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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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要望と応対

 オカルリちゃんの勢いに気圧されながらも「な、なにかな?」と聞き返すことは出来た。

「ハヤリンは、この、お供を具現化出来るわけでしょ?」

 グッと顔が近づき、オカルリちゃんの目のキラキラが増量する。

「う、うん」

 何故確かめられているのかという疑問があったおのの、逆らうのはなんか危険な気がして、私は素直に頷いた。

「じゃあ、じゃあね、もし出来るならなんだけど……」

 徐々に頬を赤らめながらオカルリちゃんは興奮の色合いを強める。

 ただ、話の流れからして具現化してほしいものがあるんだろうなと察しが付いたので、私的にはだいぶ落ち着きを取り戻すことが出来た。

 なので、少し余裕のある風に「何かを具現化してほしいと?」と尋ねる。

 私の言葉にオカルリちゃんは首が飛んで行ってしまいそうな勢いでブンブンと頷いた。

 その勢いの凄さに少し引きながらも「小さいモノなら大丈夫だと思うよ。そんなに疲れたりはしないから」と心配させないように負担が少ないという情報を滲ませる。

 オカルリちゃんは私の言葉を聞くなりピタッと動きを止めてから、上目遣いでこちらを見ながら「それじゃあ、お願いしても良い?」と、もの凄くしおらしい態度で聞いてきた。

 思わず出来る事は叶えて上げたいという気持ちいさせられる仕草に、完全に掌の上で転がされていることを自覚しつつ、私は「言ってみて」と返す。

 すると、オカルリちゃんは掌を見せるように、両手を頭の上に乗せて「キツネ耳はやせるんじゃ無いかなと思って」と言い放った。


 正直、私は想像していなかったのもあって、完全に硬直してしまった。

 頭が回らないのを認識して尚、思考が回らない。

 そんな状況なのに……いや、だからか、周りの反応がもの凄く鮮明に認識出来てしまった。

 まず、千夏ちゃんがオカルリちゃんに「何それ!」と強めの口調で迫る。

 喧嘩でも始まるのではと思ったら「貴女、天才なの!?」と言い出し、千夏ちゃんはオカルリちゃんの手を取ってブンブンと上下にシェイクし始めた。

 史ちゃんは「皆に見せたいけど、独り占めにしたいジレンマが」と頭を抱え、委員長が「アイドルを世に送り出す人みんなが通る道よ」と謎のフォローを入れている。

 茜ちゃんは「どのくらい想像図が近いか興味あるなぁ」とオカルリちゃんの描いた絵を手に取り、その横でユミリンが「案外、そっくりなんじゃないか? キツネの耳って三角形でって皆イメージ近いだろうし」と普通に自分の考えを披露していた。

 そんな中で、加代ちゃんが「リンちゃん、難しいなら、無理しなくて良いと思うよ。オカルリも無理にとは思ってないと思うし」と心配そうに声を掛けてくれて、それを切っ掛けに私の頭も回り始める。

「あ、うん、大丈夫」

 まずは加代ちゃんに心配をこれ以上させないようにそう答えてから、皆を見渡した。

「えっと、再現してみるけど、銀髪は無理だと思う……から、そこは……」

 ゴメンという前に、オカルリちゃんがいつもの口調で「もちろん、できる範囲で大丈夫だよ!」とワクワクした表情で言う。

 私に集まる目はワクワクとしたモノが多かった。

 思わずこの期待に応えたいと思ってしまう。

 加代ちゃんからは、期待の中に心配の混じった目を向けられているので、そこも安心させたかった。

 私は進むべき方向が決まれば、覚悟の決まるタイプなのもあって、もうすぐにやってしまおうと決意する。

「じゃあ、先生が戻る前にやってしまうね」

 皆が頷くのが目に入った。

「あと、初めてやるから、失敗したり、長時間は無理だと思うから、見逃さないでね」

 実際は長時間……というか、解除しない限り具現化し続けられると思うけど、先生が戻ってきたときに説明が出来無いのもあって、短時間で終わらせる口実を潜ませる。

 幸いにも、私の言葉に疑問を抱く人はいなかったようで、皆、頷いてくれた。


「じゃあ、行くね」

 宣言した私は両掌が髪の毛に触れる用意して頭に乗せた。

 そこから上向きに手を持ち上げると、キツネ耳が具現化するイメージを浮かべる。

 髪の毛の色に合わせて黒耳にしようかと思ったけど、髪の毛を銀髪にするのを今回は拒否してしまったので、耳の毛色くらいは銀にしようと考え直した。

 目を閉じて頭の中で、キツネ耳が思い描いた通りに出現する姿を確認する。

 問題は無さそうなので、私はすぐに具現化に入った。

 頭から徐々に掌が離れて、生まれた隙間にキツネ耳が具現化していく。

 目撃する皆が息を飲んで注目するのが、空気を通して伝わってきた。

 簡単に出来ることじゃないのを演出するために、ゆっくりとゆっくりと手を挙げて、バンザイ目前まで上がったところで具現化は完了する。

 やり遂げたこと、終わったことを伝えるために「ふーーーっ」と長く息を吐き出した。

 それから目を開けて皆を確認すると、私の頭に出現したキツネ耳を見て固まっている姿が見える。

 皆の表情がほぼ一緒で、それがちょっとおかしくなってしまって、少し笑いながら、私は出現したキツネ耳に手を当てながら「どうかな?」と尋ねてみた。

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