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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第四章 解説? 考察?
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可能性

 お母さんの発言に、リーちゃんは『ふむぅ……』と口にして、黙り込んでしまった。

 残される形になった私はお母さんに「流石に、私が主人公とか、全然イメージが湧かないよね」と苦笑交じりに言ってみる。

「凛花って、自己評価が低いのね」

 溜め息を吐き出すお母さんに、私は「そんなこと無いと思うけど……」と返すと、更に溜め息を吐き出されてしまった。

「親の……お婆ちゃんの欲目もあるけども、それを覗いても、かなり整ってるわよ。凛花の容姿」

「うぇっ!?」

「髪は艶やかで、目は大きいし、肌は色白で、唇はぷくっと膨らみがあるし……凛華からすると、身長にコンプレックスがあるみたいだけど、皆が思わず助けたり、護りたくなる雰囲気があるし、どう考えても、皆が憧れる要素の塊よ」

 呆れた様子で、次々重ねられる高評価のせいで、かつて、月子お母さんに言われた言葉を思い出す。

『君の容姿は君の中にある理想の少女像が投影されているのだろうね。元々君は自己評価が低い方だったし、客観的に自分の容姿を確認したり吟味したりする機会は少なかったから、自覚がない……違うな、心理的ブレーキで認めたくはないみたいだが、君は一般的尺度で言えば、相当の『美少女』だよ。それこそ、芸能界を目指していても誰も疑問を抱かない……どころか、当然だと思うレベルだね』

 頭の中でリフレインする月子お母さんの言葉と、目の前のお母さんの言葉に、私は汗が噴き出そうな程熱くなった身体で、身動きも取れず肌を真っ赤にすることしか出来なくなってしまった。


「凛花が可愛すぎて、監督の『たね』さんは、主人公に抜擢したのかもね」

 ようやく熱が冷めてきたのに、お母さんがまたそんな事を言って私の羞恥心を刺激してきた。

 どうにか「も、もう、そこまで! これ以上は恥ずかしさでおかしくなっちゃうから、止めて、お母さん!!」と強めに訴える。

「そうね。やめましょう」

 思いの外あっさりとそう返されて、私は肩透かしを食らったように、呆然と瞬きすることになった。

 そんな私に、お母さんは「凛花を褒めて、恥ずかしがらせるのは楽しいけど、嫌われたくはないからね」と言う。

 更に「でも、そんなに過剰反応ばかりされちゃうと、お友達に揶揄われてしまうわね」と言い加えた。

 もの凄く身に覚えがあるので、私は「うぐ」と呻くことしか出来ない。

「まあ、諦めて受け入れるか、むしろ私は言われて当然と開き直るか、どちらにしても、慣れて置いた方が良いわ」

「う……はい」

 羞恥心に飲まれると、思考も身体も硬直してしまう傾向にあるので、月子お母さんにも言われていることだった。

 ただ、頭ではわかっていても、対策も心構えもするのが大変なのである。

 乗り越えるべき山の高さに思わず溜め息を漏らしたところで、長く考え込んでいたリーちゃんが口を開いた。


『いろいろ可能性を考えてみたのじゃが……』

 話し出したリーちゃんに、聞いていることを伝えるために、私は「うん」と言って頷いた。

 お母さんも私に続いて頷く。

 リーちゃんも軽く頷いた後で、続きを話し出した。

『過去の世界を再現した以上、まず、過去の世界である必要があったと思うのじゃ……つまり、これは『種』……この世界の創造主の意思によるものだと思うのじゃ』

 私もお母さんも同意を示すために、頷きで応える。

『主様に何らかの役目が与えられているのも、ほぼ間違いないじゃろう』

 これも異論は無いので頷いた。

『では、主様の役割は何か……となると、これは無数の可能性が考えられるのじゃ』

 リーちゃんはそこで一端間を開けてから『例えば、サッちゃんが言っていたように、何らかの外敵と戦わせるとか、この世界で起こる事件を解決させるとかの』と言う。

 自分が上げた可能性を並べられたお母さんは、軽く頷いてから「主人公の凛花に、何をさせたいかは監督さん次第ってワケね?」と返した。

 話の流れとしては、リーちゃんの想定通りだったんだろう。

『うむ』と、大きく頷いた上でリーちゃんは『サッちゃんの言う監督、この世界の想像をした『種』は、少なくとも過去を知る者であり、同時にその時代に何らかの執着を抱いている者の影響を受けているのは確実じゃ』と語った。

 ここで、再び間を挟んだリーちゃんは『つまり、この世界の『種』は間違いなく『人間』の影響を受けているわけじゃ』と言う。

『意識がどこまでその人間の影響を受けているのかはわからぬが……もしも人格までもコピーしておいるのならば、種の中には、自分が人間という意識がある……故に、これまでのように怪獣や怪物のような特異な容姿はしておらぬし、巨躯でもないわけじゃ』

「じゃ、じゃあ、種は人間の中に紛れている?」

 私の推測に、リーちゃんは頷き『それも、主人公である主様の近くにいるはずじゃ』と断言した。

 それを聞いた私は思わず誰かの反応を見たくて、お母さんに視線を向ける。

 するとお母さんは「あ、お母さんじゃないわよ……たぶん」と目をパチクリさせた。

 私はそんなつもりが無かったのもあって、その反応につい噴き出してしまう。

 だが、リーちゃんは真面目な口調で『サッちゃんが、当たりの可能性はゼロではないのじゃ』と発言し、一瞬で空気が張り詰めた。

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