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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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突然の乱入者

「巫女さんやるだけでも結構大変なんだな」

 ユミリンの発言に、委員長は腕組みをすると「神社側がお願いして、本人が承諾すればそれで良いんだけどねー」と言いながら頷いた。

 明らかに含みがある言い方に、茜ちゃんが「巫女さんは人気があるからねぇ」と続く。

 言わんとすることがわからずに、瞬きしていると、それに気が付いた委員長が「お見合いとか、就職に有利なんだって、履歴書に書くと」と理由をぽし得てくれた。

「あ、可愛いからとかじゃないんだね」

 委員中央の言葉に、度か恥ずかしそうに加代ちゃんが頬を掻く。

「もちろん、そういう子もいるけど、アルバイト雑誌で募集したりしないからね。そうなると、関係者からの推薦が多くなるわけ」

 どこかウンザリした様子で言う委員長に、茜ちゃんが「推薦は本人より保護者がするからねぇー」と引き継いだ。

「その保護者目線だと、飲食店でウェイトレスさんよりも、巫女さんをさせたいって思うみたいなのね」

 茜ちゃんの言葉に、私はなるほどなと思う。

 元の世界では職業に対して、善し悪しという感覚はかなり薄れているけど、三十年も前の時代がベースになっているこの世界では、職業差別とも言える思考が根付いているのだ。

 娘にアルバイトをさせるなら、巫女さんが良いという考え方は、この世界では仏生んだんだろう。

 そして、そういう人が多いという事でもあって、結果的にねじ込みたいと考える保護者がいてもおかしくない……いや、いるから、委員長の表情なのだと理解した。


「つまり……推薦する保護者さんがいて、大変てこと……だよね?」

 私がそう尋ねると、委員長は「だから、舞手探しも大々的に出来無くて、代々その家が受け継ぐみたいになってたのよねー」と頷きながら言った。

「神子さんも、兼務している神社の一つで起きている問題だったので、氏子会で方針を決めてほしいって言うのがこれまでの流れだったんだけど……その神子さんが急に売り込んできたのよ、凛花ちゃんを」

 委員長の説明に、加代ちゃんが「おー」と歓声を上げる。

 更に史ちゃんが「さすが、凛花様です」ともの凄く満足そうに頷いた。

 その上、ユミリンは「確かに、スゴい綺麗な動きだったよ。滑らかというか……」と言い出す。

 と、そこまでは良かったのだけど、ユミリンがニヤリと何かを思い付いたと言わんばかりの表情を見せた。

「そう、リンリンの神社での作法は、まるで舞いを踊るように無駄の無い洗練された動きだったよ!」

 突然、したり顔で言い放ったユミリンに対してアクションを起こす前に、史ちゃんが「そうですね、今思い出しても感動しそうなほど美しい所作でした」と溜め息交じりに言う。

「それは、私も観てみたいわぁ~」

 茜ちゃんがそう言って目を輝かせ、委員長は「さすが凛花ちゃん。想像以上ね!」と笑みを見せた。


「ところで、凛花ちゃんは、どこで作法を学んだの?」

 茜ちゃんからそう問い掛けられたので、私は昨日お母さんの説明をそのまま引用することにした。

 の、だけど、それを口にする前に、胸に掛かるくらいの黒いストレートヘアの女子が「もしかして習ってない……というか前世の記憶とか、そういう感じのだったりする?」と突撃してくる。

 確かちゃんと話をしてなかったけど、クラスにいる五人の田中さん、田中君の一人のはずだ。

 そんな田中さんに、ユミリンが「どこで聞いてたんだよ、オカルリ」と呆れ顔で言う。

「オカルト話となれば、このオカルリ様の出番でしょうがっ!」

 そう言いながら胸を叩く田中さんは、自他共に『オカルリ』と名乗り呼ばれているようだ。

「えっと、あんまり話したこと無いけど、私、田中るり。オカルト大好きなるり、略して、オカルリ! よろしくね、林田凛花ちゃん……略してリンリンて呼んで良い?」

 早口で自己紹介をするオカルリこと田中るりさんに、圧倒されていると、ユミリンが「こら! リンリンは、親友の私だけが使って良いあだ名なの! オカルリは使うな!」と文句を言う。

「え、そうなの? あーでも確かに、凛花ちゃんとか、リンちゃんとか、リンリンとか、それぞれ違うねー。じゃあ、私はハヤリンにしよう……で、良いかな、ハヤリン?」

 完全に勢いに飲まれてしまった私は「え、あ……い、良いですけど……」と頷くと、田中るりさんは「うん。じゃ、ハヤリンは私をオカルリって呼んでね」と、まるで思考を読んだかのように絶妙なタイミングで、呼び方を指定されてしまった。

「う、うん。お、オカルリちゃん」

 私の返しに嬉しそうに笑みを深めた後で、オカルリちゃんは「それでそれで、ハヤリンは頭にイメージが舞い踊る感じだったの? それとも勝手に身体が動く感じ?」とワクワクした表情で聞いてくる。

 ここで、オカルリちゃんの突撃のタイミングで、何の話をしていたのかを思い出した。

「えっと……その、オカルリちゃんがどうしてそう思ったのかはわからないけど、図書館の記録映画で見たの……神社の参拝の仕方の映像……それをどこかで覚えていて、それを実演したというか、私なりに再現した感じだよ」

 私がそう説明すると、オカルリちゃんは「ふぅん」と言いながら笑みを深める。

 なんだかもの凄く、含みがありそうな態度に、私は強い違和感を覚えた。

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