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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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先生陣

「あの、何でお母さんも混ざっているの?」

 居間でテーブルを囲みながら、宿題を始めようとしたところで、ちゃっかり混ざってるお母さんに意図を聞いてみた。

 私はともかく、友達のお母さんが混ざっているのは居心地が悪いんじゃ無いかと思っての質問だったのだけど、お母さんは「あら、凛花はお母さんが邪魔なの?」と悲しそうな顔で首を傾げる。

 別に私としてはいてくれても構わないけど、他の子はどうかわからないので「友達のお母さんが混ざってたら緊張するかも知れないでしょう?」と『なぜここにいるのか』尋ねた理由をそのまま伝えた。

 すると、お母さんはよりにもよって皆に向けて「私がいると、緊張して勉強が手に付かなくなっちゃいそうかしら?」と言い出す。

 対して真っ先に答えたのはユミリンだった。

「リンリンもお姉ちゃんも厳しいから優しく教えてくれるなら大歓迎!」

 口にしたあんまりな内容に、思わず「ちょっと、ユミリン!」と抗議の声を上げた私と違って、お姉ちゃんは満面の笑みを浮かべて「あれ、そんなこと言うの、由美子ちゃん」とゆっくりとした口調で言い放つ。

「折角、お勉強を見てあげようって思っているのに、由美子ちゃんは悪い子ねぇ」

 穏やかにして優しい口調が、恐怖心を掻き立て、ユミリンの口から「ひぇぇ」という声を引き出していた。

 対象でもなければ、聞いてるだけなのに、私も背中が寒くなったので、ユミリンが怯えるのは仕方ないというか当然というか、理解できてしまう。

 そんな優しいのに恐ろしいお姉ちゃんを前に、ユミリンは盛大に咳払いをしてからお母さんに視線を向けた。

「私はおばさんがいても、緊張しないし、むしろ大歓迎です!」

 改めてそう口にした後で、ユミリンは「というかですね! いてくださると滅茶苦茶嬉しいです!!」と、必死というのが一目瞭然な訴えを付け足す。

 思わず噴き出しかけたけど、私は口を両手で押さえて踏み止まった。

 このタイミングで笑うと私に視線が向いて変に被弾しないと思ったからだけど、どうやら皆も見たような考えと行動をしていたらしい。

 目を逸らしたり、顔を逸らしたり、唇を噛んで堪えたりしていた。

 もしかすると口を押さえた私のリアクションが一番大きかったかもしれない。

 そのせいか、お姉ちゃんの視線を呼び込んでしまったらしく「凛花」と声を抱えられてしまった。

 ゾゾゾゾゾと、背中に感じる寒気が増した気がする。

 何か返さなきゃいけないと思いつつも、何も思い付かない追い詰められた状況の中、史ちゃんが「はい」と声を上げると共に手を挙げた。

「史ちゃん?」

 お姉ちゃんの意識が史ちゃんに向く。

「私の意見も、いいでしょうか?」

 許可を求める史ちゃんに、お姉ちゃんは「もちろん、どうぞ」と史ちゃんに発言を促した。

「もし、幸子お母様が時間に余裕があって、参加してくれるなら私は嬉しいです。なので、私は参加してほしいと思います!」

 はっきりとそう言い切った史ちゃんは、視線を加代ちゃんに向ける。

 視線を向けられた加代ちゃんは「えっと、私は……」と少し躊躇いがちに話し出した。

「正直、リンちゃんが心配してくれたように、少し緊張しちゃうかもしれないけど、サッちゃんとお話しもしてみたいから、参加して貰えるのは嬉しいかな……緊張はしちゃうかもだけど……」

 緊張することを申し訳ないと思っている上に、平静を保てる自信が無いのか『緊張するかもしれない』を繰り返した加代ちゃんに、お母さんは「まあ、スゴく年が離れているからね。だから、緊張するのは仕方ないと思うの、でも、それでも交流してみようと思ってくれて嬉しいわ」と微笑みかける。

 ほんの少し頬を赤らめた加代ちゃんは「じゃあ、私も賛成……で」と口にしつつ、千夏ちゃんに視線を向けた。

「私も賛成なので、反対者は無し……って、まどか先輩はどうですか?」

 千夏ちゃんに話を振られたまどか先輩は「ひょっとして、私のこと忘れてた?」と軽口で問い掛ける。

「忘れてはいないんですけど、良枝お姉ちゃんと幸子お母さんと同じく、先生側だと思ってたので聞かなくても良いかなと思ってました……けど、ちゃんとかクニして置いた方が良いかなと途中で気が付いたんです」

 理路整然とした答えに、まどか先輩は「先生側か」と小さく呟いた。

 自他共に教えるのが苦手だと思っているまどか先輩にとって、千夏ちゃんが先生側にカウントしていたというのは、思うところがあったらしい。

 少し間を開けてたから、いつも通りの明るい声でまどか先輩は「私は反対する理由がないから、良枝はどう?」とお姉ちゃんに話を振った。

「私は皆が良いなら反対しないわ、ね、凛花?」

 最後にお姉ちゃんから私に話が振られ、皆の視線も集まってくる。

 私は少し考えてから、お母さんに向かって頭を下げた。

「それじゃあ、教えてくれると嬉しいです。お母さん、先生」

「あら、幸子先生とか、サッちゃん先生でもいいわよ」

 名前で井のに少し抵抗があったからお母さんに先生を付けたのに、知ってか知らずかそんな返しをお母さんはしてくる。

 私はあえてお母さんの発言をスルーして「お姉ちゃん先生、まどか先生、お母さん先生にします」と自分の方針を示した。

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