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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第四章 解説? 考察?
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疑惑

 リーちゃんは精神を切り離してくれているので、お姉ちゃんたちの手にあるのは、一見するとただのぬいぐるみだ。

 ただ、実体は私が具現化したヴァイアなので、この世界の時代では完全なオーバーテクノロジーに当たる。

 というか、元の世界でも、花ちゃんや志緒ちゃんに散々ありえないと言われていたので、オーパーツの領域かもしれなかった。

 気付かれませんようにと思いながら、三人の間を行き来するリーちゃんのヴァイアを見つめていると、お姉ちゃんが『目』に何かを感じたらしく「ん?」と口にして動きを止める。

「お、お姉ちゃん、どうしたの?」

 明らかに動揺が声に出てしまっているが、聞かないというわけにはいかないので、声を掛けてみた。

「この子の目、何かすごく不思議な構造になってて、何だろうって思ったの」

 ユミリンがお姉ちゃんの言葉に食いつく。

「え、良枝お姉ちゃん、見せて見せて!」

 二人がかりで調べられる事態に、嫌な汗が背中を伝いだした。

 チラリと見れば、千夏ちゃんも興味を引かれている。

 そんな中、リーちゃんが『大丈夫じゃ、この時代のカメラは未だ大型ゆえ、ヴァイアの目に仕込めるほど小型になっておるとは夢にも思わないはずじゃ』と囁いてくれた。

 リーちゃんのお陰で、確かに知らなければ、思いつきもしないと、安堵したところで、ユミリンが「これ、カメラ?」と言い出す。

「へ?」

 直前に、リーちゃんから大丈夫と言われたばかりだったせいで、気付けば私の喉からは間抜けな声が飛び出していた。

 ドキドキと心臓が素早く鼓動して、私はパクパクと口を開閉するだけで何も言えない。

 そんな私に代わって、お姉ちゃんが「カメラ? 由美ちゃん、スパイ映画の見過ぎじゃないの」と苦笑した。

 お姉ちゃんの発言に、パッと右手を挙げた千夏ちゃんが「あー、私もスパイ映画で見たことあります。小さいカメラ。万年筆の先についてたりしますよね!」と言って反応する。

 そこからは、スパイ者の映画やドラマの話に発展していった。

 カメラと言い出したユミリンも、思ったままを口にしただけだったのか、二人の好きな映画やドラマの話に参入して盛り上がっている。

 どうやら、リーちゃんの身体への意識は、だいぶ遠のいたらしく、私はホッと胸を撫で下ろした。


 映画やドラマの話で三人はだいぶ盛り上がっていた。

 ユミリンはストーリー展開や映像の派手さに興味が向いているらしい。

 一方、千夏ちゃんはやはりというべきか、演技に興味を持っているようだ。

 意外だったのは、子役に関してはユミリンの方が詳しくて、俳優さん、女優さんに関しては千夏ちゃんが詳しい。

 お姉ちゃんは二人の話どちらにも合わせて話していて、その知識の広さに、私は素直に驚いていた。

 ちなみに、私は自分の知識のままに話せば、未だ生まれていない俳優さんや制作もされていない映画など、地雷を踏み抜きそうなので、笑顔を絶やさず時折頷きながら三人の会話を聞いている。

 が、私が話していないことに、ユミリンが気付いてしまった。

 いや……正確にはお姉ちゃんと千夏ちゃんも気付いていたと思うけど、ユミリンは気付いた上で私に話を振ってきたのである。

 ここで、私はボロを出さないために、元々、京一時代に、専攻していた民俗学の知識を駆使して、おとぎ話を中心に話してみた。

 ありがたいことに、この時代には昔話をアニメ化した番組や人形劇化してそれを放送する教育番組があって、奇跡的に辻褄が合ったのである。

 ただ、アニメや教育番組は子供向け番組であり、ドラマや映画に軸足を変え始める年齢のお姉ちゃん達からすると、未だ私は子供生間という風に見られてしまった。

 変に違和感を持たれたり、私が失言をすることに比べれば、多少、思うところはあるものの、子供扱いの眼差しを受け入れる。

 まだまだ経過観測中なのだからと、私は自分に言い聞かせて、プライドの暴走を無理矢理抑え込んだ。


「それで、リンリンのぬいぐるみの目がカメラに見える件だけど」

 急にユミリンが終わったはずの話を掘り返してきた。

 一度そこから脱線して広がった話が終わった後なので、お姉ちゃんも、千夏ちゃんも、リーちゃんのジッと視線を向けるだけで、何も言わない。

 それどころか「これって、リンリンとか、良枝お姉ちゃんのプライベートが盗み撮りされてない?」という言葉に、二人とも表情を険しくしてしまった。

「そんな事、スパイ映画じゃないんだし……」

 先ほどと同じ流れだが、不安を刺激されてしまったのか、お姉ちゃんの言葉の歯切れが悪い。

 千夏ちゃんも心なしか表情に陰りが感じられた。

 ここは私がどうにかしなければと思ったのだけど、上手く誘導するアイデアが出てこない。

 リーちゃんに助けを求めようと思ったところで、お母さんが「あら、その心配は無いわよ」と言って会話に入ってきた。

 自然と発言主であるお母さんに、皆の視線が向かう。

 それに応えるようにお母さんは「だって、その子を作ったのは、私だから」と言い切った。

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