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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第五章 想像? 実像?
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放課後と告白

 何事もなく、放課後を迎えた私は、主治医である川本先生からの手紙を手に保健室に向かうことにした。

 私一人で行くつもりだったのだけど、ユミリン、史ちゃん、そして加代ちゃんが付き添いを申し出てくれたので、一緒に向かっている。

 心配してくれているのはわかるし、断わる方が悪い気もしたし、なによりも後々に禍根を残しそうだったので、受け入れることにした。

 そんなわけで、四人で保健室に向かったのだけど、何故だか史ちゃんと加代ちゃんが余所余所しい。

 正確には、聞きたいことがあるのに、切り出せないと言った感じに見えた。

 なので、ここは年長者として、私から話を振ってみることにする。

「史ちゃん、加代ちゃん、何か聞きたいことでもある?」

 私がそう話を振ると、少し前を歩いていた二人が、一瞬で体ごと私の方へ振り返った。

 どうやら二人とも、話し出す切っ掛けを探っていたらしい。

「リンちゃん、その、私たちと別れた後に倒れたって聞いたんだけど……」

「もしかしてですけど、凛花様、私たちの前で無理をしていたとかですか?」

 加代ちゃん、史ちゃんに向かって、私は「無理はしてないよ」と左右に首を振った。

 ただ、当然というか、そう言われただけで、ああそうか、とはならず、二人とも不安そうな目をこちらに向けたままで黙っている。

 ここはもう明かせるところは明かしてしまおうと私は決断した。

 世界に処理落ちが始まってしまっているので、それほど気を遣う必要はないかも知れないけど、一応、周囲の耳を気にして、ユミリンを含めた三人を廊下の隅に誘う。

 その上で声を潜めて「一応、内緒にしてほしいんだけど、いいかな?」と問い掛けた。

 すると、間髪置かずに、史ちゃんが「私は凛花様の秘密を言いふらしたりはしません!」と胸を張る。

 加代ちゃんも「私も言いふらしたりしないよ」と頷いてくれた。

 そんな中、ユミリンは「内容によるかな!」と言うので、私は後ろを指さして「じゃあ、ユミリンはあっち行ってて」と告げる。

 そんな私の返しに焦ったらしく、ユミリンは「まって、まった、冗談、冗談だから、追い出さないで!!」と慌てて縋り付いてきた。

「真面目な話をするときは、おふざけしないように!」

 私の指示に対して、ユミリンは珍しく低姿勢で「こ、心得ます」と返してくる。

 ちょっと、気持ちよかったけど、調子に乗ると停滞しっぺ返しに合うかもしれないので、それ以上追い打ちは掛けなかった。

 その代わり、ユミリンだけでは無く、史ちゃんと加代ちゃんを含めた三人に手招きをして近づいて貰う。

 三人の顔が近づいたところで「実は……」と話を切り出した。


 私の話を聞いた加代ちゃんは「幽体離脱!?」と目を丸くした。

 一方、史ちゃんは「凛花様は天使だから、すぐに天使に戻っちゃうということでしょうか!?」と、謎の解釈を見せる。

 加代ちゃんに反応するより先に、おかしな思考に突入した史ちゃんを引き戻すために「いや、史ちゃん、私天使じゃ無いから! そんなこと言ってないよね!?」と肩を掴んで揺さぶった。

「え~~~、言ってはいませんが、だいたい合ってると思うんですけど~~~」

 揺さぶられていても、謎の主張を続ける史ちゃんに「合ってないよ! 私、普通の人間だから」と訴えかける。

 ここで、ユミリンが「あはは」と笑った後で「普通の人間は幽体離脱できなく無い?」と余計なことを言い出した。

 反射的にユミリンを睨んだのだけど、今度は解放された史ちゃんが「まあ、天使は普通の人間では無いですよね」と言う。

 完全に二人に翻弄される形になってしまった私は、最後の頼みである加代ちゃんに視線を向けた。

 すると、すぐに私の気持ちを察してくれたのであろう加代ちゃんは「こら、二人とも、リンちゃんが困っているよ!」と言ってくれる。

 加代ちゃんの言葉はもの凄く効果的だった。

「困らせるつもりなんて無いです、凛花様!」

 真剣な顔で訴えてくる史ちゃんに「わ、かってるよ」と少し突っかかりながらも頷く。

 すると、ユミリンも「困らせるつもりなんて無いよ、リンリン!」と、わざわざ史ちゃんの口調を真似て言ってきた。

「うん、それはウソだね」

 ジト目と共に放った私の言葉は予想外だったらしく、ユミリンは「ちょっ!」と吃驚した顔を見せる。

 そんなユミリンに「日頃の行いだね、仕方ないね」と加代ちゃんがとどめを刺しにいった。


 唇を尖らせて拗ねてしまったユミリンに、私は「そのつもりが無くても、受け取る側によっては、違って見える事もあるって事だよ」と声を掛けた。

「ただでさえ、ユミリンは誤解されやすいからね」

 ユミリンと千夏ちゃんのやりとりを思い出しながら、私はそう付け足す。

 対して、ユミリンは「ホントに、困らせるつもりは無かったし」と唇を尖らせたまま呟いた。

 ユミリンのいじけた姿に、吹き出しそうになるのを堪えて、私は「わかった。私が勘違いしてた」と告げる。

 その言葉を耳にしたユミリンが窺うように私を見たので「でも、ユミリンも誤解されるようなことを言わないでね」と言い加えた。

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