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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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終了とこれから

「許可を貰って触れるのは良いよねぇ」

 私の耳に触れた後、茜ちゃんは感触を反芻するように、何度も自分の手を開いたり閉じたりしながらそう呟いた。

 意味がわからなかったので「どういうことですか?」と聞いてみる。

 すると、茜ちゃんは「だって、本物の動物さんには聞けないでしょう?」と返してきた。

「なんとなく、雰囲気で良いよって行ってくれてるような気はするけどぉ~。ひょっとしたら触りたいからそう思い込んでるだけかもしれないでしょう?」

「なるほど、確かに。動物が本当はどう考えているかはわからないですよね。犬だと尻尾振ってたら嬉しそうとかわかっても」

 茜ちゃんの意見に、確かにと思いながら大きく頷く。

「その点、リンリンはちゃんと確認できるからいいよな」

 そう言いながら、ユミリンが近づいて手を伸ばしてきたので、少し意地悪かなと思ったけど、キツネ耳を消し去った。

「「「ああっ」」」

 ユミリンが落胆の声を上げるのは予想していたけど、予想と違って声はいくつも上がる。

 思いの外落胆する人がいたので、私は「先生がいつ戻ってくるかわからないし、取り外しが出来無いので、仕方が無いですよね?」と告げた。

 私の発言に、委員長が怪訝そうな顔で「取り外し?」と首を傾げる。

 いろいろ知ってそうな委員長だけど、テーマパークとかには詳しくないのかなと思って、両手を広げて頭の上に乗せ、耳のジェスチャーをしながら「あ、ほら、カチューシャで耳が付いてるのあるじゃ無いですか、取り外せたら、そういう説明が出来るじゃ無いですか!」と言ってみた。

 すると、委員長は「ああ、そういうグッズが売ってるって聞いたことがあるわ!」と手を叩く。

「でも、流石に玩具のカチューシャじゃ、言い訳無理じゃ無い? もの凄くリアルだったもの、凛花ちゃんのキツネ耳」

 耳をもしていた手を指さしながらそう指摘した委員長は「まあ、そういう意味では早めに切り上げたのは正解ね」と言ってくれた。

 それから皆に視線を向けて「ほらほら、凛花ちゃんなら、きっとまた別の機会を作ってくれるから、今日のところはこれで満足しましょう」と提案する。

 すると真っ先にオカルリちゃんが「そうだよ。こんな奇跡体験が出来ただけでスゴいんだから、まずは噛みしめよう!」と言い出した。

 噛みしめるって何とツッコむ前に、皆がオカルリちゃんに同調して納得の頷きを始めてしまったせいで、私は口を挟むタイミングを見失ってしまう。

 ぶつけどころの無くなってしまったツッコミを持て余しながら、私は苦笑するしか無かった。


 しばらくした後、控えめなノックの後、大野先生が戻ってきたので、今日の打ち合わせは解散となった。

 大野先生も協力を惜しまないということで、林田さんとの連絡役を勤めてくれるらしい。

 それに加えて、過去の神楽舞いの資料が映像で残っているので、それを近いうちに皆で見るという話になった。

 社会科教員の会議内で、私たちが神楽舞いの後継者を務める可能性があるという話を大野先生がしたらしく、それならばと全面協力という方針になったらしい。

 流石に、まだ決まってもいないのに気が早いと持ったのだけど、もし、氏個人が難を示すようなら自分たちも説得に加わると気合十分だそうだ。

 それを聞いたい委員長は「学校が応援してくださるなら、心強いです!」と宣言した上で「私も全力で説得するつもりです!」と言い切る。

 勢いのまま大野先生と委員長は熱く握手を交わし合い「地域の伝統を守るためにも頑張りましょう!」と誓い合っていた。

 一応、当事者は私の筈なんだけど、とは思ったものの、余計な発言は思わぬ危機を招きかねないことを知っている私は沈黙する。

 にも拘わらず、私の一歩引いた考えを察知したのか、委員長は「ね、凛花ちゃん!」と振り返りながら笑顔で声を掛けてきた。

 こうなると逃げの一手は打てないので「が、頑張るよ」と頷くしか無い。

 そんな私の心理をどれほど見抜いているかはわからないけど、委員長は自信に満ちた笑みを浮かべて「任せておいて、失火リッサポー^とするから!」と胸を叩いた。


 次回の予定は、録画した映像を皆で見るということになり、その前に、氏子総会が開かれればそれを受けて、どう対応していくかも合わせて話し合うこととなった。

 今回参加してくれたメンバーは、クラスの違う千夏ちゃんを含めて、次回も全員が参加するつもりらしい。

 更に、大野先生に加えて、映像を提供してくれる同じく社会科の中畑先生も参加してくれるそうだ。

 あれよあれよという間に話が大きくなっていることに、少しプレッシャーめいたモノを感じるものの、少し無責任かもしれないけど、ここが過去の仮想正解と言うこともあって、挑戦したいという気持ちが私の中では大きい。

 もしかしたら、ここで学んだり体験したことを元の世界に持ち帰ることも出来るんじゃ無いかと思うと、よりやりがいを感じられた。

 委員長や大野先生のやる気に当てられたところはあるかもしれないけど、少し楽しみになっている私がいる。

 報告も兼ねて、私たちは次にお姉ちゃんの待つ演劇部の部室に向かうことにした。

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