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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
231/476

切り札が

「るりさんがイジメを例に出したのは、排斥の縮図だから……ね?」

 委員長の言葉に、オカルリちゃんは「うん」と頷いた。

 すると、皆が説明を求めるように院長に視線を向ける。

「用はイジメの切っ掛けって様々に見えるけど、その根幹に在るのは自分とは違うって部分なのよ。優れてる、劣ってる、考え方や性格が違う……要するに、自分たちと違うってこと」

 院長の説明を引き継いだのは茜ちゃんだった。

「だから、人とは違うスゴイ能力を凛花ちゃんが持っていたらぁ、苛められるってことだよねぇ」

 溜め息交じりに言う茜ちゃんに、加代ちゃんが「そんなこと……」と口にしたところで、続きを口に出来ず黙ってしまう。

「私たちはぁ、少なくともそんなことしない……けど、他の人は違うしぃ……もしかして、凛花ちゃんが有名になっちゃって、嫉妬したら、私たちだって、凛花ちゃんを傷つけちゃうかもしれないわぁ」

 茜ちゃんは少し悲しそうにそう言った。

 絶対はないのも事実だし、心変わりは怒る可能性もある。

 それにしても、中学生とは思えない視野の広さは、お寺のこと言うのも関係あるのかもしれないと思った。

「瑠璃さんの考えとしては、凛花ちゃんも望んでいるし、出来る事なら、私たちだけで情報を止めた方が良いという判断ね」

「うん」

 オカルリちゃんは頷いてから「あんまり酷い話だから、詳しくは話さないけど、実際にヨーロッパとかで、不思議な力が有っても、無くても、邪教徒として、その……命を奪われたりした歴史があって……」と深刻な表情で呟く。

 その後でオカルリちゃんは「漫画だけど、その、特別な力を持ってた子が、能力を解明するために解剖、されちゃったり……」と身体を震わせる。

 加代ちゃんが顔を青くして「そんな、リンちゃんも!?」と口走ると、オカルリちゃんは「漫画の話だから、現実には……無いとは思うけど……」と硬い表情で返した。


 重くなってしまった空気の中、委員長が皆に向かって「心配しすぎても仕方ないし、知ってしまった以上は、誰にも話さないと誓い合いましょう。それが、凛花ちゃんを護ることに繋がるわ」と告げた。

「そうだねぇ。心配しても仕方ないし、秘密にしよぉ」

 茜ちゃんが多分、わざとのんびりした口調で同調する。

「るりさんも、本気で心配してるっていうよりは、起こりうる怖いことを言って、皆の意識を引き締めるつもりだったんでしょ?」

 委員長の問いに、オカルリちゃんは「まあ、そうかな。ほら、調子に乗っちゃいそうな内容だったからね、特に私が!」と胸を叩いた。

「お前がかよ!」

 すぐにユミリンがツッコんで、オカルリちゃんが「しょうがないでしょ!? スゴいことなんだから!」と切り返す。

 その後でまた真面目な顔をして「でも、だから、ちょっとした気持ちの緩みで、取りあえ篠突かないことになるかも知れなくて、それが自分じゃ無くて、ハヤリンの身に起こるって考えたら、ちゃんと自分の気持ちを言わしめなきゃいけないと思ったの」と口にした。


 やや間を置いてから、オカルリちゃんが「でもさ、深刻に考えてるのが私だけって、なんか損した気分じゃん? だから、皆も巻き込んでやろうと考えたんだよねー!」ともの凄く明るい声で言い放った。

 ユミリンがすぐに「おまっ!」と怒りを見せたので、私は二人の間に入る。

「違うよね。私が傷つかないように、そして、誰かが無意識でしてしまったことで、悪いことが起きないように、言ってくれたんだよね。わざわざ悪役になる動きまでして」

 私の言葉に、オカルリちゃんは目を丸くして、そのまま黙ってしまった。

「でも、私は皆に知ってもらいたいと思ったから見せたし、もしそれで何かあっても、私の責任だと思うし、それと……奥の手は沢山有るから、ちゃんと切り抜けるから、そんなに心配しないで」

 オカルリちゃんにそう告げる私の言葉に虚勢の類いは何もない。

 なにしろ、具現化に神格姿に、リーちゃんというアドバイザー、加えてこの世界から逃げ出すという切り札まであるのだ。

 更に言ってしまえば『種』を倒してしまえば、この世界自体が崩壊する。

 謎を解こうとしているからこの世界の流儀に合わせているだけで、盤面をひっくり返すならいつでも出来る……というところまでは流石に言えないけど、私が本気で言っているのは皆に伝わったようだ。


「確かに、凛花様なら結局どうにかしてしまいそうですね。他の人なら疑わしく思うと思いますけど、凛花様が言うなら、多分出来るんだと思えてしまいます」

「私も、凛花ちゃんって、頼りなくて護って上げたいって思うけど、でも、本当は皆を護れるぐらいスゴイ力を持ってるような気がする」

 史ちゃんと千夏ちゃんがそう口にして、柔らかな表情を浮かべた。

「子供っぽくて、でもスゴく大人なときもあって、何でも出来て、でもか弱いところもあって、物語の主人公みたいだよね。リンちゃんって」

「親友やって長いけど、確かになんとかするよな、リンリンは」

 加代ちゃん、ユミリンがそう言って笑う。

「もの凄く興味を引く存在よね。まずはアイドルとして売り出すし、超能力は隠しておきましょう」

「私はハヤリン自体がもう超人に見えてきたよ。オカルト研究家改めハヤリン研究家を始めたい気分だよ」

 委員長とオカルリちゃんがそんな自分の考えを言ったところで、茜ちゃんが「もしかして、凛花ちゃんってキツネの神様の生まれ変わりなのぉ?」と踏み込んできた。

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