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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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発展と計画

「衣装の重要性はわかっていたけど、正直、着せる楽しみについては意識が回ってなかったわ」

 拳を握りしめて悔しがるお姉ちゃんに、千夏ちゃんが驚いた様子で「こんな身近に凛花ちゃんがいるのに、着せ替えで遊んだりしてなかったんですか!?」と驚きの声を上げた。

 明らかに、お人形では無く、私がその着せ替えの対象とわかる内容に、自分の表情が引きつったのを感じる。

「そうね……過去の私の思慮の浅さを痛感しているわ」

「良枝先輩」

 深刻な顔で呟くお姉ちゃんの背中を気遣うように優しく撫でる千夏ちゃんの図は、なんだか感動すら覚えそうな素敵な先輩と後輩の姿に見えるけど、私で着せ替えをしなかったことを悔やんでいるのだ。

 そう思うと、自然とジト目になってしまったのだけど、そんな私などお構いなしに二人は盛り上がっていく。

「大丈夫です、これから、衣装作りも覚えて、凛花ちゃんに似合う衣装を沢山生み出しましょう!」

 力強く言う千夏ちゃんに、お姉ちゃんは頷くなり「そうね。すぐに小夜子に連絡を取りましょう!」と言い出した。

 お姉ちゃんがそう口走った瞬間、一瞬止めようと思ったけど、冷静に考えて、元の世界の『すぐ』とこの世界の『すぐ』にはかなりの時間の差があることに気が付いて思い留まる。

 元の世界なら文字通りスマホで()()電話なり、アプリなりで連絡を取るのだろうけど、この時代はまだ携帯電話が普及仕切っていなかった。

 リーちゃん情報に寄れば、公衆電話が至る所に設置されていて、テレホンカードという公衆電話用の磁気カードがようやく普及し始めたところらしい。

 というわけで、最短でも近くの公衆電話に駆け込むか、家に帰ってから電話なので、それまでに落ち着くはず……落ち着くと良いなと思うことにした。

 そんなタイミングで、まどか先輩が「小夜子にいきなり連絡をするよりも、折角明日駅前に行くんだから、自分たちなりに生地について調べたり、洋裁の情報を集めたりして知識を増やしてからの方が良いんじゃないかい?」とお姉ちゃんに声を掛ける。

 お姉ちゃんは少し考える素振りを見せてから「それもそうね」と頷いてから、私に視線を向けてきた。

「え、なに、お姉ちゃん?」

 瞬きをしながら、そう尋ねると、お姉ちゃんは「うーーーん」と唸った後で「違うわね」と言う。

 私の頭には『なにが?』という疑問が溢れ出した。

 そんな私を置き去りに、お姉ちゃんは視線を加代ちゃんに移す。

 視線を向けられた加代ちゃんは一瞬ビクッと身体を震わせてから「なんですか、良枝先輩?」と尋ねた。

 すると、お姉ちゃんは私の時と違い、加代ちゃんに「聞きたいのだけど……」と切り出す。

「なんですか?」

「加代ちゃんはお料理だけじゃなくて、お裁縫とかも得意かしら?」

 お姉ちゃんの問い掛けに、加代ちゃんは「料理も得意ってワケじゃ無いんですけど……」と困り顔で返した。

 そんな加代ちゃんに対して、お姉ちゃんは首を左右に振って「そんなことは無いわ。手際は良かったし、何より手慣れていたもの。少なくとも、ここにいるメンバーの中では一番上手いんじゃ無いかしら」と断言する。

 それはそうと思った私は「私もそう思うよ、加代ちゃん」と伝えてみた。

 私の同調を切っ掛けに、史ちゃん、千夏ちゃん、ユミリン、まどか先輩と、皆が同意したことで、加代ちゃんは赤面することになってしまう。

「な、なんだか、皆に褒めて貰った後で、言い難いんですけど、お裁縫もそれなりに……」

 そう加代ちゃんが言った直後、史ちゃんが「それなりどころじゃ無いです。加代は小学校の時、家庭科の成績は常に5でしたから」と、シレッと言い放った。

「ちょ、ちょっと、史!?」

 慌てた様子の加代ちゃんに、千夏ちゃんは「加代ちゃん、皆、そうだろうなって思ってるから、慌てる必要は無いよ」と言う。

 確かにその通りなのだけど、一応教師として「それはそうかもしれないけど、他の人の成績を勝手に言うのは駄目だと思うな」と釘を刺した。

 私の思いが届いたのか、史ちゃんは「確かに、それは、ゴメンなさい、加代」と素直に頭を下げる。

「い、いや、良いけど、その、恥ずかしいから、不意打ちは止めて」

 加代ちゃんはそう言ってあわあわとしていたけど、お姉ちゃんは「でも、もの凄く納得のいく補足だったわ」と感想を口にした。

 その後で、お姉ちゃんは改めて加代ちゃんに向き直って「もし、加代ちゃんが嫌じゃ無ければ、私にもお裁縫を教えてほしいんだけど」と言う。

 加代ちゃんは戸惑いながらも「そ、そんなに、スゴくないですからね」と伝えた。

「それでも、私よりも慣れているみたいだし、学ぶところは多いと思うの」

 お姉ちゃんの発言に対して、加代ちゃんは「そ、それは……」と言葉に窮してしまう。

 まどか先輩は「良枝、そんなに迫ったら、加代ちゃんも困ってしまうよ? 少なくとも、君先輩で、友達のお姉さんで、部活の部長なんだよ」と柔らかな口調で言いつつ、お姉ちゃんと加代ちゃんの間にスルリと入り込んだ。

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