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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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互いに

『それじゃあ、お父様にお話ししてみて、許可が貰えたら、ウチで過ごすと良いわ』

 話を聞いたお母さんは事もなげにそう言った。

 お姉ちゃんも『そうね。事情を知ってしまった今、放っては置けないわ。大事な部活の後輩だし、大事な妹の友達だからね』と続く。

『あ、千夏ちゃんさえ良ければ、私も友達枠でも良いわよ』

 お姉ちゃんの付け足しを聞いた直後、またも千夏ちゃんは泣き出してしまったようだ。

 中学生の女の子が、一人で夜を過ごすなんて心細いに決まっている。

 しかも、お母さんもお婆ちゃんも入院中で、お父さんも仕事で帰りが遅いとなれば、縋る相手もいなくて余計心細かったはずだ。

 部活の時、そんな背景を全く感じなかったのは、演技の上手さ故だったのだろう。

 千夏ちゃんは、誰にでも自分の内側を隠すのが上手くて、結果、同級生はもちろん、大人も事情に気付かず手を差し伸べられないタイプのようだ。

 お母さんも、お姉ちゃんも、保護の方針のようだし、私も千夏ちゃんの支えになれるように頑張ろうと思う。

 そう決心したところで、ユミリンが千夏ちゃんに声を掛けた。

『チー坊は運が良いよ。良枝お姉ちゃんも、二人のお父さんも、お母さんも、それからリンリンも、困ってる一位を放っておけないタイプだからさ……一杯頼れば良いよ』

 そんなユミリンの言葉に、千夏ちゃんは『え』と声を漏らす。

 人に頼らずに頑張っていただけに、即座に受け入れられるアドバイスではないんだろうと思った。

 けど、ユミリンは私よりも遙かに千夏ちゃんの心理を読んでいるようで、淀みなく言葉を続ける。

『なんだかんだ言ってもさ、私らも去年までは小学生やってたくらい子供なんだからさ、大人やお姉ちゃんに頼るのは当たり前なんだよ』

 ユミリンの断言に、千夏ちゃんは『でも、それは』と困惑を見せた。

 ただ、そんな千夏ちゃんに対して、ユミリンは言葉を詰まらせることなく語りかけ続ける。

『もちろん頼るだけじゃ駄目だ。だから、自分の出来る事で貢献する。お買い物なんかの家事の手伝いをするとか、リンリンを護るとかね』

 自分の出来る事で返せば良いという理屈はわかるけど、正直最後の私を護るって言うのが退化に入ってるように聞こえて少しモヤった。

 けど、私が聞いているのを知っていて、しかも、心理を読み切っているかのような完璧なタイミングで、ユミリンは『まあ、リンリンは親友だから、助けるのも守るのも当たり前で、自分に出来る事にカウントするのはおかしいけどね』と言う。

 なんだか、不満を持ってしまった自分が矮小に思えて恥ずかしくなってしまった。


『ともかく、チー坊はチー坊なりの出来る事で返せば良い』

 ユミリンに続いて、お母さんが『まあ、私としては頼ってくれるだけでもう嬉しいのだけど、どういうわけか、良枝と凛花の友達は皆、真面目で責任かが多い子が多いのよねぇ……なので、お互い様になるように、私も頼るので、千夏ちゃんも頼ってちょうだい』と声を掛けた。

『私も、凛花に何かあったらどうしようって思ってたから、ちょっとは千夏ちゃんの気持がわかると思う』

 お姉ちゃんはそう言うと少し間を置いてから『でも、由美ちゃんや千夏ちゃんがいてくれたから、冷静でいられたし、救急車も呼べた……二人はもう既に恩人だよ』と告げる。

 皆の会話を聞きながら、ここにいて私も千夏ちゃんを励ましたいと思う反面、私がいたらこんな話にはなっていないかもしれないなぁと、嬉しさと寂しさが混ざったような気分になった。


『とりあえず、千夏ちゃんの話をすれば、私が覗いていたことは証明できると思う』

 一応口に出してみた。

 ただすぐに『でも』と思ってしまう。

『この内容を聞いていたとなると、千夏ちゃんは良い思いしないよねぇ?』

 少なくとも私は、恥ずかしくてしかたがないので、多かれ少なかれ千夏ちゃんもそうじゃないかと思われた。

『そうは言うが、主様』

『なに?』

『主様は、そもそも黙っておられるのかの……話を聞いてしまったという事実の方を、じゃ』

 リンリン様の指摘に、私は『うぐっ』と言葉に詰まる。

 黙っている方針にした場合に、黙っていると言うことは、知らぬ振りをするということだ。

 残念あがら、私にはそれが出来る自信が無い。

『むり……そうです……』

 私の結論に、リンリン様は『考えるまでもなかったの』と返してきた。

 表情は見えていないが、ニヤリと口角が上がっている姿が容易に想像できる。

 とはいえ、ちゃんと聞いてた証明にはなると、自分の気持を納得させることにした。


 その後、お姉ちゃん、ユミリン、千夏ちゃんの三人でお風呂に入ったり、そのまま私とお姉ちゃんの部屋で寝たり、千夏ちゃんのお父さんから電話があって、状況の説明をウチのお父さんがしたりと、リンリン様は状況を追ってくれたけど、改めて話題にするような特別な内容は無かった。

 皆が寝静まったところで、リンリン様にはヴァイアをこっそり私のクローゼットの中に隠すように移動させてから、意識だけで返ってきて貰う。

 家にヴァイアがあれば状況を把握出来るというのもあるのだけど、一番の理由は戸締まりをされてしまったせいで家から抜け出せなくなってしまったのだった。

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