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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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分離

『それじゃあ、サポートお願いします』

 私の言葉に、リンリン様は改めて『わらわは反対なのじゃからな!』ととげとげしい言い回して抗議をしてきた。

 けど、いざとなれば、リンリン様は全力で協力してることを確信しているので、不安は全くない。

 むしろ、どちらかと言えば、申し訳なさが勝っていた。

『主様も、随分と、図太くなったものじゃな』

 溜め息交じりで響いてくるリンリン様の言葉に、思わず苦笑が漏れる。

 問答をしても堂々巡りだし、結局リンリン様の不満を解消できないので、行動に踏み切ることにした。


 この世界は神世界の一種ではあるが、リンリン様からの情報で、私の身体が元の世界に存在していない事ははっきりしていた。

 つまり、この世界に私は体ごと入り込んでいる事になる。

 身体ごと来ているのなら、私の今の姿、身体自体は神格姿では無いということだ。

 教室探しの時に術として『目』を放つことは出来たので、恐らく術の類いは使えるはずである。

 他の術も何が使えて、何が使えないのかも確認しておきたいところだけど、まずはお復習(さら)いとして『目』を出現させた。

 スゥッと身体を抜け出してそのまま天井に向かって進んだところで、視線を真下に向けると、ベッドに横になって寝ている自分の姿が見える。

『リンリン様、今『目』で私を見下ろしているんですけど……』

『こちらでも観測できておるのじゃ』

『発動、継続に、以上はありますか?』

『特に、元の世界での使用時と変わりは無さそうじゃが……』

 含みのある返しに、私は『どうしました?』と問うと、すぐに答えをくれた。

『術式が問題なく展開して、能力が発現しているわけじゃが、この世界は先にも言った通り元の世界よりも加速した状態にあるわけじゃ。当然、術式が問題なく展開されるためには、術式自体も加速状態でなければ発現しないわけじゃな』

 リンリン様の言いたいことが漠然としてしかわからず、申し訳なさを感じつつも『……えっと……つまり?』と要約を求めてしまう。

『全く理解しておらぬではないか』

 一言、溜め息交じりのツッコミを打ち込んでから、リンリン様は『要はこの世界の時間経過に、意識や身体の動きだけで無く、術式の展開や、エネルギーの循環に至るまで、全てが加速状態にあることが再確認されたという事じゃ』と結んだ。

 思わず『それはわかっていたことじゃないのかな?』と考えてしまった私に『だから、再確認というておるじゃろうが!』とお怒りの声が降り注ぐ。

『重要なのは、この神世界が、元の世界とは独立した世界として存在しているという事実じゃ』

『平行世界……パラレルワールドみたいな?』

『少し違うかもしれんな。むしろ、お伽噺の浦島太郎の方が近いかもしれんのじゃ』

 リンリン様に具体例を挙げられた事で、私はなるほどと感心することになった。

 むしろ、神隠し事件の裏に、神世界や種の存在があったのなら、浦島太郎のお伽噺の裏にもあっておかしくはない。

 そうなると、現代に伝わっている民話の類いにも……と考え始めたところで、リンリン様から『主様、それは今考えることではないのじゃ』と制止を掛けられてしまった。


『それじゃあ、改めて、球魂を切り離します』

『うむ』

 リンリン様の返事を聞いた後で、私は目を閉じて身体から力を抜いた。

 そのまま、胸だけが上へ、空へ引き上げられるようなイメージを浮かべる。

 それが球魂を分離させるときのイメージであり手順だった。

 ややあって、抜けたという感覚が過ると共に、一気に黒一色だった視界に、病室の光景が広がる。

『主様』

『なに、リンリン様?』

 私が返事をすると、すぐに『球魂ではなく、神格姿、キツネ娘の姿じゃ』と伝えられた。

 言われて自分の状態を確認するために、視線を巡らせると、ほのかに白く光る手足や巫女装束を思わせる衣装が目に入る。

『球魂……球体じゃないね』

『うむ』

 身体を捻ってみて、尻尾が生えているのを確認してから、頭に手を伸ばした。

 が、触れた感触はなく、手が頭を通り抜け、指が数本、目の直前を通過するという奇妙な光景を目撃することになる。

『り、リンリン様!?』

『実態が無いようじゃな』

 冷静に返してくれるリンリン様のお陰で、パニックにはならずに済んだ。

 物質を透過できる球魂に性質は近く、その姿は神格姿に寄っているらしい。

『入口に鏡があるのじゃ』

 リンリン様に、鏡で実態があるか……正確には、鏡に今の姿が映るか確認するように指摘された私は、入口に向かって身体を移動させた。

 感覚的には球魂の移動に近いが、視界には手足が映るので、少し新鮮というか、違和感がある。

 間もなく、入口横に設置された洗面台の前に来ると、そこに設置された鏡に視線を向けた。

『鏡には映らないね』

『じゃな』

 こうなると、人の目にも映らないだろうとは思うけども、エネルギーを見る力がある人には、幽霊のように見えるんじゃないかとも思う。

『実験すべきじゃが……流石に、病院ではのう』

 リンリン様の発言に、私も風評被害を起こしかねないと思い『病院じゃね』と返した。

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