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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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感想とお願い

 私の「どうかな?」という問い掛けに、真っ先に答えてくれたのは史ちゃんだった。

「私が見たのは、髪の毛も銀色の凛花様でしたが、黒髪に銀のキツネ耳も素晴らしいだと思います」

 口元に手を当てて、目を潤ませながら言う史ちゃんは、下手したらそのまま泣き出してしまいそうに見える。

「だ、だいじょうぶ?」

 思わず声を掛けると、史ちゃんは「感謝しか有りません」と謎の答えを返してきた。

「か、感謝!?」

 思わず声のボリュームが上がってしまい、慌てて口を押さえたところで、オカルリちゃんが「ハヤリン!」と呼びかけながら顔を寄せてくる。

「な、なに?」

 勢いと圧の凄さに気圧されつつも、辛うじてそう返すことは出来た。

 すると、オカルリちゃんは急に身体を離して、まっすぐ立つと「大変恐縮なのですが……」と改まる。

 直前からの落差が大きすぎて、私の中の警戒度が一気に高まった。

 何が起こるのか、オカルリちゃんがどういうアクションを起こすのか、ドキドキしながら「なに、かな?」と聞いてみる。

 すると、オカルリちゃんは、ゴクリと喉を鳴らして、少しの間、逡巡した。

 その後で覚悟を決めたのか私を真っ正面から見直す。

 オカルリちゃんの真剣な眼差しに触発されて、私の動悸はやや速くなった。

「ハヤリン……いえ、凛花ちゃん」

「は、はい」

 名前を言い直されただけなのに、緊張感がグッと増す。

 そのまま黙ってしまったオカルリちゃんを観察していると、その視線に動きがあることに気が付いた。

 私の顔を見ていたはずの目が徐々に上に向かって動いている。

 そして、その視線の行き着く先がキツネ耳だと気付いたところで、オカルリちゃんは「その、キツネ耳、触っても良いでしょうか!?」と聞いてきた。



 頭がオカルリちゃんの言葉の理解を阻んだのか、言われたことを飲み込むのに少し時間が掛かってしまった。

 私が我に返るまでの間、ずっとかしこまっていたらしいオカルリちゃんはプルプルしてしまっている。

「先生が帰ってくる前に消すから、ちょっとだけだよ?」

 そう私が言うと、オカルリちゃんは「うん、ありがとう!」と言うなり飛びつくように迫ってきた。

「ちょっ」

 あまりの勢いに反射的に避けそうになったものの、受け止めないと危ないと思い直して踏み止まる。

 けど、それは杞憂だったようで、目の前でビタッと止まると、ふるふると腕を振るわせながら、私の頭の上へとオカルリちゃんは指を伸ばし始めた。

 座っている私の頭に手を伸ばしているので、オカルリちゃんの口が目の前にある。

 そんなオカルリちゃんの口から「ふわっ……これ、気持ちいい」と熱の籠もった声が放たれ、恥ずかしくなってしまった。

「あ、その、凛花ちゃん、痛くない?」

 急に下を向いたオカルリちゃんと目が合って、ドキッとして「え、あ」と反応に一瞬詰まる。

 けど、オカルリちゃんの目がもの凄く不安そうに見えたことで、私は急に冷静になれた。

 何を言えば良いかが閃くように頭に浮かぶ。

「大丈夫、作り物だから、感覚は無いよ」

「えっ!? あ、そうか、それも……そうか」

 私の返しが意外だったであろうオカルリちゃんは、妙な言い回しで頷くと「じゃあ、もう少し触らせて、クセになるこの感触」といつもの明るい表情に戻った。

 直後、千夏ちゃんが「私も、私も触りたい!!」と声を上げる。

 それが呼び水になって、次々と希望者が現れた。

「私も良いかしら?」

 委員長が小さく手を挙げて希望して、茜ちゃんが「私は最後で良いよぉ」と控えめなのか、ちゃっかりしているのか判断に困る参加表明をする。

「リンリン。私も良いかな?」

 意外にもユミリンが控えめに聞いてきて、加代ちゃんは「私も触りたいです」と鼻息荒く主張してきた。

 ユミリンはいざという時、控えめというか、主張しない印象があるので、気をつけないといけないかもしれない。

 一方で加代ちゃんは動物好きそうな気がしていたので、キツネ耳に興味があるのもなんだかしっくりきた。

 ほぼ皆が希望を出す中、なんだか一人百面相をしている史ちゃんに目が行く。

 多分、迷惑かもしれないけどすぁりたいみたいなKッ等をしているんじゃ無いかなと思うと、苦笑が出そうになった。


「とりあえず、オカルリちゃんは交代ね」

「えーっ」

 私の言葉に不満そうな声を上げたオカルリちゃんだったけど、すぐに「でも、まあ、独り占めは良くないね」と、すぐに受け入れてくれた。

 破天荒に見えて、オカルリちゃんはちゃんと周りが見えているのが凄いと思う。

「じゃあ、次は千夏ちゃんで、委員長、ユミリン、加代ちゃんの順番で」

 指名をしていくと、名前を呼んだ人が頷いてくれた。

「次に史ちゃん」

 私が名前を挙げると、史ちゃんは「わ、私も、触れて、良いのでしょうか!?」ともの凄く嬉しそうな顔をして聞いてくる。

 駄目とは絶対に言えない史ちゃんの反応を前に、私は頷きつつ「嫌じゃ無ければ」と返した。

「嫌なわけがありません! ありがとうございます!!」

 桃生凄く力の籠もった感謝の言葉に照れながら、最後に茜ちゃんに「最後になっちゃったけど、良いかな、茜ちゃん」と声を掛ける。

「私の番が終わるまで先生が帰ってこないといいなぁ」

 のんびりとした口調で、そう言って受け入れてくれた。

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