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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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手芸店のトシ子さん

「確かに、凛花に自分のぬいぐるみを作って貰えたら嬉しいわね」

 お姉ちゃんがそう言って頷いてくれたので、私は「でしょう!」と強めに反応を示した。

 が、お姉ちゃんは無情に「まあ、でもそれは次回以降として、最初は皆が作りたい凛花ぬいぐるみから始めましょう」と言い切られてしまう。

 仕方が無いので「じゃ、じゃあ、私は自分以外をモデルにしても良いよね?」とせめてもの抵抗のつもりで言ったのだけど、これが良くなかった。

 まず、千夏ちゃんと史ちゃんの目の色が変わったのである。

「ね、ねえ、凛花ちゃん? 私のぬいぐるみ、作ってくれたりする?」

「凛花様、凛花様といえど練習は必須。私なら試すに最適の人材だと思います、何度でも幾度でも失敗してくださって構いません!」

 もの凄い勢いで千夏ちゃんと史ちゃんのアピールが始まってしまった。

「あら、お試しなら、わたしをもでるにしていいわよ。凛花のお姉ちゃんだし、お友達でしっぱいすつより気が楽でしょう?」

 サラリと名乗り出たお姉ちゃんに、一瞬怯んだ千夏ちゃんだったけど、素早く頭を回転させて「いえ、優しい凛花ちゃんが、凛花ちゃんにとってたった一人のお姉さんを実験台になって出来ないと思うんですよね。ここは友達として日の浅い私が適任じゃ無いかと思うんですよ!」と言い出す。

「千夏さん。それは違います。凛花様はお友達だって実験台にはしたくないでしょう。そこで、従者の私が実験台になるのが発泡丸く収まるというものです」

「いや、史ちゃんもお友達で、従者じゃ無いからね!?」

 思わずツッコミを入れてしまったことで、皆の目が私に集まってしまった。

 そして、気付く、皆の……主に、お姉ちゃん、千夏ちゃん、史ちゃんの目が、誰にするのかと訴えていることに……。

「あー、えー、やっぱり、私も、私のぬいぐるみから作ろうかなー」

 皆の視線からのプレッシャーから逃れる為に、私はつい問題を先延ばしにしてしまった。


 百貨店の中にも生地を取り扱っているお店があったのだけど、加代ちゃんの行きつけは、個人店舗の集まった近くのショッピングセンターにあった。

 実は百貨店の一角にあるお店よりも、洋裁の専門店で、取扱面積も広いらしい。

 そんな加代ちゃんも小学生時代から愛用しているお店は、実は演劇部御用達でもあったらしく、お姉ちゃんもまどか先輩もお店のことを知っていた。

 知っていると言っても、衣装製作や管理は、お姉ちゃんよりも副部長さんの方が詳しく、お店を知っている程度らしい。

 むしろ、荷物持ちなどをしていたまどか先輩の方が訪れる回数が多いみたいだ。

 そんなわけで、加代ちゃんが先頭で、ショッピングセンターに買いのお店へと入る。

 すると、白髪を頭の後ろでお団子にまとめた小柄なお婆さんが「あら、加代ちゃん、いらっしゃい」と声を掛けてきた。

「お婆ちゃん、今日はー。今日はお友達と、部活の先輩を連れてきたの」

 加代ちゃんがそう告げながら後ろに続いていた私たちを振り返る。

「あらあら」

 なんだか嬉しそうに私たちを見たお婆さんは「ああ、演劇部の子だったね」とまどか先輩を見ながら目を細めた。

「ええ、そうです、今日はー、天野まどかです」

 まどか先輩は笑顔で頷きながら名乗る。

「あら丁寧に。私はこのお店を経営している小金井トシ子といいます」

 なんと、お婆さん、トシ子さんはこのお店の店主だったようだ。

 トシ子さんが名乗ったのを切っ掛けに、私たちも自己紹介を始める。

「私は、演劇部の部長をさせて貰っている林田良枝です」

 お姉ちゃんが名乗ったので、私は慌てて「わ、私はお姉ちゃんの妹で、林田凛花って言います、よろしくお願いします」と名乗った。

「根本由美子です」

 ペコリと頭を下げるユミリンに続いて「演劇部で一年生の斎藤千夏です」と千夏ちゃんが名乗り、最後に史ちゃんが「飯野史子です。一年生です」と締める。

 けど、トシ子さんはコロコロと笑いながら「史ちゃんは加代ちゃんといつもきてるでしょう」と指摘した。

 対して史ちゃんは「和を乱すのはダメだと思いまして」と返す。

 トシ子さんは笑いながら「まあ、人に合わせられないよりは良いかもしれないわね」と頷いた。


「それじゃあ、加代ちゃんは演劇部に入ったんだね?」

 トシ子さんの問い掛けに「はい」と加代ちゃんは頷いた。

「それじゃあ、衣装の生地でも見に来たのかい?」

「はじめはそのつもりだったんですけど……いろいろ話してるうちに、練習を兼ねて、皆で凛花ちゃんのぬいぐるみを作ることになりまして」

 加代ちゃんがそう答えたことで、トシ子さんの目が自然と私に向く。

「あー、確かに目立つ子だね」

 トシ子さんに目を見ながらはっきりと言われて、思わず顔から火が噴き出しそうなほど体温が上がった。

「あらあら、うふふ。皆がモデルにしたがるのもなんだかわかるわ」

 頬に手を当ててそう言ったトシ子さんは、ここでピタリと動きを止める。

「ん? お婆ちゃんどうしたの?」

 その変化に真っ先に気が付いた加代ちゃんがそう尋ねると、私とお姉ちゃんの顔を見てからトシ子さんは「凛花ちゃんと良枝ちゃん……確か名字は林田だったね?」と聞いてきた。

「「はい、そうです」」

 タイミングを合わせたわけでも無いのにお姉ちゃんと私の声が重なる。

 そんな私たちに、トシ子さんは「もしかして、サッちゃん、幸子さんの娘さんかしら?」と聞いてきた。

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