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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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帰宅とカレー

 無事家に辿り着くと、独特の香りが私たちを出迎えてくれた。

「お、カレーだ!」

 ユミリンが真っ先に匂い反応して声を弾ませる。

 一番反応が良かったのが、ユミリンだっただけで、皆それなりにテンションが上がっていた。

「良い匂いです。さすが、サッちゃん!」

 匂いだけでカレーの味を想像できたのか、加代ちゃんは感心したような声を漏らす。

「私、カレー久しぶりかも……」

 頬をほのかに染めて、千夏ちゃんは『ほぉ』っと息を漏らした。

 よくよく思い出してみれば、マンションで一人暮らし状態だった千夏ちゃん的には、カレーも縁遠かったのかもしれない。

 そう考えると少し切なくなってしまったけど、あくまで想像でしかないので、流されないように気持ちを立て直した。

「皆、手を洗ってきたら、少しお手伝いしてくれるかしら~?」

 家の奥、台所からお母さんの声が聞こえてくる。

「了解です、幸子おばさん!」

 最初に返事をしたまどか先輩が、先頭を切って廊下を突き進む。

 ウチの洗面所は脱衣所を兼ねているので、必然的にお風呂場まで向かうことになるのだけど、まどか先輩は迷うことなく一直線で廊下を歩いて行った。

 続いて、ユミリンが続く。

 私はウチが初めての加代ちゃん、史ちゃんを待ってから、千夏ちゃんを交えて四人で移動を開始して、最後にお姉ちゃんが付いてくる形になった。


「流石ね、加代ちゃん」

「い、いえ、そのサッちゃんに褒めて貰うと凄く嬉しいです」

 カレーの付け合わせに、サラダを準備することになった私たちは、役割分担をすることになった。

 お母さんと並んで野菜を切る加代ちゃんは、お母さんからお褒めの言葉を掛けられて恐縮している。

 私の素人目で見ても手際は良いし、なによりう手慣れている感じがするので、中学一年生って言うことを考慮に入れればかなりの上級者だ。

 そんな二人を見ながら、私と史ちゃんはポテトサラダ作りを任されている。

 既にお母さんがジャガイモをむいてゆでていてくれたので、私と史ちゃんは潰して味を見ながらベーコンやにんじんを加え、塩こしょうにマヨネーズで味を調えるのが役目だ。

 味付けが入っているので、お母さんや加代ちゃんに任せたいところだったのだけど、何故か皆の希望で私の味付けが良いとなってしまったのである。

 皆に希望された以上断わるわけにも行かず、助手として史ちゃんに手伝って貰って完成させることにした。

 そんな私たちの横で、お姉ちゃんと千夏ちゃんは、レタスの葉を玉からばらし、ミニトマトを洗って、皿に盛り付けてくれている。

 二人の準備が整えば、ポテトサラダを投入して、お母さんと加代ちゃんが追加で切ってくれているキュウリや魚肉ソーセージ、ゆで卵を添えて完成となる予定だ。


 調理メンバーに含まれていないまどか先輩とユミリンは、食卓の増強に入っていた。

 今事態で食事をとるのは変わらないものの、小柄な中学生の女の子とは言え、人が四人も増えるとテーブルのサイズが流石に足らない。

 そんなわけで、ソファを言ったん隣の部屋に移してから、大きなテーブルを追加で出すことになり、ユミリンとまどか先輩は二人で協力して対応してくれているのだ。

 つい最近この世界に来たばかりの私には全く記憶にない事ではあるのだが、二人は何度も過去に協力し合っている記憶があるようで、今回も息の合った行動を見せてくれている。

 私たちも手際が悪いって事は無いと思うのだけど、それ以上にユミリンとまどか先輩の連携は完璧で、ソファの移動、テーブルの設置、簡単な掃除とあっという間に熟してしまった。


「えーと、ちょっと味見してくれるかしら、揶揄ったら蜂蜜入れて上げる辛いって頂戴ね」

 お母さんはそう言って、我が家のカレー初体験の、史ちゃん、加代ちゃん、千夏ちゃんに、小皿によそったカレーのルウを差し出した。

 それぞれ受け取った三人は小さなスプーンでルウを口に運んでそれぞれ味を確かめる。

 私も実は初体験なので味見をしておきたいのだけど、言い出せそうな隙は無かった。

 ま、まあ、一応は成人(おとな)を経験しているので、辛くて食べられないということは無いと思うのだけど、少し不安は残ってしまう。

 そんな私を見て、お母さんはクスリと笑ってから「あら、凛花も味見してみたい?」と聞いてきた。

 私は「う、うん」とお母さんの提案に乗ることにする。

 必要ないと突っぱねる方が、自然だったかもしれないけど、もしも食べられなかったときに、どうしてと思われる方が違和感が大きいと思ったからだ。

 もちろん、お母さんからの助け船を無下にしたくないというのもあったし、いざとなればカレー大好き食いしん坊キャラで誤魔化せるんじゃないかという計算もある。

 なので、皆と同じようにお皿によそって貰ったルウに口を付けた。

 独特の香辛料の香りが口に入れた途端広がって、口の中にルウの味わいが広がる。

 やや辛めだけど、耐えられないほどじゃないなと思ったのだけど、千夏ちゃんに「凛花ちゃん、大丈夫なの!?」と驚きの声を上げられてしまった。

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