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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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犬系

「意外だ……良枝が照れるなんて」

 本当に驚いた様子で言うまどか先輩の肩に、お姉ちゃんののストレートパンチが突き刺さった。

「こら! 照れ隠しに暴力を振るうんじゃありません!」

「う、うるさいわね!」

 照れながら、パンチを止めて平手でまどか戦費あの方をぺちぺち叩き始めたお姉ちゃんがなんだか可愛い。

 よく考えれば、この世界では中学三年生なんだから、こっちの方が素なんじゃ無いかと思った。

 

「私全く知らなかったけど、ウチの演劇部ってスゴかったんだね」

 かなり薄れてしまっているとは言え、京一時代(むかし)の記憶を辿っても、まどか先輩が話してくれたような連携は余り聞いたことがなかった。

 だからこそ、手広く連携をしていること自体が凄いことだと思う。

 けど、それがまどか先輩にはピンとこなかったようで「そうかな?」と首を傾げた。

 私の言いたいことが伝わってなさそうな反応だったので、少し言葉を足してみる。

「えっと、違う部活やクラブと連携したり、顧問じゃ無い先生の協力を得たり……そもそも、演者と裏方と二班もあるし……」

 言葉を私が重ねても、まどか先輩は首を傾げたままだった。

 その表情から推測するに『どこかスゴいところがあるのだろうか?』と思ってそうに感じる。

 多分だけど、まどか先輩にとっては当たり前なので、凄いと思っていないんだと思った。

 この後、何を言っても通じなさそうだなと思って、続きに困ったところで、お姉ちゃんが「小学校は部活が無かったからね」と割って入ってくれる。

 まどか先輩も、お姉ちゃんの言葉で「あーそうか、凛花姫は去年……っていうか少し前まで小学生か」と言って、手荒に私の頭を撫で出した。

 ぐらぐらと左右に頭を揺さぶられながら「千夏ちゃんが結んでくれた髪が乱れるから止めてください」と、まどか先輩に私は不満を訴える。

 すると、千夏ちゃんが私の腕に自らの腕を絡めて、まどか先輩から引き離してくれた。

「そうですよ、折角のお揃いの髪型が乱れます!」

 頬を膨らませて、そう主張する千夏ちゃんに、まどか先輩は「おやおや」と苦笑して肩をすくめる。

 まるで私を護るために威嚇する子犬のような千夏ちゃんの様子に、抱きしめてしまいたくなる衝動が起きたが、私はそれを鋼の意思で、どうにか思い止めた。


「と、ところで、加代ちゃんは、若草物語の台本作りとか、興味はあるの?」

 衝動をに耐えつつ、私はどうにか、加代ちゃんに話を振ることに成功した。

「もちろん! 出来るなら、最初から係わりたいな!」

 加代ちゃんの真っ直ぐな答えに、まどか先輩が「いいね!」と嬉しそうに頷く。

「やる気が成長には一番効果的だからね! 私からも強く推薦しておくよ!」

「ホントですか、まどか先輩!」

「任せて欲しい。役者だけじゃ無くて、裏方の有望株を探すのも、最上級生の勤めだ」

 声を弾ませて、加代ちゃんとまどか先輩が会話しだし、それを見て警戒を緩めたのか、千夏ちゃんも威嚇をやめた。

 どうにか穏便に片付いたことにホッとしながら、まどか先輩に「私も参加したり出来るんですか?」と聞いてみる。

「もちろん、さっきも言ったけど、演者の意見を聞くこともあるし、アイデアは多い方が良いモノができあがるからね」

 まどか先輩はそう言って頷くけど、私は逆に人が多すぎるとまとまらなくなるんじゃ無いかト思ってしまった。

 素直に、それを伝えると、まどか先輩は「まあ、そこはまとめるのが得意なのがいるからね」と意味ありげに笑む。

「それって、春日先輩ですか? 副部長の……」

 私が具体的な名前を挙げて聞いてみると、まどか先輩は「ああ、アレもスゴいけど、もう一人、文章をまとめるのに、長けた奴がいるんだよ」とまたも意味ありげな笑みを浮かべた。

「まあ、来週の部活で紹介してあげようじゃないか……って、若草物語の話をしたら、本人の方が飛んできそうだけど……」

 まどか先輩は言い終えると共に、視線をお姉ちゃんに向ける。

 お姉ちゃんは「確かに、アリスなら自分から来そうだわ」と頷いた。

 私がお姉ちゃんに「アリス……先輩、だよね?」と尋ねる。

 すると、お姉ちゃんから返事が来るよりも先に、すぐ横の千夏ちゃんに「凛花ちゃん」と呼びかけられた。

「ん?」

 私が視線を向けた瞬間、千夏ちゃんは真剣な顔で「アリス先輩は滅茶苦茶可愛いけど、見た目に騙されちゃダメだからね」と訴えてくる。

「え、あ、うん?」

 頭の理解が追いつかず曖昧になってしまった私に、お姉ちゃんの口からとんでもない情報が放たれた。

「かみ癖があるから、余り近づきすぎてはダメよ」

「はい?」

 思わず目が点になってしまったのは、仕方が無いことだと思う。

 どう考えても、今お姉ちゃんが口にしたのは、飼い犬か何かに向かって下される評価だからだ。

「ちっちゃくて、可愛いけど、撫でようとすると、その手を噛み付いてくるんだよ……文字通り口で」

 自分の手を見ながらフラフラさせたまどか先輩の語り口調からして、本当なんだろうと思う。

 今し方子犬の姿を千夏ちゃんに重ねていたこともあって、まあ、そういう子もいるかもしれないとあっさりと受け止められた。

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