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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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具現

『流石にドローンを具現化するのは良くないよねぇ?』

『まあ、この世界は現実世界ではない故、本来存在しないものが生み出されても問題ないと、主様が考えるのならば、問題はないのではないかのう?』

『なんだかもの凄く引っかかりを感じる言い回しだね』

 私のツッコミに対して、リンリン様はサラリと『そんなことは無いのじゃ』と言い切った。

 その上で、リンリン様は『元の世界でも好き勝手に科学技術が追いついていないものを具現化している主様が、この世界でだけ躊躇する理由がわからぬだけじゃ』と言い加える。

 リンリン様の指摘で、これまでの具現化品の数々が頭に過った。

 今更と言われても、この世界だけ何故自重するのかと言われても、確かにおかしくない気がしてくる。

『ご理解いただけたようで、安心したのじゃ』

 リンリン様の清々しい言い回しに、何も言えず、ぶつけどころのない気持を抱えることになった。


 そもそも私がドローンを出現させる事を考えたのは、私の使える術である『目』はあくまでも見ることしか出来ないからだ。

 様子を覗うだけならこれで十分なのだけど、今回は様子をうかがいに行くという約束なので、どんな話がされているかも聞いておきたい。

 そんなわけで『耳』も欲しいのだけど、術として、私は習得できていなかった。

『緊急用として、目の習得だけで止めて折ったのが禍したようじゃの』

 具現化の能力がある上に、術の習得が苦手だったこともあって、リンリン様に促されても、のらりくらりと先送りしていたことが、ここで問題として露見してしまったわけである。

 当然、リンリン様としては『ほれみたことか』と勝ち誇るのは当然だった。

『リンリン様の忠告に従わなかった私の落ち度ですごめんなさい』

 素直に謝ると『これからはわらわの言うことにも耳を貸してほしいものじゃな』と返してくる。

 その後で、リンリン様は『影響が気になるならばじゃ、極小のドローンを生み出して、認知されないようにするのはどうじゃ?』と代案を示してくれた。

『極小……』

『主様の想像力なら、飛行能力、カメラ、マイク、送信装置の四つを搭載した、小型のドローンを具現化出来るのではないかの?』

 リンリン様の指摘に、出来なくは無さそうだけどとは思う。

 ここで、更なるアイデアとしてリンリン様は『元の世界より無視の数が多いからの、無視に擬態すれば更に察知される可能性は下がるのではないかの?』と尋ねて来た。

『確かに』

 私がそう言って頷くと、リンリン様は『後は、受信装置を具現化すれば、必要なものは足りるのではないかの?』と作戦のほぼ全容を提案し終える。

 完全にリンリン様の思惑通りだなと思いながらも、私の要望に添うようにきっちり作戦を立ててくれたことに感謝しつつ『ありがとう。リンリン様、それでいきましょう』と苦笑した。


 この世界に来て、具現化自体も初挑戦ではあった。

 術の仕様は出来るし、少し仕様は変わったものの球魂の切り離しにも成功している。

 おそらくは出来るだろうという感覚もあった。

 ただ一つ懸念として、球魂の切り離しと同じ様に、具現化にも何らかの影響が出て、イメージ通りの使用が出来ない可能性がある。

『では、先に、受信機からじゃな』

 リンリン様の言葉に促されて、私は具現化の準備に入った。

 具現化出来るか自体の実験も兼ねているし、極小ドローンとその情報を受信する機械、どちらが難易度が高いかを比べてみれば、当然後者になる。

 元の世界で使っていた電子パッドをイメージしながら、受信機能や充電機能を補助し具現化してみた。

 すると想像以上にスムーズに、私の手の中に、慣れた手触りと重さが物質として出現する。

 その事に驚いていると、リンリン様が『どうやら具現化に際して、エネルギーの出所が主様では無かったようじゃ』と衝撃の発言をした。

『私が出元じゃない?』

 言っていることはわかるものの、何が起こっているのかという細かな部分の予想が付かない。

 軽い混乱を起こしてしまった私に、リンリン様は丁寧に説明してくれた。

『主様の具現化のエネルギー源は、主様の身体の中にはないところはいいかの?』

 リンリン様の言うとおり、具現化のためのエネルギーは私から分かれた京一お父さんの中にある。

 とはいえ、私自身に全くエネルギー源となるものが無くなってしまったわけでは無いので、具現化自体は時間を掛けさえすれば出来るのだ。

 時間だけでなく、京一お父さんがそばにいないと、痛痒もあるのだけど、今振り返ってみるとそれもなかった気がする。

 つまり『京一お父さんがそばにいるのと同じ環境にある?』と私は仮説を口にした。

 対してリンリン様が『元の世界のような正確な測定や観測は出来なかったが、この世界そのものが京一の代用品になっておるように思えたの』と言う。

『それって?』

 私の問いに対して、リンリン様は『主様は認識出来たかわからぬが、主様は自分が座るベッドやこの部屋の天井に床、壁にカーテン機器類とあらゆるものからエネルギーを吸収し、具現化して折ったのじゃ』と説明してくれた。

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