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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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秘められた可能性

「父さん、凛花がそんな特技を持っているとは思わなかったな」

 腕組みをしたお父さんは、大きく頷きながらそう感想を口にした。

 制服から動きやすいジャージの上下様な私服に着替えたお姉ちゃんが「それって特技なの!? その、魂が出るっていうの!」と眉を寄せる。

 今晩泊まる……入院して一夜を明かすのは、個室で、部屋には車で駆けつけてくれたお父さんとお姉ちゃん、お母さんにユミリン、千夏ちゃんと、時々病棟の看護婦(ナース)さんが出入りしているのでそれなりの人口密度になっていた。

「だって、そのせいで、凛花は意識を失ったり、倒れたりしているんでしょう?」

 真剣な表情で言うお姉ちゃんからは、心配してくれているのが強く伝わってくる。

 そんなお姉ちゃんに、お母さんが「でも、あれよ、病気だとどうにもならない部分もあるけど、医学的な理由じゃないなら、家族の協力でどうにか出来るかもしれないじゃない?」と肩に手を置きながら告げた。

「由美ちゃんや千夏ちゃんだって、きっと力を貸してくれるし、病気じゃ無い方が良いとさえ思えるわよ」

 お母さんはユミリンや千夏ちゃんに視線を向けながらそう続けると、二人も多い苦頷いてくれる。

「まあ、リンリンは親友だしね!」

 ユミリンはそう言って自信ありげに胸を叩いた。

 一方、千夏ちゃんは手を挙げてアピールしながら「部長先輩、私も凛花ちゃんの助けになるつもりだし、助けて貰うつもりでもあるので……」と口にしたところで言い淀む。

「千夏ちゃん?」

 どうしたんだろうと思って、声を掛けてみると、私にバッチリと視線を向けた千夏ちゃんは、二回りくらいボリュームを上げて「凛花ちゃんとは、そのお友達なので!」と顔を真っ赤にしながら断言した。

 何故過呼吸まで乱して肩で息をする千夏ちゃんに「ありがとう、千夏ちゃん。私も友達になれて嬉しいよ」と頷く。

 その後で、ユミリンにも「頼りにしてるよ、ユミリン」と声を掛けた。


『主様』

 急に頭の中で響いた声に反応して、思わず声が出そうになったものの、どうにか堪えた私は『何かあった?』とリンリン様に聞いてみた。

『わずかじゃが、世界の歪みを観測したのじゃ』

『世界の歪み?』

 どう考えても尋常じゃない単語に、嫌な予感が猛烈な勢いで増していく。

『主様が時間停止を観測した後に、世界の歪みの残滓(ざんし)を観測してオルのじゃが、どうも似ているようなのじゃ』

 リンリン様の言葉に、私は一つの仮説を閃いた。

『もしかして、今、時間停医師が怒りそうだった?』

『うむ、可能性の域を出ぬのじゃが……』

『そして、理由はわからないけど、時間停止は起こらなかった?』

 私の問い掛けに、リンリン様は『あるいはこれから起こるか……』と言う。

 もしこれから起こるならと身構えるが、リンリン様は更に三つ目の仮説を口にした。

『既に起こっていて、主様が観測できなかったか……じゃ』

 リンリン様の言葉はあまりにも衝撃的で、思わず口から声が出そうになる。

 これまでは、私が観測して、リンリン様に伝えるという流れだったから、考えもしなかった。

 けれど、時間停止を観測できるのが、私一人だけとは言い切れない。

 そもそも何故時間停止現象が起こっているのかを解明できていない以上、私がたまたま観測できているという可能性の方が高いのではないかと気が付いた。


 面会の終了時間を過ぎたこともあって、皆が病室を後にしたところで、私はベッドに横になりながら、自分なりの考察を頭に浮かべていった。

『この世界が神世界ならば、必ず『種』がいる。時間停止はその『種』の影響……そもそもこの世界は元の世界より時間経過が早い。時間に関する能力を有している可能性は高い』

 そんな私の列挙に対して、リンリン様が『わらわもじゃが、オリジンもそう考えておるのじゃ』と同意してくれる。

『この世界の外から来たからか、あるいは神格姿があるからか、私には時間停止を観測できる……でも、リンリン様は残滓を感じ取れても現象自体を認識出来ない』

『うむ。主様の報告で世界の歪みの残滓を観測できてはいるのじゃが、わらわは時間停止を観測的ていない故、それが自主の直前に発生したものか、あるいは事後なんかはわからぬのじゃ』

 どこか申し訳なさそうなリンリン様の言葉を聞きながら、自分の中に一つ疑問が浮かんだ。

 半分冗談とその場のノリで、幽体離脱……球魂を自宅に飛ばしなどと約束したが、ここが『神世界』だとしたら、私は球魂を切り離せるのか、あるいは神格姿となるのか、既に今の姿が神格姿に近いのか、全く予測が立てられない。

「これは仕方ないよね?」

 私の言葉に、リンリン様は『わらわは反対なのじゃ!』と棘のある声で反対を表明してきた。

 そんなリンリン様に「でも、いざという時のために、確認は必要だよね?」と言えば、反対し続けることはできない。

『そうじゃな!』

 自棄になっているのが伝わってくる返しに、私は申し訳ないと思いながらも、純粋な好奇心に抗うことも出来ず、早速試すことにした。

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