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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第六章 日常? 非日常?
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怒濤の委員長

「ビックリだわ」

 突然面と向かって委員長にそう言われた私は、正直大きく戸惑ってしまった。

「え、えーと……」

 教室に着くなり、既に登校していた委員長が話しかけてきたのだけど、何にビックリしているのかがわからない。

 変に推測をするより、ここは素直に聞いた方が良いかと思い「何が?」と聞いてみた。

「あなた、林田凛花さんですよね?」

 想像もしなかった言葉が返ってきて、思わず思考停止してしまう。

「第一中学校一年F組の林田凛花さんですよね?」

 多少情報は追加されたものの、ほぼ同じ内容で問いを重ねられた私は、内心ではとてつもなく戸惑いながら「そう……です」と返した。

「神楽舞い、引き受けるらしいわね」

 ようやく私の中で線が繋がる。

「あー、委員長がビックリしたのって、その話?」

「ええ」

 大きく頷いた委員長は「実は神楽舞いの舞手を探しているっていう話を聞いていて、凛花ちゃんを推薦しようかと思っていたのよ」と言った。

「今日、凛花ちゃんに相談してみようかと思っていたら、宮司の神子さんの方から、是非頼みたい子たちがいるって連絡があって、凛花ちゃんの名前があったから、もの凄くビックリしたわけ」

 全く知らなかったことだけど、どうやら私は委員長の考えを先回りして神子さんと繋がってしまっていたらしい。

 確かに委員長の立場なら確実にビックリする内容だ。

「もしかして、史ちゃんと加代ちゃんから紹介して貰ったの?」

 そう言えば、知り合いだったなーと思い、答えようとしたところで、先に加代ちゃんが「神子のおじさんとは神社で偶然会ったの。ほら、駅近くの弁財天さんの神社」と説明してくれる。

「ああ、駅前の、なるほど、そういうことかー」

 なんだか一人で納得してしまった委員長に、私は思わず「どういうこと?」と説明を求めた。

「えっと、神子さんがこの近くの神社を複数社受け持ってるのは知っている?」

 委員長の質問に「その話は神子さんから聞いたよ」と答える。

「で、凛花ちゃんって、神社にも詳しいんだよね? 神子さんが言ってたんだけど」

 詳しいかと聞かれると、そんなに自信を持っていいきれるほどでは無いので「それなりに、知ってる程度だけど……」と曖昧に返した。

 委員長はそれで十分だと判断したのか「あの神社は神子さんの本務じゃ無いから、そこで出会えたことに凄く感動してるみたいでね。神様のお導きだろうって」と苦笑気味に言う。

「普段あんまり熱弁を振るわない神子さんが、もの凄く強く訴えていたってうちのお父さんが言っててね……あ、うちのお父さん、凛花ちゃんが神楽を舞う神社の氏子会の理事をやってるから、連絡が来たの」

 私が疑問に思うだろう事を先回りして、委員長は情報を提供してくれたので、追加の質問をしなくても状況を掴めた。

 流石だなぁと感心したところで、話を聞いていたユミリンから「リンリン、ほんむってなに?」と瞬きしながら聞かれる。

「えっと、複数の神社を受け持っている神職の方には、中心というか、メインになる神社があって、祖の神社を本務、他の兼任している神社を兼務って言うんだよ」

「ん?」

 説明がいまいちだったのか、ユミリンの眉と眉の間の皺が深くなったので、ちょっと説明の角度を変えてみた。

「えっと、茜ちゃんはおうちがお寺で、お寺に住んでいるでしょう?」

 急に名前が出たからか、茜ちゃんがひょっこり顔を出して「ん?」と小首を傾げる。

「あ、ちょっと説明に名前借りちゃっただけだから、嫌だったらごめんね」

「全然使ってくれて良いよー、聞かせては貰うけど~」

 そう言って近づいてくる茜ちゃんはどこか嬉しそうなので、組み立てた話を忘れないうちにユミリンに話してしまうことにした。

「それで、もしも、茜ちゃんが他のお寺も管理することになっても、今住んでるおうちに住んだままで管理することになると思うんだけど、この時のおうちのあるお寺が本務で、管理することになる他のお寺が兼務って感じかな」

 お寺はご住職がそのまま住んでいることが基本な一方で、神社派敷地内におうちを持っている場合と、別の敷地におうちがある通いの場合があって、神子さんがどちらかわからないので、回りくどい説明になってしまったけど、説明を終えた今冷静に考えると、もう少しわかりやすい説明があったんじゃ無いかと思えて仕方ない。

 私の考えを先回りして、必要な情報を交えて説明できる委員長の凄さと、それが出来無い自分の情けなさで私は月曜日の朝からもの凄い敗北感を噛みしめることとなった。


「えっ!? 凛花ちゃん、巫女さんするの?」

 神楽舞いの舞手なら、自動的に巫女になるのかな程度に考えて「そう……なるのかな?」と疑問交じりで答えると、質問をくれた茜ちゃんは「じゃあ、お守り売って貰おうかなー」と笑みを浮かべた。

「なんだか、巫女さんの凛花ちゃんから授かったらもの凄く御利益ありそうだよね」

 そう言ってニコニコする茜ちゃんに、私は編に誤解されないうちに「え? 舞手はするけど、お守り売ったりはしないんじゃないかな?」と伝える。

 すると、茜ちゃんは委員長に視線を向けてジッと見詰めた。

 茜ちゃんの視線で何かを感じ取った委員長は「ふむ」と小さく呟く。

 その後で「わかったわ。中学生でも巫女のアルバイトが出来るか調整してみるわ」と委員長が宣言すると、茜ちゃんが拍手で応え、何故かその輪は、加代ちゃん、史ちゃん、ユミリン、そしてクラス中へと広がってしまった。

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