表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
179/446

実演と交代

「あの……もの凄く、恥ずかしいんだけど……」

 いつの間にか、千夏ちゃんまで参加して、私の前にしゃがみ込んだ三人にそう伝えた。

「凛花ちゃん、足の動きを見るためには、この状態が一番良いと私も思うのよ」

 史ちゃんのようにしゃがんだ状態からこちらを見上げながら真面目な顔で千夏ちゃんは言う。

「ステップって足の運びが大事なんでしょう? 詳しく見たい」

 これまた真面目な顔で、加代ちゃんが続いた。

 最後に史ちゃんが「大丈夫です。凛花様の御御足は傷も無いですし、真っ白でしなやかで柔らかそうなのが見るだけでわかります。恥ずかしがる必要なんてどこにもありません」と力強く言い切る。

 千夏ちゃんと加代ちゃんの発言はなんとか飲み込めたけど、史ちゃんの発言は流石に、飲み込むことが出来なかった。

 とはいえ、悪げが無いように見えるので、拒絶も違うと思う。

 こうなってしまえば、もうこのまま見られ続けるのを我慢してやり終えるべきだと考えた私は、千夏ちゃんに「やってみるから、リズム頂戴」と伝えた。

「これくらいのペースで」

 口頭で伝えるのは難しかったので、実際に手を叩いてリズムを伝える。

 すると、千夏ちゃんは「じゃあ、このペースね」と言いつつ、私の聞かせたのと同じタイミングで手を叩いてくれた。

「うん、そのままお願い」

 千夏ちゃんにそう伝えてから、心の中で『4、3、2』とカウントを始める。

 意識を集中することで皆の視線が気にならなくなるのと、踏み出しがピッタリ重なったお陰で、私は自分でも上出来と思えるステップを踏めた。


 ボックスステップは四角形を描くように四回足を動かして元の位置に戻るというステップだ。

 右足を左前に着地させ、次に左足をクロスさせて右前に置く。

 左前から右足を引いて今度は左足の後ろ、右後方に置き、左足を左後方の戻して最初の準備段階に戻ってくるのが一連のステップの流れだ。

 ステップを踏むのは、右足、左足の順番で、連続で同じ足を動かすことは無い。

 足さばきというか、足の置く位置は、クロス、戻す、クロス、戻すの繰り返しで、こちらも単調な組み合わせではあるのだが、これを組み合わせると、人によっては混乱してしまうのが難しいところであり、人間の感覚の面白いところだ。

 頭でしっかり仕組みを理解しているのに実際動こうとすると、うまく出来ないと言うこともあるらしい。

 こうなってしまうと理屈では習得できないので、反復を繰り返して、文字通り身体に覚えさせるしか無いのだ。

 加代ちゃん、史ちゃんの二人がどんな具合なのかはわからないけど、真剣に私のステップを見ている姿を前にすると、なんとか上手くステップを踏めるようになってほしいと思う。

 そんなわけで、千夏ちゃんの説明を聞きながら、彼女の拍手が刻むリズムに合わせて、私は何ステップも同じ動きを繰り返した。


「じゃあ、見てるから、頑張ってね、二人とも」

 私は二人の前に陣取ってしゃがみ込んだ。

 制服のスカートだと地面に突いてしまうので、手で押さえなければいけなかったけど、今履いているスカートは身に過ぎてその必要も無い。

 改めて、短いことを痛感してしまうことになった私は、恥ずかしさを紛らわせる為に「史ちゃん!」とうこし大きめの声で呼びかけた。

「な、何でしょうか、凛花様?」

 ちょっと大きすぎてしまったか、史ちゃんが少し驚いた様子で反応する。

 私は「あ、ごめん。ちょっと声が大きかったね」と最初に謝罪してから「ステップを踏むとき、少しスカートを持ち上げてくれる?」と伝えた。

 史ちゃんは「えっ」と驚きの声を上げてから、もじもじとしながら「り、凛花様が仰るのでしたら、私に否はありません」と顔を赤くして言う。

 これは良くない流れだと直感で理解した私は「膝まで見えれば良いからね」となるべく抑揚が付かないように気をつけながら目安を伝えた。

 対して史ちゃんは「え、膝までで良いんですか?」と首を傾げるので「ステップがちゃんと踏めてるか確認するためだから」と告げる。

 このまま変な方向に話が転がる前に、私は史ちゃんから加代ちゃんに視線を移した。

「加代ちゃんのスカートは、膝丈だから、そのままで大丈夫だよ」

「うん。わかった」

 加代ちゃんからの返しを聞いてすぐに、私は千夏ちゃんに「じゃあ、始めましょう。千夏先生」と振る。

「そうだね。先輩達もゴールしちゃうかもだしね」

 千夏ちゃんはそう言って頷いてから「じゃあ、史ちゃん、加代ちゃん。さっきの凛花ちゃんの時のように私が拍手でリズムを刻むから、自分のタイミングで始めてみて」と言った。

 これに、史ちゃんは士カートを軽く持ち上げながら「えっ」と声を上げる。

 千夏ちゃんはできる人なので、その声の理由に思い当たらんかったようだけど、自分たちのタイミングでって言うのがハードルの高いことなんだと知っている私は、ここで「あ、千夏ちゃん、二人で一緒に始められるように、私が4、3、2ってカウントダウンしてみても良いかな?」と提案してみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ