笑顔を見せた。

 さすがは部長と言うべきか、その言葉に皆から「はい!」という力のこもった返事が引き出される。

 成り行きを頷きながら見ていたまどか先輩が「それじゃあ、皆はさしずめ、凛華姫親衛隊ってところだね」と言い出した。

「し、親衛隊って……」

 まどか先輩の発言に大袈裟すぎると思った私は苦笑したのだけど、皆の反応はまるで違う。

 揃いのはちまきやハッピを作ろうとか、応援歌はどんなのが良いかとか、親衛隊の結成は決まった上での話し合いを始めてしまったのだ。

「え、ちょ、親衛隊って、本気でやるの!?」

 あまりの状況に変な汗を掻きながら私が聞くと、ユミリンが「え、アイドルなら当たり前じゃない?」と真顔で返されてしまう。

 そんなユミリンの言葉に戸惑っている私に、まどか先輩は「姫、覚悟は決めたんでしょ?」と笑顔で尋ねて来た。

 まどか先輩の指摘通り、覚悟もしたし、皆を巻き込む宣言までしている以上、今の私に全部飲み込む以外の選択肢はない。

 肩にのしかかるプレッシャーを長い息に乗せて吐き出した私は、否定して皆のやる気を削りたくないと考えて「もの凄く恥ずかしいですけど、よろしくお願いします」と頭を下げた。

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