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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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駅と跨線橋

 少し時間は掛かったものの、無事、駅へと辿り着く事が出来た。

 ただ、目にした駅の光景が衝撃的で、思わず声が飛び出そうになる。

 何しろ、私の知識というか記憶にある下の世界の駅は、駅ビルと直結した大きめの外観の駅だった。

 ところが、今、目の前に見えるのは、地上に切符の券売機が並んでいて、改札も地上にある。

 ホームに行くには改札を抜けて、木造と思しき階段を抜けていく仕組みのようだ。

 そんな木造の通路に、エレベーターやエスカレーターがあるわけも無く、バリアフリーにはほど遠い。

 しかも、改札口には人が入れる銀色の小さめなブースがあって、電車に乗る人は切符を手渡して、はさみを入れて貰っていた。

 白黒の教科書の写真しか見たことがなかったけど、自動改札になる前は、あれが一般的だったみたいで、元の世界でも健在のところもあるらしい。

 あの人が改札にいる仕組みから、磁気情報を書き込んだ切符を自動改札機に通す仕組みが出来て、その後に交通系ICカードが普及するという流れだと、リーちゃんが補足してくれた。


「今日は駅二用は無いから、こっちだよ」

 加代ちゃんはそう言って、駅から少し遠ざかる方に足を向けた。

 下の世界では、橋上駅舎となっていたので、電車のホームを跨ぐようにコンコースが整備されていて、鉄道を利用しない人でも、駅の反対側に行けるのだけど、この時代の駅舎はまだ、鉄道の利用者しか駅構内に入ることは出来ず、跨線橋を抜けて反対側にある駅舎に移動することはできない。

 そんなわけで、これまた現代では廃止されてしまっている大きな踏切に、加代ちゃんは先導してくれていた。


 片道一車線の二車線道路が通る踏切には、ちゃんと人間用の歩道が道の左右に整備されていた。

 しかも、線路を跨ぐように鉄道用の歩道橋が掛けられていて、踏切には踏切番という鉄道職員さんが常駐している小屋がある。

 本数の多い鉄道の踏切にも拘わらず、この時代の踏切は、先ほどの踏切番の人が手動で開け閉めされていたと、リーちゃんに教えて貰って、更にビックリすることになった。


「えっと、朝はしまっちゃうと長いから跨線橋使って、大丈夫かな?」

 踏切を跨ぐ人間用の跨線橋を見上げながら加代ちゃんは皆に尋ねてきた。

「大丈夫って?」

 加代ちゃんが何を聞きたいのかピンとこなかった様子のお姉ちゃんが首を傾げる。

 お姉ちゃんの見せた反応に、加代ちゃんは少し戸惑いを見せながらも、しっかりと「あの、結構高いので高い所が駄目な人がいたら、あくまで待った方が良いかなと思って」と、説明をしてくれた。

 それを聞いてお姉ちゃんは「なるほど! って、加代ちゃんスゴく気配りが出来るのね」と絶賛する。

 恥ずかしそうに「せ、折角なら、皆楽しい気持ちで回りたい……ですから」と加代ちゃんは返した。

 そんな照れてる加代ちゃんを見て笑顔を浮かべたお姉ちゃんは皆に視線を向けながら「で、どう?」と問い掛ける。

 結果、高い所が苦手という人はいなかったので、皆で早速跨線橋を渡ることになった。


「うわ、思ったよりも揺れますね!」

 ここ以外も含めて初めて跨線橋を歩くという千夏ちゃんは、少し興奮気味に跨線橋を進んでいた。

 私や加代ちゃん、史ちゃん、千夏ちゃんは、床から伸びる鉄板の板で視界を遮られて、駅や線路などは覗くことが出来なかったので、足下に石記が言ったのかもしれない。

 ちなみにユミリンやまどか先輩、お姉ちゃんの目線には、鉄板では無く金網が設置されているので、鉄道施設を見ることは出来そうだ。

 更に、線路を跨ぐということで、金網の上には内側に倒れるように支柱が立っていて、その間に自殺防止であろう有刺鉄線が掛けられている。

 そんな跨線橋は壁や支柱が鉄のようで、全体の重量を減らすためか、足下は木材ではないものの、なんだか柔らかい素材で作られているようだ。

 この素材が原因なのか、足下が弾むような感触がある。

 恐らくこの感触のせいで、千夏ちゃんは跨線橋が揺れていると感じてしまったようだ。


「よいしょ、到着~」

 軽いステップで跨線橋に備え付けられたらせん階段を降りきると、短距離走のようなフィニッシュポーズを見せた。

「ここから、また駅の方に戻るよ-」

 千夏ちゃんに続いて跨線橋を渡り終えた加代ちゃんがそう言って向かう先を指さす。

「駅を通り抜けられたら楽なんだけどな」

 三番目のユミリンが腕組みをしながらそう言うと、まどか先輩が「あー、そう言えば、今度駅を作り直すときに、通り抜けられるようになるらしいよ」と口にした。

 未来の姿を知っている私が、まどか先輩の話を聞いて作り直されたのはこの頃なんだなーとのんきに考えていると、お姉ちゃんが「駅を通り抜けられるようにしてほしいって、かなり要望があったみたいね。今だと、ほら、通り抜けるのに入場券買わないといけないから」と言う。

 そこで「あ」と何かに気付いたらしく、お姉ちゃんはポンと手を叩いた。

 自然と皆の視線が集まったところで、お姉ちゃんは「駅ビルが出来るらしいんだけどね。工事の車……トラックとかが沢山行き来するようになるから、気をつけるようにって、先生が言ってたわ」と言う。

 それに真っ先に反応した千夏ちゃんが「それって、いつ頃ですか?」と尋ね、お姉ちゃんは「今年の夏かららしいわ」と返した。

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