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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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有能とは

 何を伝えて、何を黙っているかを決めるよりも先に、ユミリンが「あ、じゃあ、オカルリは、リンリンが『ゆーたいりだつ』したのを見かけたことがあるんだな」と言い出した。

 これに、オカルリちゃんが「ゆーたいりだつ!? ハヤリン、身体から抜け出せるの!?」と思いっきり勢いよく立ち上がり、椅子が豪快に床に倒れて転がる。

 当然、クラス拾之視線が集まったが、オカルリちゃんは気にせず「ハヤリン!」と迫ってきた。

「話はするけど、沢山の人に聞かれたくない」

 私が短くそう伝えると、オカルリちゃんは一瞬で冷静さを取り戻して「あ、そう……だね」と頷く。

 その後で、オカルリちゃんは「ゴメン、うるさかったよねー。慌てて立ったライス倒しちゃったよ!」と、まるで直前とは別人のような明るい声で、振り返りながら言い放った。

 急に立った大きな音に視線を向けていたクラスの人達の多くは、オカルリちゃんのその説明で納得したらしい。

 何人かは興味深げにこちらを見たままだったけど、ほとんどの、特に男子はサッと目を逸らしてしまった。

 オカルリちゃんはクラスの様子を軽く見渡してから、私に視線を向ける。

「じゃあ、説明して貰っても良いかしら?」

 そう口にしたオカルリちゃんの横から茜ちゃんが「私も聞いていいかな? もの凄く興味があるんだけど」と言ってきた。

 委員長も「凛花ちゃんが差し支えないなら、私も話を聞きたいわ」と挙手する。

「わ、私もお願いします!」

「出来れば、私も!」

 こうなると、史ちゃん、加代ちゃんも当然ながら希望してきた。

 私は大きく溜め息を吐き出してから、笑顔でユミリンに声を掛ける。

「ねぇ、ユミリン?」

 珍しく上擦った声で「な、何でしょう、凛花様」と様付けで返してきた。

「こっそり話をするなら、どこが良いかしらね?」

 話すのは構わないけど、大勢に聞かせたくはないし、そうなると場所は重要なので、アイデアが貰いたかったのだけど、ユミリンはなんだかもの凄く焦った様子で「え、ええと、ですね……」と言い淀む。

 らちがあかないなと思っていたら、委員長が「なら、相談室を借りましょう」と提案してくれた。

「え、そんな事出来るの?」

 私がそう聞くと「一応、申請して許可が出れば大丈夫よ。一年生だと仕組みを知らない生徒も多いけど、申請して許可されれば問題なく使えるわよ」と言う。

「でも、申請内容は……?」

 まさか幽体離脱の説明会とは行かないだろうと思っていたら、委員長は「丁度良いから、地元の神社の神楽の歴史についてって内容で、集団学習。つまり資料集めと整理、勉強会をやることにすれば良いわ」と、何でも無いと言わんばかりに言い切った。

「あー、丁度、凛花ちゃんが神楽舞いをお願いされているから、その下調べですね」

 委員長の目論見を察した茜ちゃんが、パンッと手を合わせて、声を弾ませる。

 対して、委員長は頷きつつ「そういうこと。その、資料集めや整理の間に、余談で、総意話が出てもおかしくないと思わない?」とウィンクを決めた。

「確かに、神楽の情報集めとか、地元の神社の由来とか調べておくのは、リンちゃんの役に立ちそうだね」

 加代ちゃんは委員長の巧みな理由設定に、感心したように何度も頷く。

「流石だわ。頭の回転が速いわね。さすが委員長!」

 オカルリちゃんはうんうんと頷きながら委員長を褒めた。

 委員長は「フォローできるところはフォローするけど、唾棄無いこともあるから、発言には家事を付けなさいよ。特に、ユミキチと、オカルリ」と名指しで注意をする。

 流石に身に覚えのありすぎる二人は、反論すること無く大人しく受け入れて謝罪した。


「お百合はどうするの?」

 さっき表明していなかったので、私はお百合に聞いてみた。

「んー、気になるけど、時間に寄っちゃ部活の時間だからなぁ……放課後でしょ?」

 興味が無いわけじゃ無いけど、お百合の優先はやっぱり部活らしい。

「じゃあ、後日改めてでも良い?」

 オカルリちゃんの様子からして後日改めては無理そうだと思った私は、少しも氏分けなく思いながら尋ねてみた。

 すると、お百合はカラカラと笑いながら「私はタイミングが合えばで良いよ。ホント、凛華は優しいなぁ」と言って私の頭を撫で出す。

「ちょ、お百合! 凛華様の頭を撫でないで!」

 すぐに抗議の声を上げる史ちゃんに、お百合は「何だ、史も寂しいのか」と言いながら、史ちゃんの頭も撫で出した。

 これに対して、史ちゃんは反発するかと思いきや「凛華様と一緒なら」と小さく呟いて身を任せ出す。

 史ちゃんのリアクションは想定外だったけど、喧嘩とかにならなかったので、もうこれはスルーすることにしてしまった。

 それよりも、既に自分の鞄から、相談室の使用申請書を取り出して、茜ちゃんと話し合いながら内容をかき上げていく委員長に驚かされる。

 提案したのは確かに委員長だけど、そんな申請書がすぐ出てくるところが、スゴく有能だなと心から思った。

 まどか先輩とはまた違った安心感に頼もしさを感じながら、書類作成には口出しせず、大人しく様子を見守ってるオカルリちゃんに目が向く。

 一見豪快で破天荒に見えて、実は思慮深いオカルリちゃんは、思った以上に面白い人だなと思った。

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