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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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異変

「ま、まいりました」

「わかればよろしい」

 お百合に襲いかかられた私は、脇腹を執拗にくすぐられて、無理矢理笑わされることになった。

 廊下に倒れ込まないギリギリを責めてくる力加減が恐ろしい。

 推定でしか無いけど、妹や弟に使っている技に違いないと思った。

 何しろ手慣れている。

 粗くなった息を整えながら、ジッとお百合を見る。

 対してお百合は廊下に降ろしていたごみ箱を持ち上げてから「さ、リンリン、遊んでないで帰るぞ、ホームルーム始まっちゃうからな」と、涼しい顔で言い放った。

 その態度に対して反論する。

「お百合のせいですよね!」

 対して、お百合は、ごみ箱を下に降ろすと、両手を私に見せつけるようにして、ワキワキと動かし始めた。

 その動きを見ているだけで、脇腹にくすぐったさが蘇ってきて、ぞぞぞっと背中に沿って怖気が駆け上ってくる。

 私は即座にこれ以上は危険だと判断して「と、ともかく、教室に戻りましょう」と早口で言って。踵を返した。

 背中を向けるのには本のちょびっと抵抗はあったけど、お百合は後ろから押そうなんて真似はしないと信じて歩き出す。

 無事、予想が当たってくれたお陰で、お百合の手が迫ってくることは無かった。


「お、二人ともご苦労様ー」

 教室に戻ったところで、席に着いていたユミリンに手を振って出迎えてくれた。

 お百合はユミリンの前の席、私は後ろの席にそれぞれ座る。

 その後で、チラリと左隣を見れば、男子生徒が席に着いていた。

 既に、委員長が動いているかもしれないけど、一応確認してみようと思って、私は隣の席の……多分、渡辺君に声を掛けてみる。

「ね、ねえ、渡辺君」

 私が声を掛けると、推定渡辺君はビクッと肩をふるわせてからこっちに顔を向ける。

「な、なん……だ?」

 ぶっきらぼうというよりは、妙に緊張している様子の渡辺君の姿から、女子に話し掛けられる度に緊張していた中学時代の京一の記憶が呼び起こされて苦笑しそうになってしまった。

 ただ、渡辺君の方が緊張してくれたお陰で、その先を聞くのに、抵抗はほぼなくなる。

 ありがたく思いながら「さっき、その掃除の時間は、どうしたの?」と、直球で尋ねた。

 すると、渡辺君は「どうしたって?」と私の質問の意図がわからないと言わんばかりの様子を見せる。

 その反応に、大きな違和感を覚えたものの、踏み込まなければ情報は得られないので、もっと具体的に聞いてみることにした。

「えっと、掃除の時視聴覚室に、渡辺君達男子が来なかったでしょう? どうしたのかなと思って」

 私の問い掛けに、渡辺君は驚いた顔で目を瞬かせる。

 そのまま固まっている渡辺君に代わって、その一つ前の席に座る……多分、矢野君が「何言ってるんだよ、林田さん」と話に参加してきた。

 私が視線を向けると、それを合図に矢野君が続きを口にする。

「一緒に掃除したのに、無かったことにするのは流石に酷いよ」

「え?」

 思わず助けを求めるように、ユミリンに視線を向けたのだけど、掛けられたのは背筋が冷たくなる言葉だった。

「リンリン、調子悪いなら、もう一度保健室行こう」

 心配そうな顔で私を見るユミリンの表情は、とても冗談を言っているようには見えない。

 どういうことかはわからないけど、少なくとも渡辺君、矢野君、ユミリンの中の記憶の中では、男子も一緒に掃除していることになってしまったようだ。

「大丈夫だよ。ちょっと勘違いしてたかも、ね、お百合」

 苦笑しながら、最後まで一緒にいたお百合の認識がどうなってるのか知りたくて、少し強引に話しかけてみる。

 すると、お百合は「ゴミ捨ての間は特に普通だったけど……」と記憶を辿るような素振りで答えた。

 その様子からして、男子が相似に参加していたと言うことに疑問をid咲いているようには見えない。

 私だけが違う体験をしていたのか、あるいは皆の記憶が改変されたのか、何かの影響を受けているという予想は立ったものの、その得体はまるで知れなかった。

 そして、考えているうちに、どこからか、矢野君や渡辺君を含む男子六人も視聴覚室で一緒に掃除をしていたような光景が浮かんでくる。

 このままでは()()()()()()と感じた私は、身体から、球魂を切り離した。


 球魂を身体から切り離したことで、制御を失った私の身体は机にるっぷしてしまった。

 その光景を上から見下ろす形で確認した私は、同時に私の身体、特に頭に纏わり付くモヤのようなものを目撃する。

 恐らく、あれが記憶を書き換えているのだと判断した私は、モヤの動きを観察しながら様子を見ることにした。

 けど、私が求婚を切り離したことで、事態は良くない方向に転がってしまう。

 急に意識を失ったように見えたせいで、ユミリンを始めとした皆が慌てだしてしまったのだ。

「ちょっと、リンリン、大丈夫!?」

 私の身体を揺するユミリンに続いて、反応が無いと判断したお百合が「おい、保健室に連れていこう」と言い出す。

 未だモヤが消えていないせいで、身体に戻ることの出来ない私は、成り行きを見ていることしか出来なかった。

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