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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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キツネと由来

「じゃあしょうがないねぇ」

 オカルリちゃんの理由をその一言で納めた茜ちゃんは、こちらに視線を向けて「じゃあ、生まれ変わりでは無さそう……なのかな?」と首を傾げた。

「えーと、とりあえず、少なくとも、自分が神様だっていう感覚は無いかな」

 じっとこちらを見続けている茜ちゃんにそう伝えると、オカルリちゃんが「ちょっと、私と委員長の話聞いてた?」とぬっと顔を出してくる。

「高次元の存在の神様は、人間に転生できないの!」

 オカルリちゃんがそういうモノの、茜ちゃんは「でも、それはオカルリちゃんの学説でしょ? 証明されたことでは無いよねぇ?」とズバッと切り返した。

 痛いところを突かれたオカルリちゃんは「うぐっ」と呻く。

「と、ともかく、そういう自覚も、神様の啓示? みたいなのも経験は無いよ」

 そのつもりがあるかはわからないけど、茜ちゃんの追撃が放たれる前に、そう宣言することで間に入った。

「じゃあ、狐の妖怪とかぁ?」

 そう言って小首を傾げる茜ちゃんに、私は「よ、妖怪の記憶も自覚もないかなぁ」と答える。

 すると、今度は委員長がリーちゃんの宿る小さなぬいぐるみを見ながら「だとすると、なんでキツネなのかしらね、この子?」と言った。

 委員長の言葉で、以前、緋馬織で私の神格姿について話し合った時のことを思い出す。

 その時も、何故、私の神格姿がキツネなのかということだった。


 まず、基本的に神格姿は、その人の姿のままで能力が発現し、身に纏う衣装が変わる程度に留まるのが普通だ。

 とはいえ、人間以外の神格姿を得たケースも少なくない。

 人形だったり、鏡だったりと、無機物というケースもあるので、動物の神格姿は生物である分、それほど異質とはされていなかった。

 この動物の神格姿の傾向としては、生まれの干支の動物や飼育している動物であることが多く、身近な動物が選ばれる……というか、神格姿になりやすい。

 その点から行くと、私……というか、京一お父さんはキツネに縁があるとは言えないので、例外と言うことになった。

 とはいえ、キツネの神格姿が存在しなかったわけでは無い。

 私以外のケースでは、実家や本家筋が稲荷社を祀る家系の子ばかりで、いわゆる神使(しんし)、神様のお使いを務める動物がキツネだった。

 ただ、ウチは神社の家系では無い筈なので、私はこの例からも外れてしまっている。

 結果として、林田家は過去に稲荷社と関係があったのでは無いかという推論で終わってしまっていた。


 私自身も自覚が無く、ルーツも繋がりがあるわけでも無く、何故、キツネなのかというのは、今もって謎だった。

 それを思い出しながら改めて考えていると、史ちゃんが「私がキツネ耳の生えている凛花様の姿が見えたと言ったので、合わせてくれたからでは無いですか?」と片手を上げながら発言する。

「なるほど」

 委員長はそう言って私を見た。

「無意識で、具現化したので、史ちゃんの発言に合わせたっていう自覚はないです」

 私がそう答えると、千夏ちゃんが「無意識に取り入れてたんじゃ無いかしら? 凛花ちゃんは優しいから」と言う。

 史ちゃんも何度も頷きながら「確かに、凛花様なら、無意識で合わせてくれるというのは大変あり得ると思います」と同意した。

「そうなるとさ、フミキチがキツネの出所ってこと?」

 ユミリンがそう言うと、茜ちゃんが「凛花ちゃんがキツネに縁があるんじゃ無くて、史ちゃんがキツネ耳の凛花ちゃんをイメージしたからってことねぇ」と頷きながら視線を史ちゃんに向ける。

 すると、史ちゃんは自らの左右の指を絡ませながらもじもじとし始めた。

「どうしたの、史ちゃん?」

 謎の反応をし始めたので、尋ねてみたところ、史ちゃんからは「な、なんというか……凛花様に影響を与えてしまったとしたら、その、もの凄く嬉しくて、そ、その反面、お、おこがましいというかですね……」と顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 史ちゃんの一連の動きを見ていると、何故か私まで恥ずかしくなってしまうような、そんな動きだった。


 なんだか恥ずかしくて仕方が無くなる妙な空気は、委員長の「キツネの謎を解明するなら、史子ちゃんのイメージがどこから来たかを考察した方が良いって事よね」という発言で吹き飛んだ。

 そのタイミングで、オカルリちゃんが「そんなことよりも!」と割って入ってくる。

「そんなことって……オカルリが一番気になるんじゃ無いか?」

 呆れた様子でユミリンがそう言うと、オカルリちゃんは「そもそも現状で、推理のためのピースが足りているとは限らないからねー。考えても結論で無いことも、多くあるんだよ、オカルトはさ」とさっぱりした態度で言い切った。

 その内容も皆が頷けるだけの説得力があったのもあって、そういうモノかと皆も思ったんだと思う。

 皆の目が解明という目標から少し意識が外れたところで、オカルリちゃんは「なので、今は、先生が戻る前に試してほしいことがあるんだよ!」と私に向かって顔を近づけてきた。

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