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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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翌朝

 コンコンとドアをノックする音で私は目を覚ました。

 ベッドから起き上がりながら『看護婦が来たようじゃ』とリンリン様が教えてくれる。

『はい、どうぞ』

 私はそう返事をすると、リンリン様が『主様、頭の中で念じても、看護婦には伝わらぬのじゃ』とツッコまれた。

「あら、起きていたのね」

 そう言いながら入ってきたのは、昨日の津田さんとはまた違う看護師さんである。

「林田さん、おはようございます」

「お、おはようございます」

「私は、病棟ナースの中野です。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 先に頭を下げた中野さんに、頭を下げ返すと「それじゃあ、検温しますね」と電子式の体温計手渡された。

「ピッて音が鳴るまで脇に挟んでいてください」

「わかりました」

 言われるまま、昨日から来ている着物のように前で合わせて紐で結ぶ形状の院内着の襟元から体温計を挿し入れて脇に挟む。

 少ししてピッと音が鳴ったので「音が鳴りました」と報告をすると、中野さんは「手渡して貰っても良いですか?」と返してきたので、ボタンの類いを押さないように気をつけながら体温計を取って手渡した。

「はい。大丈夫ですね」

 中野さんからの朝の確認事項は数値を確認した後、血圧測定、問診と続いていく。

「それで、今日のスケジュールなんですが……」

「はい」

「主治医の先生がもう少ししたら見えられるので、その時に伝えて貰いますね」

「わかりました」

 私が頷くと、中野さんは「それじゃあ、朝ご飯の時にまた声を掛けますので、休んでて貰って良いですよ」と言い残して部屋を出て行った。


『やはり、多少エネルギーを引き抜いたところで床が抜けた例はしないようじゃな』

『リンリン様、もしかしなくても、中野さんを実験台にしたんですか?』

 思わずそう尋ねた私に、リンリン様は『実験台というなら、このベッドに何もない時点で、安全は証明されておるじゃろう? 改めて大丈夫だと確認しただけの事じゃ』と返してきた。

 確かに、リンリン様の言うとおり、改めて思っただけなら、実験台ではない。

『わかってくれれば良いのじゃ』

 結論を出す前に、我が意を得たりと機嫌良くいうリンリン様にそれ以上何も言えなくなってしまった。


 私の主治医の先生は、女性の先生だった。

 朝食の前に、時間がとれたということで挨拶しに来てくれたのである。

「昨日は顔を出せなくてごめんなさい。内科の川本です。凛花ちゃんの主治医……メインで診察します」

「はい、よろしくお願いします」

 私が頭を下げると「未だ、中学一年生でしょ? 礼儀正しいのね」と、川本先生は笑った。

「きょ、恐縮です」

 川本先生は、私の返しに「あら」と口にしてから「難しい言葉も知っているなんて、本当に偉いわね」としみじみと言われてしまう。

 くすぐったくて、私は思わず「父母や姉に学びました」と自分がスゴいわけじゃないと表明した。

 対して、川本先生は柔らかく笑いながら「そう。素敵な家族がいるのね」と言ってくれて、私はそれだけで嬉しい気持ちに気分が切り替わる。

「午後、凛花ちゃんのお母様に来ていただいて、凛花ちゃんの検査結果を説明するので、午前中は病室(ここ)でゆっくり休んでいてね」

「わかりました」

 私が即座に頷くと、川本先生は「うーん」と何か悩むような、考えるような素振りを見せてから「余り良いことじゃないんだけどね」と苦笑した。

 訳がわからず首を傾げた私に、川本先生は「機能の検査では悪いところは見つからなかったから、今晩はおうちに帰れるわよ」と囁くようにして言う。

 診察前、保護者のいないところで、言うのはよろしくないと言うことなのだろうと想像がついた。

 それでも、記録上は初めて入院した私を気遣って、教えてくれたんじゃないかと思う。

 なので私は「お母さんがきて、診察結果を聞くまでは黙っておきますね」と返した。

 目を点にした川本先生は、そのまま数回瞬きを繰り返す。

 その後で苦笑を浮かべた。

「凛花ちゃんは下手な大人より大人みたいね……なら、私が言った余計なことは聞かなかったことにしておいてちょうだい」

 川本先生はそう言って、パチリと片目を閉じてウィンクをしてみせる。

 私は「わかりました」と頷こうといて、踏み止まった。

 そんな私を見て川本先生は噴き出しそうになってから「凛花ちゃんは変なところが真面目で素直なんだね」と言う。

「CTで確認したけど、特に脳に問題は無いから、お辞儀や頷いても問題ないよ」

「は、はい」

 頷く私に川本先生は「それじゃあ、看護婦さんに朝ご飯を持ってきて貰うから、また後で会いましょう」と言い残して部屋を出て行った。


 朝ご飯を配膳してくれたのは中野さんだった。

 とりあえず、時計を見ながら、用意して貰った朝食を頂く。

 もう既に登校時間は過ぎているので、なんだかサボっているような気分になってしまった。

 一応、学力的には問題ないとは思うけど、身体に問題がないので、サボってる感が強い。

 とはいえ、この身体に問題が無いことを証明するという目的があるので、ここは大人しく午後を待つことにした。

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