第二回大会
「第二回、ババ抜き大会!」
まどか先輩の宣言に、皆が拍手をし、そのまま臨戦態勢に突入した。
全員がお風呂に入り終えたところで開催されたこの第二回大会は、寝る場所が景品となっている。
ちなみに、私とお姉ちゃんの部屋で七人は流石に狭いということで、先ほど夕飯を食べた居間のソファやテーブル類を別の部屋に避難させて、無理矢理布団を敷くことになった。
結果、横に五組並べ、その上に向き合うように二組をならべ、どうにか敷き詰めることに成功したのである。
一応、二組については私とお姉ちゃんの部屋に敷いて、二人と五人で別れる案も出したのだけど、折角なら皆でという意見と、二人組が仲間はずれみたいで可哀想などの意見で却下されてしまった。
確かに、二人組だけ二階で隔離状態になってしまうので、頷ける意見だったし、皆で一つの部屋で一緒に寝るというのはやっぱりワクワクするのもわかる。
というわけで、一つの部屋に布団を敷いた結果、誰がどこに寝るのかが問題になった。
私はどこでも良いと言ったのだけど、他の皆が私の隣が良いというありがたくも少し恥ずかしくて居心地の悪い希望を出した結果、すんなり決まるわけも無く、遣ってみて楽しかったという意見や、今度こそ決着を付けるという意見の下、早速の第二回大会の開催が決定したのである。
ただ、この第二回大会、今度こそ参戦できるかと思った私の手には、カードでは無くサイコロが握られることとなった。
どこでも良いと宣言した私の寝床は、五つ並ぶ布団の真ん中、つまりは部屋の中心に決まってしまった。
他の皆の希望が私の隣だったので、平等にチャンスが生まれる配置が五組の布団の真ん中で、しかも私は場所の希望もない。
というわけで、残りの布団を奪い合う第二回ババ抜き大会への参加権は与えられず、代わりにゲームマスターとして最古を呂与えられた。
正直、ちょっと参加したくなっていたのだけど、それは第三回大会以降にと皆に言われて、一人でごねるのもどうかと思い受け入れることにしたのである。
「じゃあ、今回は勝ち抜け順に、自分が寝る布団を選べる……でいいよね?」
確認の意味も込めて、皆の顔を見渡しながら尋ねれば、皆間を置かず頷いてくれた。
私も頷きで応えてから、手にしたトランプをシャッフルしていく。
そのまま適当に切り終えた私は、一枚ずつ皆にカードを配っていった。
第二回大会の結果、第一回大会に続いて勝利を収めたのは加代ちゃんだった。
お料理にお裁縫に大活躍だったので、その分幸運が舞い込んだのかもしれない。
そんな加代ちゃんは私の左隣を選んだ。
皆の中には悔しがる姿もあったけど、勝負の結果なので、そこに文句を付ける人はいない。
なんだかんだ言ってわがままな人がいない……というよりは、皆が皆相手を尊重できて素晴らしいと思った。
加代ちゃん抜けからは長く戦いは続き、激戦を経て勝ち抜けたのはお姉ちゃんだった。
第二位を取ったお姉ちゃんの選択は、私と加代ちゃんの上、横向きの布団である。
流石に空いている私の左隣を取るのは気が引けると残るメンバーを気遣ってくれたみたいだ。
ただ、そんなお姉ちゃんの選択理由を聞いたまどか先輩が「そんなこと言ってるけど、横向きの布団の方が、姫と顔が近いよね」と言い出す。
「あら、気付かなかったわー」
白々しく聞こえるお姉ちゃんの返しに、指摘したまどか先輩は吹き出し、千夏ちゃんや史ちゃんのカードを握る手に力が籠もるのが見えた。
三位を巡る決戦を制したのは、さっきのまどか先輩の茶々に一人反応を見せなかったユミリンだった。
容赦なく右隣を選んだが、史ちゃんも残っていたから、お決まりの千夏ちゃんの挑発はしなかったあたり、相手を見ているなと思う。
残る三人の決戦は四位に千夏ちゃん、次いで史ちゃんが上がり、まどか先輩が負けとなった。
こうして勝利をもぎ取った千夏ちゃんはお姉ちゃんの反対側の布団を選び、史ちゃんは加代ちゃんの隣、残す布団にまどか先輩となる。
こうして第二回大会は幕を閉じた。
「じゃあ、寝る場所も決まったし、早く寝ましょう」
私がそう言うと、ユミリンと千夏ちゃんから「「え~~」」と声を揃えて不満の声が上がった。
やっぱり、仲が良いというか似たもの同士なんだよなぁと思いながら「明日はお出かけだから、ちゃんと寝ないとだよ!」と伝える。
これに、まどか先輩が「確かに寝不足だと楽しめないよね」と同調してくれた。
続いてお姉ちゃんが「元気だから、忘れてるかもしれないけど、凛花は退院してきたばかりだから、夜お話ししたいのはわかるけど、今日のところは寝ておきましょう?」と援護してくれる。
正直、私も忘れかけていたけど、病院帰りは事実だし、夜更かしが体調不良に繋がるのは、体感したか、目撃したかはともかく、皆経験があることなので、仕方が無いという流れに落ち着いた。
こうして私たちはそれぞれの布団に潜り込む。
電気が付いていると寝れないという人も、逆に全部消さないと寝れないという人もいなかったので、淡い光を放つグロウランプだけを付けて眠りに付くことになった。