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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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帰宅と予測

「あら、まどかちゃん。ずっとそうしてきてくれたの?」

 結局家まで抱きかかえられてしまった私を見て、お母さんはニコニコで声を弾ませた。

「はい。姫をお連れする名誉を頂戴しました!」

「凛花、名誉ですって」

 まどか先輩の返しを聞いて、にこにこえ言うお母さんに「う、うん」と返す。

「本当は私だって、リンリンを抱っこしたかったんです!」

 突如、割り込んできたユミリンに、まどか先輩は「残念だったね。姫が羽根のように軽かったお陰で、お住まいまでお連れすることが出来てしまったよ!」と言い放った。

 二人のやりとりを見ながら、ニヤニヤと私を見て黒母さんの視線がとても居心地悪い。

「あ、あのまどか先輩!」

「なにかな、姫?」

「そろそろ降ろして貰っても良いですか?」

 私がそう尋ねると、まどか先輩は「えーー」と露骨に嫌そうな顔をした。

 降ろして貰う理由を訴えなきゃいけないのはどうかと思うけど、ともかく「靴も脱がなきゃいけないんですけど!?」と口にして見る。

 ここで、なんとお姉ちゃんが「私が脱がして差し上げますわ、姫様」と悪ノリしてきた。

 お母さんは頬に手を当てて「あらあら、まあまあ」と楽しそうにしているだけで、介入してくれる気配は無い。

「はい、じゃあ、脱がしますわね。姫様」

 そう宣言した直後、お姉ちゃんは手間取ること無く私の靴を脱がせてしまった。


「では、降ろしますよ、姫」

「……お願いします」

 靴を脱がされたときはいつまでも抱っこされたままなのかと思ったけど、意外にも、すぐに降ろして貰えることになった。

 靴を脱がすだけなら降ろしてくれても良いのにと思う。

 ただ、下手に指摘して流れがおかしな方向に行くのも嫌なので、口を噤んで身を任せた。

 私を抱っこしてくれているまどか先輩がゆっくりとしゃがみ、徐々に視線が下がっていく。

 身体が段々と肩六日と思うと、足が床に降ろされた。

「立てますか、姫?」

「だ、大丈夫です。立てます!」

 変な返しをして止められても困るので、私は少し食い気味に大丈夫だと訴える。

 両足に力を入れて、床に立ち上がり、まどか先輩の首に絡めていた腕を解いた。

「流石に、大変だったんじゃ無いですか、まどかせ……」

 先輩と続けようと思ったところで、その当人から『それはないわ』と言いたげながっかりした表情を向けられてしまう。

 流石にこれまでの経緯を踏まえれば、なんとなく求められていることはわかるので、軽く咳払いをしてから「大変だったでしょう、まどか」と呼び捨てにしてみた。

 すると満足そうな表情を浮かべてから、まどか先輩は「いえ全く。先ほどもお伝えさせていただきましたが、姫は羽根のように軽く、ただただお連れできた誉れしか残っていません」と満足そうに微笑む。

 何でそんなに役になりきっているのかというツッコミを飲み込んで、私は「そう。ありがとう」と伝えると、何故かお母さんが拍手をし始めた。

「すごいわ! 物語の世界みたいだわ!」

 あまりにも嬉しそうにいうので、私は何も言えない。

 流されるまま巻き込まれたモノの、最後は乗ってしまったのもあって、今もの凄く恥ずかしくて仕方なかった。


 私達のやりとりを見てテンションの上がったお母さんは、今観た劇を文化祭で演じるのかと質問し、まどか先輩がそれに応える形で、未だ決まったわけじゃ無いという前置きをしてから、帰り道で若草物語が候補に挙がったという話をした。

「そうなのねー、若草物語をやるのねー」

 期待して貰って遣らないとなったらがっかりさせてしまうと思った私は、保険の意味も込めて「決定したわけじゃ無いよ、お母さん」と伝える。

「そうなの?」

 自分に顔を向けて聞き返したお母さんに、お姉ちゃんは「うーん。確かに決定じゃ無いかな」と返した。

 これに、ユミリンが瞬きをしながら「でも、あれでしょ? 文化祭じゃ無くても、新人戦でやるんだから、どっちみちやるのは変わらないんじゃ無い?」と言う。

 対してお姉ちゃんは「新人戦は市内の演劇部だけの公演で、一般の人……父兄を含めて会場に入れないのよ」と説明してくれた。

「あらそうなの。それは残念ねぇ」

 お母さんが本当に残念そうに言うので、どうにかしてあげたいと反射的に思ってしまう。

 そのせいか、私が視線を向けると、まどか先輩は満面の笑顔を浮かべて大きく頷いた。

「お母様、安心してください。新人戦で演じる場合、直接観劇は出来ませんが、ビデオ録画しますので、ダビングして貰いますよ」

 まどか先輩の言葉に、お母さんは「あら」と嬉しそうな顔を見せる。

 そんなお母さんに、まどか先輩は「なので、新人戦だとしても見て貰えますけど……」と更に言葉を重ねた。

 お母さんはそんなまどか先輩が口にした言葉の続きを求めるように「けど?」と口にする。

「私の見立てでは、文化祭で演じることになると思うので直接観劇できると思います」

 まどか先輩の断言に、お母さんは「そうなのね」と口にしてから「でも、無理してはダメよ。部員さんも沢山いるのだし、皆の意見の方を大事にしてあげてね」と言い添えた。

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