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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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放課後の予定

 お説教が一段落したところで、保健室から全員で廊下へ出た。

 用が無くなったからと言うのが大きいけど、お説教の後は何かと居づらいというのもある。

 その切っ掛けとなってしまった千夏ちゃんが、少し落ち込んで見えたので、何か声を掛けた方がいいかなと考えた。

 朝も一緒にいたし、私が保健室に向かったと考えてきてくれたのは間違いないので、その理由に思い至り、早速千夏ちゃんに声を掛ける。

「心配してきてくれたんだね、ありがとう、千夏ちゃん」

 私がそう伝えると、千夏ちゃんは「あー、でも、水上先生に怒られちゃったけどね」と言って舌を出した。

「チー坊は少し考えて行動しな?」

 絶対必要なかったユミリンの挑発するような言葉に、眉尻をピクリと動かした千夏ちゃんは「いつもがさつなユミ吉にだけは言われたくないわ」と切り返す。

 そんな千夏ちゃんの態度に、ユミリンは「私のどこががさつだってぇ?」と噛み付いていった。

 二人の空気に、きっと止めるべきかどうかで迷っている加代ちゃんは表情を険しくしていて、一方、我関せずを貫こうとしているのであろう史ちゃんは私の横でニコニコしている。

 これは私が止める場面だと思いたったところで、ガラッと保健室のドアを開けて登場した水上先生が「保健室の前で騒がしくしないの!」と吠えた。


 保健室の前で話していると、同じ事を繰り返して、また水上先生に迷惑を掛けそうだったので、私たちの教室のある南棟に繋がる一回の渡り廊下に移動してから、改めて話をすることにした。

 渡り廊下はテニスコートに挟まれていて、ソフトテニス部の子達がお昼ご飯を食べたり、着替えたりと午後の部活の準備をしている。

 邪魔をしないようにしないとと、心掛けたところで千夏ちゃんから「それで……リンちゃんは今日はどうするの?」と尋ねられた。

「ユミリンも同じ事聞かれたけど……」

 そう言いながら視線を向けると、ユミリンは「リンリン、入院とかしてたから、土曜日のこと知らないんじゃ無い?」と言う。

「土曜日の……こと?」

 私が聞き返すと、千夏ちゃんが「演劇部の土曜日の活動の事だよ。一応、自主練だから、参加自由なんだけど、リンちゃんはどうするかなと思ってたんだけど……」と言ったところで、唸り出した。

 その後で、千夏ちゃんは「その反応だと……存在を知らなそうだね」と苦笑する。

 ズバリ言い当てられてしまったけど、お姉ちゃんから全く話を聞いてないのもおかしいんじゃないかと思って「お姉ちゃんって、土曜日帰りが遅かったりとかしたっけ?」と千夏ちゃんから視線を逸らした。

 そんな私の反応に大きく溜め息を吐き出したユミリンが「ちょっと、リンリン、ボケすぎじゃ無い?」と呆れたと言わんばかりの表情を見せる。

「ほら、お姉ちゃんが土曜日になかなか帰ってこなくて、二人で中学まで迎えに来たことあったでしょ?」

 全く身に覚えも記憶にも無い出来事だけど、それを言うわけにも行かないので「そうだった……ような?」と私は曖昧に返した。

 そんな私の返しに、ユミリンが「大丈夫? 保健室行く?」と聞いてくる。

 私の体調に係わる内容だっただけに、史ちゃん、加代ちゃん、千夏ちゃんと三人が心配そうな顔をしていたので、もの凄く焦ってしまった。

「べ、別に、体に異常は無いから!」

 どうにか慌ててそう主張すると、ユミリンは「ホントボケボケしてるなぁ」と笑われてしまう。

 これを否定すると話がおかしくなるのもあって、何も言い返せず「うぐっ」と声を漏らすことしか出来なかった。

 抜けているキャラが共通認識になってしまうのは、屈辱的ではあったものの、私が言い返さなかったからか、千夏ちゃん、史ちゃん、加代ちゃんの表情が一気に和らぐ。

 その後で向けられた生暖かい目線がもの凄く居たたまれなかった。


「体調は問題ないけど、お昼ご飯を持ってきてないから、今日は不参かかなぁ」

 私はいろいろ考えた結果、そう結論を出した。

 すると、千夏ちゃんは「じゃあ、私も今日はお休みにしよう」と言う。

「あ、私も帰ります。明日お出かけですしね!」

 史ちゃんが手を挙げながら、そう言って笑みを浮かべた。

 明日は日曜日なので、千夏ちゃんの案内を兼ねて、中心地区の案内をする。

 少し前から史ちゃんは楽しみにしていたのもあって、全身から楽しみにしているオーラが感じられた。

 そんな史ちゃんをチラリと見てから、加代ちゃんが心配そうに「でも、リンちゃんは……大丈夫そう?」と上目遣いで尋ねてくる。

 直後、ハッとした表情を見せた史ちゃんと千夏ちゃんの顔に、再び不安の色が滲んでしまった。

 私はすぐに「大丈夫! さっきから何度も言っているけど体調は万全だし」と胸をポンと叩く。

 が、余り不安を払拭できなかったようで、私を見る皆の顔に浮かんだ笑顔はどこかぎこちなかった。

「もし、体調が悪くなったら、ちゃんと病院行くから安心して! 無理はしないから!」

 必死に訴えたからか、皆は苦笑気味に頷いてくれる。

 そんな皆の反応からして言葉で納得して貰うのは無理だと考えた私は、結果で示すしか無いなと考えて、体力を万全にしようと胸の内で誓いを立てた。

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