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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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家路

 お姉ちゃんを加えた五人で校門を出た。

 どうも私と一緒に来た皆に、興味があったらしいお姉ちゃんは、次々と質問を繰り出している。

 私はそれを黙って見守っていたのだけど、思った以上に収穫があった。

 元の世界でも私の通っていた中学校は、二つの小学校の生徒が合流しており、ここでも変わらない。

 ただ私の場合、元の世界では中学入学に合わせて林田家に引っ越してきて、通い始めたので、転校生的な見られ方をしていた。

 こちらでは、私とユミリンが同じ小学校の出身で、小学三年生に同じクラスになってから交流があったことがお姉ちゃんからの思い出話として語られたお陰で、怪しまれること無く情報を増やすことに成功する。

 更に、史ちゃんと加代ちゃん、お百合たちは、もう一つの小学校の出身らしくて、五、六年生の頃は同じクラスだったようだ。


「凛花」

「あ、はい」

 聞くことに集中していたせいで、お姉ちゃんの呼びかけに反応するのが遅れてしまった。

 そのせいで「あんた、大丈夫なの?」と心配そうな顔をされてしまう。

 しかも、それが史ちゃんや加代ちゃんにも伝播してしまった。

 私は慌てて力こぶを造るように腕を曲げながら「全然大丈夫だよ」と告げる。

 まあ、大きな力こぶは出来なかったけども、どうにか私が平気だというのが伝わったはずだ。

 ジト目でしばらく私をみたお姉ちゃんは、墓と短く溜め息を吐き出す。

 その後で私の鼻を人差し指で突きながら「アンタ、アイドルやるんだって?」と言い出した。

「あー……なんか、委員長が張り切ってて」

 私が『おチビッ子クラブ』結成の光景を思い返しながらそう答えると、史ちゃんが「頑張りましょうね、凛花様」と声を弾ませる。

 これにお姉ちゃんが反応した。

「そういえば、アンタ、友達に()()()()呼ばせてるの?」

「いや、何というか、自主性に任せているというか……」

 お姉ちゃんのストレートな問いに、多少動揺しつつそう返すと、即座に史ちゃんが「そうです。私が偉大な凛花さまを尊敬して、凛花さまって呼んでるんです!」と興奮気味に話に参戦してくる。

 そこからは史ちゃんによる体育の時の鉄棒指導でどれだけ感動したのかの語りが始まった。

 小学生の間ずっと鉄棒や跳び箱が出来なくて、男子に馬鹿にされたり、時には女子にも揶揄われていたらしくて、出来ない子達で集まって憂鬱な時間を過ごしていたらしい。

 だからこそ、簡単に解決してくれた私がとっても眩しいっていう事らしいんだけど、私としては小学校時代の史ちゃんの先生は何故ちゃんと教えてあげなかったのかと、思ってしまった。


 後半は史ちゃんの私への感謝とか賞賛とかがもの凄くくすぐったかった。

 延々と続きそうだったけど、小学校時代の学区の境界近くで、それは終わりとなる。

「それじゃあ、リンリン、また明日~」

 どこまでも着いてきそうな史ちゃんを止めながら、加代ちゃんは苦笑気味に別れの言葉を口にした。

 史ちゃんと加代ちゃんはこの境界付近に自宅があるらしい。

 私とお姉ちゃん、ユミリンの三人は未だ少しあるのでここでお別れだ。

 けど、史ちゃんは名残惜しかったらしく「荷物置いてくるので、待ってて貰っても良いですか!?」と言い出す。

「凛花様が心配なので、私もおうちまで送りたいです!」

 力強く訴えてくる史ちゃんに、押しに弱い私は上手く切り返す事が出来そうに無かった。

 すると、お姉ちゃんが「史ちゃん。気持ちは嬉しいけど、この子、お友達が一緒だと、無理して元気に振る舞おうとするから、体調が良い日に遊びに来て貰っても良いかしら?」と優しい口調で尋ねる。

 史ちゃんはお姉ちゃんと私の顔の間をなのうふくか視線を巡らせた後で、シュンとしながら「確かに、凛花さまなら無理しそうです」と言って肩を落とした。

 まるで今生の別れのような大袈裟な態度で私の手を包み込むように握りながら史ちゃんは「残念だけど、凛花様が元気になるように祈ってますね」と言う。

 完全に気圧されてしまいながら、私はぎこちなく「ありがとう」と、どうにか返しことに成功した。

 私としてはやり遂げた自信があったのだけど、史ちゃんの表情を輝かせたのは、お姉ちゃんが笑顔と共に発した「お休みの日にでもゆっくり遊びに来てちょうだい」という言葉で、一撃で、私の自信を打ち砕く。

 私が小さくダメージを受けている間に、お姉ちゃんと史ちゃんは家に招く約束を決めてしまった。

 更に「あ、私も参加して良いですか?」と加代ちゃんが尋ねれば、お姉ちゃんは「来なさい、来なさい」と同意してしまう。

 ユミリンも「じゃあ、私も混ぜて混ぜて」と言い出した。

 ここまで来ると勢いが止まることは無く、四人で計画をほぼ練り上げたところで、お姉ちゃんは私に「凛花、いいよね?」と今更ながら尋ねてくる。

 とはいえ、正直友達が家に来るなんて、ワクワクするし、実は凛花としては未経験なので、素直に「うん」と頷きながらも、ついニヤ付いてしまう口元を隠したくて、そのまま俯いてしまった。

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