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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第四章 解説? 考察?
111/446

急転

『どうして?』

 助けが得られるかもと考えていたのもあって、リンリン様の制止は理由がわからず、素直に受け入れる気にはならなかった。

 そんな私の考えを読み取ったのであろうリンリン様は、その理由を示してくれる。

『主様は忘れているようじゃが、機関には『人工の神を造ろうとする一派』がおるじゃろう?』

「あっ」

 リンリン様の指摘で、思わず声が出てしまった私に、お母さんが「どうしたの、凛花?」と声を掛けてきた。

 とりあえず、リンリン様との話は棚上げにして貰って、お母さんに対応することを頭の中で思い浮かべて伝える。

『うむ』

 リンリン様の同意が得られたので、私は「頭の中で、声が聞こえるときがあるの!」と思い切って切り出してみた。

『主様!?』

 急に切り出したからか、リンリン様が驚きの声を上げる。

 思わず返事をしそうになるのを堪えて、私はお母さんの様子を覗った。

 お母さんは「それって、どんな声なの?」と真剣な顔で聞いてきたので、私は軽く息を吸い込んでから、()()()()()を頭に浮かべる。

「声の感じは、優しい感じのする落ち着いたお姉さんの声……かな」

「聞き覚えとかあるの?」

 お母さんからの聞き返しに、私は「懐かしい感じはするけど、はっきりと『誰』とは言えないかな」と、初めて具現化した後のことを思い出しつつ答えた。

「……聞き覚えのない声なのね」

 そう呟くとお母さんは何かを考えるように腕を組む。

 そんなお母さんを見ながら、月子お母さんに言われたことを思い出した。

「私の声が一番似てるかも……」

「ん? 凛華の声?」

 お母さんが私を見たので、頷いてから「えっと、録音した声……ほら、自分の思ってる声と違うでしょ?」と言ってみる。

「なるほど、そういう事ね。聞き覚えが無いけど、似てるって言うから、なぞなぞかと思っちゃったわ」

 そう言って笑みを見せたお母さんは、少し間を開けてから「じゃあ、良枝や私に似て聞こえたりはしないの?」と聞いてきた。

 私は素直に「うーん……似ていると思ったことはないかも」と返す。

 正確には考えたこともなかっただけだけど、似ているとは思ったことが無かったのも事実だ。

「それで、その声はどんなことを言ってくるのかしら?」

「え? えーと……」

 リンリン様の話の内容と言えば、主にツッコミだけど、それをそのまま言うのは、なんとなく駄目な気がする。

 少し考えてから「あの……アドバイスかな?」と私なりにオブラートに包んでみた。

「アドバイス?」

「えっと、能力……幽体離脱の仕方を教えてくれたりとか……」

「ああ、そうなのね。なるほどねぇ」

 しきりと頷いたお母さんは「じゃあ、その声の主が、凛花に指導してくれてるというワケね」と聞いてくる。

「そうなるかな」

 私が頷くと、お母さんは真剣な顔で「それって、凛花は騙されていないわよね?」と踏み込んできた。

 その質問は想定してなかったからか、私は気付けば「私騙されてる?」と口に出してしまう。

『わらわがそんなことするわけが無いのじゃ! 創造主を騙す造成物などあるわけないのじゃ!』

 もの凄い勢いで頭の中に響き渡るリンリン様の声に、思わず耳を塞いでしまった。

 物理的な声ではないので、それで声を遮断できるわけはないのだけど、お母さんには何が起こったのか想像がついたらしい。

「あら、もしかして、頭の中の声の人に怒られてしまったの?」

 そう尋ねられた私は苦笑しつつ頷いた。

「そんなことしないって、怒られちゃった」

 私がそう言うと、お母さんは「娘が失礼なことを言って申し訳ありません」と頭を下げる。

 まさか、お母さんがそんな事をするとは思っていなかったので、呆然と瞬きを繰り返すことになった。

 そんな私を見て、お母さんは「私にはどういう存在か、はっきりとは思い描けないけど、凛花を指導してくれているなら、先生よね? 失礼な態度は良くないわ」と真面目な顔で言ってくる。

 なるほどと、お母さんの考え方に納得したところで、頭の中でリンリン様が『主様! ヴァイアの身体を具現化して欲しいのじゃ!』と騒ぎ出した。

「え!?」

 まさかそんな事を言われるとは思わなかったので、つい声が出てしまう。

 当然その声が聞こえたお母さんは「どうしたの。凛花?」と理由を問うてきた。

 声に出してしまった以上、ごまかしはきかないので、素直に「頭の中の声の人が、その、具現……姿を見せたいって言ってて」と伝える。

 すると、お母さんは今日一番のテンションで「そうなの!? お母さんも会ってみたいわ!」と声を弾ませた。

 もはや二人のテンションは最高潮に近く、私に止める事は出来ないと判断して、先送るための言葉を放つ。

「二人が話をしたいのはわかったけど、ここ、病院だから、うちに帰ってからにしましょう!」

 私がお母さんの目を見ながらそう言うと、まず頭の中でリンリン様は『それもそうじゃな』と納得してくれた。

 次いでお母さんも「それもそうね、そうしましょう」と声を弾ませたままで同意する。

 私はどうにか二人を説得できたことに、大きな溜め息と共に微かな安堵を得た。

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