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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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出発

 私の情報を聞いたリーちゃんは『なるほどのぉ』と口にした後で『主様のお陰で情報は増えたが、無茶はやめて欲しいのじゃ』と言われてしまった。

 とはいえ、私に出来る事は……と考えたところで『皆まで言わなくともわかるのじゃ』と泊められてしまう。

『わらわは主様の行動が成果を収めたことは否定せぬし、予測の角度を上げるのにも有益だったと思っているのじゃ……ただ、わらわの心情が主様の無茶を受け入れられぬ……わらわのわがままのようなものじゃ……』

 言っても仕方が無いことだというのはわかってると、暗に告げる様な物言いで、罪悪感が爆発的に増した。

 謝ってしまえばそれで良いのかもしれないけど、私なりに考えた上での行動だったし、リーちゃんとしてもそこは否定していない。

 それでも、敢えて言うことで、心理的なブレーキを掛けようとしているんだろうと理解した。

 リーちゃんはその考えを直接肯定も否定もしない代わりに、絶妙なタイミングで『判断は任せるのじゃ』と言う。

 次の機会に、踏みとどまれる余裕があるかはわからないけど、リーちゃんが心配してくれたことだけは思い出したいなとは思った。


「じゃあ、行ってきます」

 お姉ちゃんに続いて、私も「お母さん、行ってくるね」と見送りに来てくれているお母さんに伝えた。

「お母様、姫の事は私に任せてください。お品にかあれば、先ほどのように抱き上げて運びますので」

 まどか先輩は笑顔でそう言ってくれる。

 それ自体はありがたいし、嬉しいのだけど、制服と違って今履いているスカートはかなり短いので、出来れば遠慮したいと思ってしまった。

 膝の裏に腕を通されて持ち上げられると、制服の時と違って、腕にかからないのは間違いない。

 一応、タンスの中にあった体操服のモノより薄手の、重ね履き用のブルマを履いているけど、だからといってスカートの中は見られたくは無かった。

 そんな思いも込めて「まどか先輩に迷惑を掛けないように、気をつけるね!」と強めに断言する。

 対して、まどか先輩は「遠慮しないで、無理は良くないからね。辛かったらちゃんと言うんだよ?」と諭すように言ってきた。

 心から心配してくれてるのがわかる言い方に、突っぱねることも出来ず「そ、そのときは……ちゃんと言います」と言ってしまう。

「よろしい」

 そういったまどか先輩はさりげなく私の頭の上に手を置いて、やわやわとなで始めた。

 あまりの心地よさに、溺れそうになったところで、ユミリンが「ちょっと待ってください!」と割って入ってくる。

「何かね、ユミリン君?」

「次、リンリンをお姫様抱っこするのは、私ですからね!」

 大声で訴えるユミリンの言葉を聞いて、お母さんが声を弾ませて「あらあら」と言うと、素早く口を手で隠した。

「凛花はモテモテねぇ」

 お母さんの言葉を切っ掛けに、全身から恥ずかしさを火だねとした熱があふれ出す。

「ほら、皆が待ってるから、早く行こう!」

 ここでまたまどか先輩とユミリンの議論が巻き起こってしまえば、今以上に恥ずかしさで動けなくなると判断した私は玄関ドアに飛びついてさっさと開けた。

 身体が火照っているせいか、開けたドアの隙間から流れ込んでくる風が涼しくて心地良い。

 そのまま、外へ出たところで、手首が掴まれた。

 私を止めたユミリンは「まって、リンリン!」とストップを掛けた後で「ね、次、リンリンをお姫様抱っこするのは、私だよね?」と言いつつグッと顔を近づけてくる。

「そ、そう……だね」

 勢いに負けて頷くと、ユミリンは「そうだよね! そうだよね!」と嬉しそうな顔で繰り返しながらまどか先輩を振り返った。

 その視線の先で、まどか先輩はフッと笑うと「姫のお母様やお姉様が心配をしないように、全力を尽くせよ」とユミリンに告げる。

 対してユミリンは「任せてください!」と私の手首を津編んでいるのと反対の拳を、ポンと自らの胸に当てて応じた。

 直前まで対抗心みたいなモノを見せていたのに、今は、同僚の、しかも先輩後輩みたいなやりとりになっていることに驚かされる。

 まどか先輩の技量なのか、場の空気なのか、ユミリンの適応力……素直さによるモノか、判断は付かないけど、一つ言えるのは様になっているのは間違いなかった。


 まどか先輩とユミリンの対立が霧散してしまったのを確認したお姉ちゃんは、私を含めた三人に向かって「じゃあ、行きましょうか」と出発を促してきた。

 もしかしたら待たせてしまっているかもしれないので「うん、行こう」と頷いて、道路へと踏み出す。

「じゃあ、姫は任せたぞ」

「了解です、まどか先輩」

「良枝……姉君は私に任せておけ」

「お任せします」

 後ろでは未だユミリンとまどか先輩の寸劇が終わってないようだけど、私は気付かなかった振りをして、まずは千夏ちゃんのマンションを目指して歩き出した。

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