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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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疑問

 中本さんの謝罪に対して、飯野さんは「謝ること無いよ!」と笑顔で言い放った。

「お百合のお陰で、凛花さまのスゴいところをまた一つ知れたわけだから、むしろよくやってくれたって思うよ!」

 私の腕にしがみつきながら力説する飯野さんに、中本さんは「そ、そうか」と微妙な表情で返す。

 一応区切りは付いたと判断した私は、少し大きめの声で「それよりも、掃除しよ! 掃除の時間なんだから」と言ってから、掃除用具入れに指さした。

「それじゃあ、モップ持ってこよう~」

 そう言いながら久瀬さんがちょこちょこと、掃除用具入れに歩み寄る。

「私はぞうきん出してくるわ」

「あたしもそうしよ」

 廊下にある流しの方へと向かったユミリンに続いて、中本さんも視聴覚室を出て行く。

 皆がそれぞれ掃除道具を取りに動く中、飯野さんは腕に抱き付いたままだった。

 一応話してくれないかなーと思って視線を向けたんだけど、飯野さんは知ってか知らずか笑顔で「ささ、取りに行きましょう、凛花さま」と声を弾ませて私の腕を引く。

 まあ、慕ってくれているのは悪い気はしないし、緋馬織で慣れたのもあって、そのまま二人で掃除道具入れに向かった。


 私がほうき、飯野さんがチリトリ、久瀬さんがモップを手に戻ってくると、濡れたぞうきんを手にした中本さんとユミリン、ホウキを持った委員長に加え、お下げ髪を左右の肩から降ろしている3班の最後の一人、小木曽さんが加わっていた。

 小木曽さんはのんびりした雰囲気のある子で、猫を被ってるときの那美ちゃんにちょっと似ている。

 ただ、身長がもの凄く高くて、目を合わせようとすると見上げないといけないくらいだ。

 クラスの女子でも一番か二番くらいの背の高さで、ほとんどの男子よりも高い。

 残念ながら身長には恵まれていない私としては、少し羨ましく思ってしまう子だ。

 そんなことを思っていると、小木曽さんの方から「林田さん?」と声が掛かる。

 見ていた理由を聞いているだろうから、素直に「背が高くて良いなって思ってました」と伝えた。

 私の言葉に対して、小木曽さんは少し困った表情を見せる。

 その理由は推測が付くので、先回りして「ごめんね」と手を合わせた。

「ん?」

 私の言葉が意外だったのであろう小木曽さんは首を傾げる。

「背の高い人には背の高い人の悩みがあるのはわかってるんだよ。もしかしたら、小木曽さんは背が高いのが嫌なのかもしれない。そこも考えずに、憧れだけで言ってしまいました。ゴメンなさい」

 そう言って頭を下げた私に対して、小木曽さんは「いや、なん、あの」と急に慌てだしてしまった。

 以前はパニックになりやすかった私としては、とても他人事には思えず、慌てて頭を上げて、小木曽さんに「ゴメンなさい。慌てさせるつもりは無かったんだけど」と声を掛ける。

「わ、わらひこひょ」

 完全に裏返ってしまった声で、慌てぶりに拍車を掛けた小木曽さんの背中を撫でながら、委員長が「茜ちゃん、落ち着いて落ち着いて」と囁いた。

 すると、小木曽さんは深呼吸を繰り返しながら、徐々に落ち着きを取り戻していく。

 ここで変に声を掛けると、状況が逆盛りしかねないなと判断した私は、黙って成り行きを見守ることにした。


 小木曽さんが長い溜め息を吐いて落ち着きを取り戻した様子を見せたところで、中本さんが「それにしても、男子はどうしたんだ?」と視聴覚室を見渡しながら首を傾げた。

 普通に掃除を始めていたので、単純に、曜日毎とかで、男女のどちらかが交代で掃除をやるルールなのかと思っていたのだけど、そうでは無かったらしい。

「サボりかしら……綾川先生に言わないと」

 不機嫌そうな顔で、言う委員長に、皆も『そうだね』と同意した。

 これまでもサボることがあったのか、今日がおかしいのか、私は正直わからないので、黙って成り行きを見守ることにして、様子を覗っていたのだけど、それがおかしな方向に向いてしまう。

 皆が同意する中、私が意見を保留したことで、目線が集まってしまったのだ。

 無難に同意すれば良いような気もするけど、注目を浴びてしまった後で、回りに合わせるのは変なボロが出てしまいかねない。

 なので、ここは敢えて自分の考えに近いものを発言することにした。

「えっと、もしかしたら、何か事情があるのかもしれないなと思って」

 そう口にした私に、ユミリンが呆れた様子で「リンリンは優しい……というより、甘過ぎ」と言う。

 次いで中本さんが「そうだぞ、サボりにはちゃんと罰があった方が良い」と言い切った。

 そんな二人の後で、委員長が「例えば?」と口にする。

 問い掛けの真意を予測しながら私が視線を向けると、委員長は「例えば、どんな理由があると思う?」と自ら聞きたいことを補足してくれた。

 私はとりあえず思い浮かんだ理由を答えとして言葉にする。

「先生に頼まれ事をしたとか? えっと、数がある荷物を運ぶとか、重い荷物を運ぶとか」

 一応思いつきを言ってみたものの、委員長は納得したと言った様子を見せなかった。

 けど、それでも「確かにサボりと決めつけるのは良くないかもね」とは言ってくれる。

 その後で、委員長は「とりあえず、本人達が来たら問いただす。来なかったら、事実として視聴覚室に来なかったことを綾川先生に報告する……で、いいかしら?」と問うてきたので、私は「うん。それがいいかも」と頷きで応えた。

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