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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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帰宅

「むぅ~~~」

 結局、叩きつける文句も思い付かず、上手く乗せられたことに対して、私は唸り声を上げるしかなかった。

 そんな中、史ちゃんが「凛花様、嫌な人達のことはほったらかして、おうちに行きましょう!」と私の手を握ってくる。

「史ちゃん!」

 回りが敵だらけの中、声を掛けてくれる史ちゃんの存在がもの凄く輝いて見えた私は、思わず握ってくれた手を両手で包み込むようにして握り返していた。

「り、凛花様」

 私の反応が過剰だったせいか、戸惑いを見せる史ちゃんに、私は「じゃあ、行こうか!」と声を掛けて、手を引いて歩き出す。

「あ、姫! お待ちを!」

 最初に声を掛けつつ近づいてきたまどか先輩に、私は「待ちませーーーん」と意地悪を言ってみた。

「凛花様?」

 私のリアクションに、少し驚いたような様子を見せる史ちゃんを見て、更なる悪戯を思い付いた私は、史ちゃんに「ねぇ、史ちゃん」と提案を持ちかける。

 史ちゃんからは「あんまり自信は無いですが」と前置きをされたものの、最後に「いいですよ」と了承をして貰えた。

 なので、私はチラリと皆を振り返って状況を確認してから、史ちゃんに向かって頷く。

 史ちゃんが頷き返してくれるのを待って、私たちは「せーの」で駆け出した。


「ただいまーーー!」

 史ちゃんを連れて玄関を開けた私は、自分の発した声で、いつもより自分のテンションが高いことに気が付いた。

「お、お、お、お、お、おじゃましまっ」

 手を引いて玄関の内側に連れ込んだ史ちゃんが、なんだかもの凄くガチガチになっている。

 皆を置き去りにして走っている間は、もの凄く軽やかに走っていたのにもの凄い落差だ。

 私の声を聞いて玄関まで着てくれたのであろうお母さんが史ちゃんを見て「あら、いらっしゃい」と歓迎の言葉を掛ける。

「えっと、こちらは私のクラスの子で、飯野史子さん。私は史ちゃんって呼ばせて貰ってます」

 お母さんにそう伝えると「初めまして、史ちゃん。凛花と仲良くしてくれてありがとうね」と微笑みかけた。

「い、いえ、いえ! お母様! わ、私のほうこそっ! その、窮地を救って貰ってですね……」

 お母さんの微笑みかけに反射的に反応して口を開いた史ちゃんは、口早に話し出す。

「私は凛花様とお呼びしているんですが……」

「ま、待って、史ちゃん、落ち着いて!」

 全く止まりそうに無かったので、慌てて手を離してから、史ちゃんの肩に手を置き直した。

「り、凛花様?」

 肩に触れたことで我に返ったのか、少しビックリした様子で史ちゃんは私を見る。

「えーと、落ち着いた?」

 私の問い掛けに、史ちゃんは「つ、つい、興奮してしまって!」とわたわたし始めた。


「お母さん、凛華達もう着いてる!?」

 ドアを開けるなり、真剣な顔をしたお姉ちゃんが開口一番そう言い放った。

 そこで、振り返った私と視線が交わる。

 途端にお姉ちゃんはその場でへなへなとしてしゃがみ込んだ。

「お、お姉ちゃん!?」

 私が軽く動揺しながら名前を呼ぶと、すくっと立ち上がったお姉ちゃんが「凛花、足速すぎよ」とジト目で見ながら文句を言ってくる。

 悪戯とは言え、ほぼ何も伝えずに皆を置き去りにしてきたことは、褒められたことではないし、しかも、道路を手つなぎで、二人横になって走ってきたわけで、お昼前に自ら言ったことに矛盾してしまっていた。

 もの凄く罪悪感が湧いてきたところで、玄関ドアが再び開かれる。

「お姉ちゃん、リンリンいた?」

 入ってきたユミリンは私たちを確認すると、すぐに玄関の外に向かって「まどか先輩、発見しました!」と大声を張り上げた。


「えーと、申し訳ありませんでした」

 今で私が頭を下げると、お姉ちゃんが「まあ、私たちも悪かったところもあるから」と言ってくれた。

 ただ、これに甘えるわけには行かないし、悪戯を思い付いた瞬間、自制を失っていたのは事実なので、ちゃんと反省するためにも、自分のダメだったところをあげていく。

「まず、道路で走るのが問題外だし、それを二人で手を繋いでなんて……史ちゃん、巻き込んでゴメンなさい」

 思いつきで自分一人が無茶をするだけならまだしも、冷静になった今なら考えが回るけど、私は史ちゃんを危険に巻き込んでいた。

 これを謝罪しないわけには行かないし、反省をしなくてはいけない。

 けど、史ちゃんは私を責めること無く「凛花様。私は同意していたのです。それは、いうなれば、ど、同罪なので、謝る必要はありません」と言い切った。

 史ちゃんが私を敬ってくれているのは凄くありがたいけど、それはお互いのためになら無いんじゃ無いかと思う。

「それに、凛花様が手を握ってくれたお陰か、いつもより速く走ることが出来ました。走るのは嫌いだったのに、ほんの少しだけ……好きになったかも知れません」

 なんだか恥ずかしそうに言う史ちゃんの結論に、なんだかほっこりとしてしまった。

「そ、それは良かったけど、でも、危ないことをしたので、反省はしないとだよ」

 私がそう言うと、史ちゃんは私の横まで来て正座をするなり頭を下げる。

「凛花様と、私も同罪なので、同じ罰を受けます」

 罰と勝手は無しはしてなかったけどと思いながらも、史ちゃんが頭を下げているのに、私がしないわけにはいかないので「罰を受けます」と、遅れて頭を下げた。

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