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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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帰宅

「凛花」

 史ちゃん、加代ちゃんと別れて、少し、三人で歩いていると不意にお姉ちゃんが声を掛けてきた。

「何、お姉ちゃん?」

 瞬きしつつ返事をすると、お姉ちゃんは「アンタ、スゴいわね」と言い出す。

「へっ!?」

 唐突な高評価に、思わず変な声が飛び出してしまった。

 そんな私の反応を見て小さく吹き出してから、お姉ちゃんは「いろいろあったのもあるけど、それでも、同級生のこの心を一人分救ったんだよ、アンタは」と優しい表情で言う。

 元々、京一の母だった頃も、凛花(わたし)のお婆ちゃんの時も、自分が良いと思ったことはどんな小さな事でも褒めてくれる人だった。

 その時に見せてくれる柔らかな表情を、いつもの顔だと思うだけで、何故か目が潤んでしまう。

 お姉ちゃんはお姉ちゃんで、私を観察しているので、そんな私の変化に気が付いた。

「え、あんた、泣いてるの!?」

「なっ泣いてなんか無いよ!?」

 驚くお姉ちゃんのアクションに、大袈裟に否定することで潤んでいた目を無理矢理乾かす。

 そもそも乾かすことが出来るかは不明だけど、まあ、潤みは解消されたので、問題なしだ。

 ただ、更なる追求を逃れるために、私は「なんか、史ちゃんの心を救ったのかなって思ったら嬉しいなって思って」と目を潤ませた理由を匂わせる。

 すると、お姉ちゃんは黙ったままで私の頭を力一杯撫でてきた。

 京一の時は小学生までだったし、凛花(わたし)の時は年を取っていたから、力強さにちょっと驚かされる。

 でも、妙に心地よくって、ずっとされるがままになってしまった。


「良いなぁ、リンリン~私もお姉ちゃん欲しいわ」

 さっきまでは、史ちゃんが中心でしゃべっていたせいで、黙りがちだったユミリンがポソリとそう呟いた。

 これに真っ先に反応したお姉ちゃんは「何、ユミちゃんも、私の妹になる?」と言うなりユミリンに抱き付く。

 私にするよりも、なんだかスキンシップが激しめなのがちょっと引っかかった。

 頭を撫でてくれたりはするけど、抱きしめたりはそんなに経験が無い。

 まあ、月子お母さんの娘で、京一お父さんの血が繋がっていないという設定だから、仕方ないのかもしれないけど、ほんの少し複雑だった。

「なっちゃおうかなー」

 そんなことを言いながらユミリンは私をチラリと見る。

「今なら、妹も付いてきてお得だものね!」

「お、お得って……じゃない、何で私が妹なんですか!?」

 ユミリンに対してそう言って噛み付くと、無情な一言が返ってきた。

「身長」


 結局、私の家、林田家までユミリンは一緒だった。

 というのも、ユミリンの家は道を挟んで、真向かいにあったのである。

 ただ、そうなると大きな疑問が湧いてくる。

 元の世界では、真向かいの家は『根元』さんでは無かった。

 京一として、真向かいのおうちの方と接触したの記憶の中でも、名字は違っていたし、ユミリンらしい人はいない。

 ユミリンは女性なので結婚と共に移り住んだとしても、両親まで転居することはそうそう無いはずだ。

 とはいえ、絶対ではないので、現代までの間に引っ越してしまったのかもしれない。

 実際、壁や内装を直してはいるものの、家自体の造形は現代と同じである林田家に対して、根元家は造りそのものが違う全く別の家になっていた。

 ユミリン一家が引っ越ししてしまって、その後医現在の住民が引っ越してきたのかもしれない。

 同級生や年の近い子が住んでいたわけではないので、真向かいの家の状況には詳しくないので、その程度しか推測を立てることが出来なかった。


「ユミちゃん、ありがとうね、凛花も心強かったと思うよ」

 お互いの家に入る前に、お姉ちゃんがそう言ってユミリンに声を掛けた。

 私もお姉ちゃんに任せきりにしちゃいけないと思って、ユミリンに「心配してくれてありがとう! ユミリン!」と声を掛ける。

 ユミリンは自分の家の門の前まで移動して振り返った後で「リンリンの親衛隊の主席はこの私だからね!」と胸を叩いて見せた。

「し、親衛隊って……」

 思わず苦笑するしかなかった私に、ユミリンでは無くお姉ちゃんが「まあ、アイドルに親衛隊はつきものだもんね」と大きく頷く。

 思わず『つきものなの!?」と上げてしまいそうになった声を手で口を塞ぐことで押し込んだ。

 咄嗟に、この時代での常識だとしたら、違和感を生んでしまうと、私の冷静な部分が行動を起こしてくれた結果である。

 どうにか声を上げずに済んだところで、ユミリンは「じゃ、また明日、朝迎えに行くから」と言って手を振るとカタンと家の門を開けて、敷地の中に入って行く。

 そんなユミリンに、お姉ちゃんは「ユミちゃん、凛花が平気そうだったら、夕飯食べに来な~」と言って声を掛けた。

 こちらを振り返ったユミリンは、何度も目を瞬かせている。

「しばらく、一人なんでしょ?」

 そう言って笑むお姉ちゃんの顔を見てから、私もユミリンに呼びかけた。

「私は元気だから、是非来てよ、ユミリン!」

 ユミリンはなんだか慌てた様子で鞄から鍵を取り出すと、ガチャガチャと音を立てて玄関の鍵を開ける。

 その後で振り向いたユミリンは、興奮気味に「着替えたら行くから待ってて!」と声を張った。

 反射的に顔を見合わせたお姉ちゃんと私は、ほぼ同時にユミリンに視線を戻す。

 狙ったわけでは無いのに、私とお姉ちゃんの声は綺麗に揃った。

「「りょうかいっ!」」

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