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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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呼び方と準備

「ということで、私のことは心配要らないから、いつでも遊びに来て頂戴」

 お姉ちゃんの言葉に、加代ちゃんと史ちゃんは顔を見合わせて、笑顔で頷き合った。

 千夏ちゃんは「はい!」と返事を返してから、お母さんに視線を向ける。

「お母様! これからもお邪魔させていただきます!」

 お母さんは「ええ。凛花とも良枝とも仲良くしてあげてね」と頷いた。

 そんな千夏ちゃんに続いて、加代ちゃんが「私もよろしくお願いします。おば……お母さん!」と言う。

 対して、お母さんは「自分のお母さんじゃ無いんだから、おばさんで良いのよ?」と苦笑した。

「え、えーと……」

 お母さんの返しに、加代ちゃんはどうするのか、選べなくなったしまったらしい。

 そんな加代ちゃんに対して、お母さんは「サッちゃんでも良いわよ」と、助け船になっているのか怪しい言葉を放り込んだ。

 ところが、加代ちゃんは「えーと、じゃあ……サッちゃん」と、お母さんの無茶振りを受け入れてしまう。

「じゃあ、私は加代ちゃんで良いかしら?」

「は……はい」

 お母さんの切り返しに、何故か照れたような表情で頷いたところで、加代ちゃんは回りの皆が不思議そうな目を向けていることに気付いたようだ。

「あ、えっと、サッちゃんは若くて綺麗で、リンちゃんと良枝先輩のお姉さんにしか見えなくて、おばさんって言うのは抵抗があったから……その……ダメだったかな?」

 理由を口にし終えた加代ちゃんは、私の方を向いて問いを付け加える。

 友達が自分のお母さんをあだ名で呼んだら、不快かもと思ってくれたのだろうと思った私は、お姉ちゃんに視線を向けた。

 お姉ちゃんは軽く笑みを浮かべただけだけど、それだけで私たちの意見が同じだなと思える。

「お母さんと加代ちゃんが良いなら、私は良いと思う」

 そう答えてから、改めて意見に違いが無いことを確かめるために「ね、お姉ちゃん」と振ってみた。

 笑顔で頷いたお姉ちゃんは「うん。私も二人が良いなら良いと思うわ」と言う。

 ここで、史ちゃんが「はい!」と手を挙げた。


 史ちゃんの挙手に反応する人がいなかったので、私が「はい、史ちゃん」と応じてみた。

「あの、私は幸子お母様とお呼びしたいんですが、よろしいでしょうか?」

 私が指名してみたものの、史ちゃんの質問の相手はお母さんだったらしい。

 ジッと自分を見て許可を求める史ちゃんに、お母さんは「よろしくってよ!」と何故か背筋を伸ばして答えた。

「ありがとうございます、幸子お母様!」

 お母さんの快諾を受けて、史ちゃんはお姉ちゃんに視線を向ける。

 ターゲットが自分に写ったことを感じ取ったお姉ちゃんが、やや身体を強張らせた。

「良枝先輩じゃなくて、良枝お姉様とお呼びしても良いでしょうか?」

 史ちゃんの問いに、お姉ちゃんは「よろしくてよ」と返す。

 態度から声の強弱のポイントまでお母さんそっくりで、私は思わず笑ってしまった。

 それが呼び水になって、皆が笑う中、史ちゃんが「凛花様。凛花様とお呼びしても良いでしょうか?」と悪戯っぽい笑顔で聞いてくる。

「よろしく……」

 途中まで乗ろうと思ったけど、恥ずかしさで詰まってしまった。

 もう無理だと判断を下した私は「って、もう、史ちゃんは様付けで呼んでるよね!」とノリツッコミに切り替える。

 チロリと舌を出して「それも、そうでした」と史ちゃんが返してくれたことでオチが付いて、再び笑いが起こった。


「えーと、明日は駅の方に遊びに行こうと思うので、宿題をしましょう!」

 私の提案に不満の声を上げたのは、ユミリンただ一人だった。

「えー、宿題は後でも出来るじゃん!」

 どう考えても『後で』が来そうにないユミリンに、心を鬼にして「今日ちゃんと宿題を終わらせなかったら、ユミリンは留守番ね!」と言い放つ。

「そ、そんな!?」

 顔を青くしながらショックを受けた様子を見せるユミリンに「楽しいことが待ってるんだから、心から楽しむために、先にやるべきことをやってしまいましょう! 今ならわからないところはお姉ちゃん達が教えてくれると思うし」と伝えつつ、お姉ちゃんを見た。

「もちろん。私に教えられることなら何でも聞いて」

 自信ありと言わんばかりに胸を叩いたお姉ちゃんの横で、まどか先輩が「私はあんまり役に立たないと思うので、そのつもりでお願いします」と頭を下げる。

「え、まどか先輩って、普通に勉強も出来そうなのに」

 思わず思ったままを口にすると、まどか先輩は「まあ、勉強はそれなりに出来る方だけど、壊滅的に教えるのが下手なんだよねー」と苦笑いを浮かべた。

 もの凄く納得出来る内容に私は思わず「なるほど」と頷いてしまう。

 対して、まどか先輩は「なるほどって、簡単に納得しすぎじゃ無い?」と不満があるらしく、にじり寄ってきた。

 私は適度な距離を保ちつつ「いえ、まどか先輩は職人気質というか、見て覚えろみたいな気質かなと思っていたので、教える場合、相性のいい人と悪い人がいそうだなって……」と頷いた理由を告げる。

 すると、お姉ちゃんが「スゴいわね、凛花。全くもってその通りよ」と拍手してくれた。

 一方まどか先輩は「見抜いた上で納得なら何も言えないわ」と苦笑を浮かべる。

「なので、相性の良い人が相手なら、もの凄く伝わるんじゃ無いかと思います」

 それがフォローになっているかは自信が無かったけど、私が言い終えた後のまどか先輩の笑みからは、苦みが消えていた。

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