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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第四章 解説? 考察?
128/445

衝撃の

「だから、安心してちょうだい」

 堂々と言い切ったお母さんに、正直、私は驚いていた。

 どう考えても、絶対ボロを出す自信があるので、私にはどうやっても選べない。

 そんな事を考えてるうちに、まず、お姉ちゃんがお母さんに問い掛けた。

「お母さんが凛花に作ってあげたってこと?」

 お姉ちゃんの問いに対して、お母さんは「ちょっと違うわね」と返す。

「凛華は、今日、無事帰って来られたけど、もしかしたらもう少し検査入院をするかもしれないなと思って、寂しくないように持っていったの。凛花のために作ったものじゃないのよ」

 スラスラと答えるお母さんの堂々とした姿に、私は感動を覚えていた。

 役割を貰っても、これまで堂々と演じることが出来ていなかった自覚がある私としては、理想の姿に他ならない。

 そんなお母さんの発言や態度を見逃さないようにしようと、意識したところで、お姉ちゃんが更なる問いを口にした。

「お母さんって、ぬいぐるみつくったことなんてあったっけ?」

 これまでの事を元に、お母さんの発言に違和感を覚えたのであろうお姉ちゃんは、的確に底をついてきたらしい。

 間違いなく、私はこんな問い掛けをされたら、動揺する自信があるのだけど、お母さんは余裕の表情で「初挑戦だもの」と笑って見せた。

 その後で「うまく出来たら、凛花や良枝の好きなぬいぐるみを作ろうかと思っていたの……その試作品がその子ってわけなの」と言い加える。

 発言に突っかかりもなく、堂々とした様子で言うので、事実を知っている私までもが、思わずそうなんだと思ってしまった。

「試作品だからドキドキしてたんだけど、凛花は思ったより喜んでくれて、名前まで付けてくれたのよね、凛花?」

 急に声を掛けられて、私は「え? あ、うん」とどうにか頷いて同意する。

 すると、千夏ちゃんが「凛花ちゃん、名前付けたんだ!」と期待で目をキラキラさせながら私を見てきた。

「り、リーちゃんって……」

 私がどうにかリーちゃんの名前を出すと、千夏ちゃんは「あら、貴女、リーちゃんって言うのね!」とヴァイアのリーちゃんを持ち上げながら話しかける。

 私が狐の姿で、千夏ちゃんに話しかけられたら思わず返事してしまいそうだけど、リーちゃんのヴァイアは反応を示さなかった。

 と、考えたところで『主様、わらわは意識を切り離しておるゆえ』と冷静に突っ込まれる。

 そう言えばそうだったと、状況に飲まれて、記憶まで飛ばしてしまっていたことが少し恥ずかしかった。


「じゃあ、これ、カメラじゃないんですか?」

 何故かユミリンは、その事から意識を切り離せないらしく、改めてお母さんにリーちゃんの瞳を指さしながら問うた。

 お母さんはニコニコしたまま「もちろん」と頷く。

 その後でお母さんは「今はこんなに小さなカメラがあるの?」と逆に、ユミリンに聞き返した。

 ユミリンはお母さんに対して「ぬいぐるみに、カメラとかマイクとかを仕込んだりする事件があるんです」と答える。

 真剣な顔でそう訴えたユミリンに、お姉ちゃんが「この子は大丈夫よ。由美ちゃん。だって、お母さんが作ったんだから、そんなの仕込める人はいないわよ」と優しい口調で告げた。

「そうね。昨日まで私が作っていて、今日、凛花に渡したところだから、私と凛花以外に触った人はいないわ」

 お母さんもユミリンを安心させるように優しい口調でそう伝える。

 そんな二人のお陰で、ユミリンは真剣な表情を崩して「そうですよね」と、ホッとした表情を見せた。


『主様』

 ホッとした気持でお母さん達の様子を見ていた私に、リーちゃんが頭の中で話しかけてきた。

 声に出さず、頭の中で『なに?』と返す。

『根本由美子の知識は、この時代にそぐわぬのじゃ』

 思わず『えっ』と言いそうになって、慌てて両手で口を押さえて飲み込んだ。

 だが、思考を読めているリーちゃんは私が驚いたのも感じ取っているので、冷静に私が反応を示したと認識して話を続ける。

『盗聴器の類いをぬいぐるみに仕込まれた事件は実際に起こっておるが、この昭和の時代では噂にもなっておらぬ』

 リーちゃんの指摘に、私の頭の中に『じゃあ、種は……』と一つの推測が浮かんだ。

『いや、未だ断定は出来ぬ。技術的にはこの時代のモノでも出来なくはないし、スパイ映画では実際に話の中に登場しておる……根本由美子の想像力がずば抜けていて、そこから見出した可能性もないわけでは無いからの……』

『じゃあ……』

『ここは候補として、なるべく目を離さない……が、最善じゃろうな』

『そう……だね』

 可能性はあるけど、確証はない。

 この世界で親友として声を掛けてくれたユミリンを疑うのは、心苦しかった。

 何度も助けられた場面もあるので、疑いたくないのが本心ではある。

 でも、確かにリーちゃんの言うとおり、カメラへの執着もそうだけど、この時代の人が、あの小さなヴァイアの瞳をカメラだと考えられるかというと、正直難しいんじゃないかと思えた。

『まあ、主様。根本由美子も主様の様に外から招かれ、一部の知識を改竄されておる可能性もあるのじゃ』:

 リーちゃんが囁いてくれたそれは、ある意味で私をおもんばかってのフォローだと思う。

 でも、この状況の中では『ユミリンが種(そう)』じゃないかも知れない可能性は、束の間でも私をほっとさせてくれた。



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