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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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書き手

「えっと、お姉ちゃん?」

「なに、凛花?」「なに、凛花ちゃん?」

 私の呼びかけにお姉ちゃんと千夏ちゃんの声が重なった。

 無意識で反応してしまったのであろう千夏ちゃんの顔色が、一瞬で悪くなる。

 双子遊びはやっぱり内緒なんだなと思った私は「ちょっと、千夏ちゃんは私の妹でしょ?」とわざと明るい声で指摘した。

「それは若草物語の時だけで、普段は私の方がお姉ちゃんなの!」

 動揺があるみたいで、口調が砕けた感じになってしまっているものの、それでも、悪化していた顔色は改善されたように見える。

「しょうがないわねー、千夏ちゃんも凛花も、同じ髪型同じ身長で、()()()()()()()()何だから、どっちがお姉ちゃんでも、妹でも良いと思うわ」

 お姉ちゃんの言葉に乗っかった、ユミリンが「そうだね。私も姉さんの言うとおりだと思うよ、妹たち!」と歯を見せて笑った。

 私がそうだったので、多分千夏ちゃんも、お姉ちゃんの『双子』発言にドッキリしたと思うのだけど、全く動揺した素振りを見せず、ユミリンに「くぅ。ユミ吉が姉だなんて、納得いかないわ!」と食ってかかる。

 その様子を見て、加代ちゃんはうんうんと頷きながら「言葉遣いとか、怒るポイントは少し違うけど、お姉ちゃんに対して、怖じけずに思ったままをぶつけるところは、エイミーっぽいと思うよ。千夏ちゃん!」と拍手を贈った。

 そんな加代ちゃんの感想を聞いたまどか先輩は笑いながら「演技プランを立てずとも自然体で役作りが出来ているっていうのも、良い経験だ。当て書きでも無ければ、そうそう無いことだよ」と言う。

 まどか先輩の発言を聞いて、自分の知識になった言葉だったからか、史ちゃんが「当て書き?」と首を傾げた。

 本当は専門知識のありそうなお姉ちゃんやまどか先輩が応えた方が良いとは思ったのだけど、史ちゃんの目が私を指名しているように見えたので「確か……」と口にしつつ、頭の中でリーちゃんに、間違ってないかどうかを確認する。

 リーちゃんからは、カンニングじゃないかとか、不正じゃないかとか、言われたものの、私の思い浮かべたイメージで間違いないとお墨付きを貰えたので、続きを口にして見た。

「役者を決めてから、その人に合わせて脚本を書く、その役者さんを役に当てはめて書くから、当て書きって言うんだと思ったよ」

「そうなんですね! 流石、凛花様。知識も豊富なのですね!!」

 もの凄くくすぐったかったけど、正直、リーちゃんのチクチクが吹き飛んでしまうほど気持ちが良い。

 ただ、これで調子に乗ったら、後で後悔しそうなので「たまたま知ってただけだし、正しいか、わからないよ?」と視線をまどか先輩に向けた。

 私と、多分史ちゃんの視線が自分に向いたのを確認してから、まどか先輩は「少なくとも私は、姫の言ってた通りの意味で使ったよ」と笑む。

 その直後、乱入してきた千夏ちゃんが「さすが、凛花ちゃんね。良い子、良い子」と私の頭をなで始めた。

 急なお姉さんムーブなんだと思うけど、目線が上の人からはともかく、ほぼ同じ高さの相手からはなんだか恥ずかしい。

 とはいえ、嫌って訳でもないので、やめて欲しいというのも躊躇われて、私は「え、えっと……」と言葉に構ってしまった。

 そんな私に、タイミング良く……というわりには困惑しているのを見かねてな気がするけど、お姉ちゃんが「そういえば、凛花は何か聞きたいことがあったんじゃ無いの?」と話を振ってくれる。

 私も話しかけていたことを忘れかけていたので、そうだったと思いながら、千夏ちゃんに頭を撫でられたままで質問してみた。

「若草物語を演じるとして、脚本って……どうするの?」

 そう尋ねると、お姉ちゃんはチラリとまどか先輩をみる。

 まどか先輩は軽く頷き、それをみたお姉ちゃんが「基本的には、裏方班の子達が担当してくれるわ」と教えてくれた。

 多分、直前のお姉ちゃんとまどか先輩のやりとりは、どちらが話すかの確認だったんだと思う。

「衣装や小道具、大道具、背景、証明、音楽、効果音なんかの演出面とも関連してくるからね。皆で相談しながら書いてくれるんだよ」

 お姉ちゃんの後を引き継いで、まどか先輩が説明を続けてくれた。

 私たちが頷くと、それを合図にまどか先輩も先を口にする。

「もちろん、裏方班だけで決めるんじゃ無くて、私たち演者の意見を聞いてくれたり、顧問や国語の先生に見て貰ったり、読書クラブに、文芸部なんかの協力を得たりと、演劇部の枠に囚われない連携をしているね、あっちは」

 まどか先輩の説明が進むにつれて、ほんのりお姉ちゃんの頬が赤くなっているのは、裏方班で活躍しているから何だろうなと思えて、頬が緩んでしまった。

「な、なに、凛花?」

 珍しく声が裏返ったお姉ちゃんの問い掛けに、私は笑みを浮かべたままで「お姉ちゃんは、裏方班としても活躍してるんだろうなって思ったら、嬉しくなって」と表情の理由を伝える。

 お姉ちゃんは「もう!」とだけ口にして、視線を逸らしてしまった。

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