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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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午後へ

「あら、起きたの?」

 予想していなかった声に、私は一気に意識が覚醒した。

 慌てて目を開けて身体を起こすと、そこには未だ病院には来ていないはずのお母さんの姿がある。

「え? なんで?」

 思わずそう尋ねた私に、お母さんは首を傾げていたが、何かに気付いたように、ポンと鼓舞して掌をたたき合わせた。

「凛花、気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったんだけど、もうすぐお昼の時間なのよ」

「え?」

 驚く私に、お母さんは「やっぱり、朝なのに何故私がいるんだろうと思ってたんでしょ?」と揶揄うような口ぶりで指摘されてしまう。

「うっ……はい」

 私がそう反応するとお母さんは軽く笑ってから「それで、体調はどうかしら?」と聞いてきた。

 軽く身体を動かしてみてから「特に変なところはないよ」と返す。

 おまけで「しっかり寝たしね」と言い足してみた。

 お母さんは「あら、まあ」と言ってクスクスと笑う。

 その後で「それで昨日は、『ゆうたいりだつ』に成功したの?」と聞いてきた。

「一応、家まで行けたよ」

 素直に返すと、お母さんが「あら、本当?」と聞いてきたので、頷きつつ、簡単に千夏ちゃんのことを話してみる。

 すると、お母さんは目を丸くして「まあ」と言って動きを止めた。

 どうしたんだろうと思って様子を覗っていると、何度か瞬きをした後でお母さんは「聞いていたなら、千夏ちゃんに優しくしてあげないとね」と言って微笑む。

「うん。もちろんだよ」

 私が頷くと、お母さんは「疑ってたわけじゃないけど、しっかりと内容まで把握出来るなんて、本当にスゴいわね。凛花の『ゆうたいりだつ』」と感想を漏らした。


 個室なのもあって、お母さんは「テレビでも見る?」と聞いてきた。

 私は「テレビは見なくても良いけど、今の時間が知りたいかなー」と返す。

 お母さんは腕を捲ると、手の内側の文字盤を私に見せてきた。

「もう、十二時間近なの!?」

 うっかりうたた寝をしていたとはいえ、まさか、何時間も寝ていたとは思っていなかったので、驚きで思わず声が出てしまう。

「そうよ。他のお部屋ではお昼ご飯の配膳が始まってて『娘さんはどうしますか?』って聞かれたところなのよ」

「あ、そうなんだ」

 私が何も考えず、そう口にすると、お母さんは「食べるわよね?」と聞いてきた。

「えっと、お母さんは?」

「下の売店で買ってこようかと思ってるわ」

 お母さんはなんだか楽しそうに「ほら、お昼にパンを買って食べるなんて、お母さんが学生の頃はなかったから、ちょっとやってみたかったのよね」と言い加える。

「じゃあ、一緒に食べられるね」

 そう言うとお母さんは「じゃあ、お願いしてくるから少し待っててね」と言って病室を出て行った。


 お昼を持ってきてくれたのはお母さんじゃなくて、看護師の中野さんだった。

「お母様は下の売店にお昼を買いに行ってこられるそうです」

「はい。伝言ありがとうございます」

 私が中野さんにそう返すと「先に食べてて良いそうですよ」と更なら伝言を伝えてくれる。

「わかりました……けど、お母さんが帰ってくるまで待とうと思います」

 そう返すと、中野さんは軽く頷いて、私の前にテーブルを引き出し、その上に昼食の載ったプレートを置いてくれた。


 お母さんが戻ってくると、一緒にお昼を食べ、午後の診察前に病室に来てくれるという主治医の川本先生を待つことになった。

 隠しても意味が無いと思ったので、朝の時点で川本先生から、午後には帰れる旨の説明があったことをお母さんに伝える。

 すると、お母さんは真面目な顔で「午後には退院しても良いって言うのは、やっぱり医学的には異常は無いって事よね?……だとすると、神社やお寺に相談した方が良いのかしら」と言い出した。

「えーと……」

 どう返せば良いのか、上手い言葉が見つけられずに私は言葉に詰まってしまう。

 一応、私もそれなりに神世界や球魂、神格姿について、それなりに知識があるけど、相手がお母さんであっても、そのまま説明するわけにはいかなかった。

 一応、国家の機関が関与していて、大災害の引き金になる事象でもあるし、なにより、一般には認知されていない。

 なので、大丈夫だと説得するのはかなり難易度が高いんじゃないかと考えて、雪子学園長や月子お母さんの助けを借りられないだろうかと閃いた。

 けど、即座にリンリン様から『残念じゃが、緋馬織の三姉妹は未だ生まれておらぬ』という情報が齎される。

 ここでは周囲の人間関係が、まるで元から私がいたように変わっているとはいっても、流石に生まれていない人物がいる可能性は低そうだ。

 ただ、いないとは言い切れないし、雪子学園長達はいなくても、両親やそもそも学校自体はあるかも知れない。

 連絡を取る手段があるかという問題はあるけれど、少なくとも古くから『神格姿』に係わってきた人達はいるわけだから、力を借りることは出来るかもしれないと考えたところで、リンリン様から『それは止めておいた方が良いじゃろな』と否定されてしまった。

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