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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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一致団結

「そうだね。私もそう思う」

 私が頷くと、加代ちゃんが「私たち、アイドルグループだしね」と、加代ちゃんが少し戯けた調子で言った。

「『おチビッ子クラブ』ですね」

 加代ちゃんの言葉に頷きながらユニット名を口にすると、ここまで明るい表情を浮かべていた千夏ちゃんの表情が少し曇る。

「大丈夫だよ、千夏ちゃん。クラスは違うけど、ウチの委員長が千夏ちゃんみたいな逸材を放っておくわけないよ」

「凛花ちゃん」

 私の言葉に千夏ちゃんの表情に明るさが戻った。

 少しホッとしながら「それに今は学校じゃ無いんだから、千夏ちゃんもグループメンバーでいいと思う……あ、嫌じゃなければだけど」と、更に言葉を重ねる。

 対して千夏ちゃんは「むーーーしーーーろーーー。同じクラスじゃ無いことが残念だって思ってたくらいだから! 参加できるならしたいよ!」と強い口調で訴えてきた。

 意見を求めるようにちらりと、史ちゃんと加代ちゃんに視線を向ける。

「リーダーが良いなら、私は構わないと思うよ」

 加代ちゃんはそう言った後で「で、故人としては、千夏ちゃんは大歓迎だよ」と言い加えた。

 一方史ちゃんの方は、運動に自信が無いのもあって「私も異議無しです……というか、むしろ私の方がチームの足手まといになりそうです」と俯いてしまう。

 私はそんな史ちゃんの手を握って「大丈夫、千夏ちゃんも言ってたけど、四人なら補い合って、何でもこなせると思うよ」と発破を掛けた。

「凛花様……」

 目を潤ませて私を見る史ちゃんは、小さく身体を震わせてから、いをっけっしたようなつよいいしの籠もった顔で「そうですね。自信が無いからとやる前から諦めるのは良くないですね!」と言い放つ。

 その決意に、加代ちゃんは「おーー」と言いながら拍手を贈った。

 千夏ちゃんは「なんか、良いね。自分一人だと出来なかったり、やれそうに無いって思っても、仲間がいるって思うとやる気も、出来るかもしれないって気持ちも湧いている」と柔らかな笑みを浮かべる。

 私は皆の気持ちが上向いてきたのを確認してから、加代ちゃんに「それじゃあ、加代ちゃん先生、ホットケーキ作り始めましょう!」と呼びかけた。

 すると、加代ちゃんはパカッと大きく開けた自分の口を覆って「そうだった」と漏らす。

「そういえば、これから歩とケーキの生地作るんだったよね」

 照れたように頬を掻いた加代ちゃんに、史ちゃんが「加代にしてはうっかりだね」と苦笑を向けた。

「はははー」

 その発言を受けて乾いた笑いを放った加代ちゃんに、私は「でも、緊張はなくなったんじゃない?」と尋ねてみる。

 加代ちゃんは「そうだねー。千夏ちゃんじゃ無いけど、この四人ならどうにか出来そうな気がしてきたよ」と頷いた。

 更に加代ちゃんは「多分失敗したらどうしようって思いが強かったけど、史がやる気になったのを見たお陰かなー。やる気も出たし、失敗しても皆ならフォローしてくれるから、やってみようって思えたよ」と笑顔で、今抱いた思いを伝えてくれる。

「じゃあ、改めて……」

 私がそう口にしたところで、千夏ちゃんが突然「あっ」と声を上げた。

「え!? どうしたの?」

 急な発声に、目を丸くすると、千夏ちゃんは「良いこと思い付いた」と言う。

「良いこと?」

 首を傾げる加代ちゃんの前に、千夏ちゃんは自らの手を真っ直ぐに差し出した。

 意図がわからず私が「ん?」と言うと、千夏ちゃんは「皆、手を重ねて」と呼びかけてくる。

 私、史ちゃん、加代ちゃんが順番に手を重ねると、一番上に千夏ちゃんがもう片方の手を重ねた。

「バレーボールのドラマで見たの、こうして、一致団結するシーン」

 千夏ちゃんの発言に、加代ちゃんが「うん。私も観た」と頷く。

 史ちゃんは「なんだか気持ちも重ね合わせているような気がしていいですね」と笑みを深めた。

「そうだね。凄くテンションが上がるね」

 私がそう言うと、三人が声を揃えて「「「てんしょん?」」」と首を傾げる。

 直後、自分の大失敗に思い至った。

『テンションが上がる』というのは、元の世界では一般的に使われている『気分が上がる』という意味で使われているが、元々の語源の『テンション』は英語で、不安や緊張のコトなのである。

 つまり、誤用が元になった言葉で、英単語を知っていれば逆に意味が通じなくなってしまう言葉だ。

 それをそのまま説明するとややこしくなるし、未来の言葉を知っているのはおかしなコトになるので、ここでは力尽くで押し切ることにする。

「気持ちが昂ぶってきたってコトだよ!」

 三人は『テンション』の意味を知らなかったのか、あるいは私に合わせてくれたのか、ツッコむこと無く、それぞれ頷いてくれた。

 そんな中で千夏ちゃんが「それじゃあ、リーダー掛け声をお願いします」と私に向かって微笑む。

 誤用の失敗を隠さなきゃと言う気持ちだけで、頷いた私は「それじゃあ、調理開始!」と先のことを考えず音頭をとってしまった。

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