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06 おっさんは海賊を全滅させ、アジトも破壊し、ギルドから盗まれたものを取り返す。

翌朝、二人はさわやかな海の香りに包まれながらシーフギルドへと足を運んだ。


港町のギルドは、昔ながらの木造の建物だ。


扉を開けると、中は賑わっていて、冒険者たちが情報交換や計画立てをしているようだった。


ランデルとリナが受付に近づくと、ギルドの者たちの視線が二人に集中した。


「ベレニス議員から、ブルージュエルについて調べていると聞きました」


と彼ははっきりと話し始める。


すると、大柄な男が立ち上がり、大声で笑いながら言った。


「何?アイツからの紹介だと?ハハハ、あの堅物がめずらしいじゃねえか!」


「えっと、あなたは…?」


「俺はマックス、ここのギルド長だ。」


彼は髭をたくわえた、力強い眼差しの男で、その笑顔とともに全身からは豪快さが滲み出ていた。


リナは少し引き気味になっていたが、ランデルは冷静にその男との会話を進めるつもりだった。


「我々はブルージュエルに関する情報を求めて、港町までやってきました。ベレニス議員から、このギルドにその手がかりがあると聞いて…」


ギルド長は一瞬だけランデルを測るような目を向けた後、豪快に笑う。


「あの堅苦しいベレニスの紹介なら、信じてやろう。ああ、俺たちもブルージュエルについて調べてる。」


「情報は重要なものだと分かっています。ブルージュエルに関する情報を手に入れるために、何かすべきことがあれば教えてください。」


「まあ、お前たちの実力が本物なら、情報と引き換えになるものもあるだろう。…なら、最近街道に発生したオーガの群れを倒して来な。それがお前らの誠意だ。」


ギルド長は腕組みをしながら答えた。


盗み聞きをしていた周りのギルドの冒険者達からも、小さなざわめきが起きた。


「オーガ…?(あれ…たしか…)」


ランデルがそう答えると、ギルド長はニヤリと笑った。


「そうだ。単体でも面倒な奴らの群れだ。並の冒険者じゃあ、太刀打ちできねえぞ?」


「あ、もう全滅させました。」


「何ぃ!?」


マックスはランデルを見、驚きの表情を見せた。


周りのギルドの者たちも驚きの声をあげ、ざわつきが広がった。


「お前、冗談を言っているんじゃないだろうな?」


「いえ、本当です。道中、オーガの群れに遭遇しましたが、二人で倒しました。」


リナはにっこりと微笑んでギルド長に向かって言った。


「ランデルさんの魔法はすごいんですよ。」


マックスはしばし沈黙し、その後大声で笑いだした。


「ハハハ、さすがベレニスの知り合いだ。それなら、もう調査の件について話してもいいだろう。」


彼はテーブルの上の酒杯を飲み干してから、二人をギルドの奥へと案内した。



ギルド長の事務室で、マックスは大きな机の前に立ち、二人をじっと見つめる。


リナは少し緊張した面持ちをしていたが、ランデルは冷静にギルド長の言葉を待った。


「実は数日前、我々が探していたブルージュエルに関する出土品を、海賊団に盗まれた。」


「海賊団って、この辺りで有名な連中ですよね?昨日、レストランでウワサを聞きました。」


「ああ、その通り。彼らは普段は交易路を荒らしているが、今回はどうやら我々が出土品を手に入れたという情報を仕入れて、狙ってきたようだ。」


「その出土品を取り返せばいいのですね?」


「その通りだ。お前たちの実力を考えれば、それぐらいのことはできるだろう。出土品を取り戻せたら、俺たちが今まで手に入れた情報の内容を教えよう。しかも、情報の仕入先も教えてやる。」


「わかりました。その海賊団のアジトの位置を教えていただけますか?」


ギルド長は一瞬の沈黙の後、大きな地図を広げ、アジトの場所を指で示した。


「入り江の近くですか。ちょっと遠いですけど、ランデルさんの支援魔法があれば、問題ないと思います!」


リナが元気よく答えた。


「成功を祈るぞ。」


ランデルとリナはギルド長の元を後にし、海賊団のアジトへと向かうこととなった。



東の街道を駆け抜けるランデルとリナ。


風を切りながら走る二人の速度は、通常の馬よりも速い。


街道を進むうちに、次第に海の香りが強くなってくる。入り江が近づいてきたのだ。


さらに進むと、前方に巨大な木造のアジトが現れた。


「ランデルさん、あれが海賊団のアジトですね。」


「ええ、情報通りの位置ですね。」


砲台や見張り塔が所々に配置され、警戒体制が整っていることが一目瞭然だった。


「こんなに堅固なアジト、正面突破は難しそうです…」


「問題ありませんよ。支援魔法で、相手の攻撃も守りも無効化します。」


ランデルはその場で両手を広げ、強力な支援魔法のオーラを放つ。


リナの周りも虹色に輝き、両者はさらなる力を感じ取る。


「すごい…この力、なんでもやり遂げられそう!」


「さあ、行きましょう!」


二人は正面の門に向かって走り出す。


魔法の力で速度が上がったリナは、見張りの海賊たちを次々と斬り倒す。


ランデルも杖を振り回し、海賊たちを一撃で撃退する。


門が近づくと、砲台から大砲の砲撃が始まった。


だが、ランデルの魔法によって爆発の衝撃は彼らの周りを避けるかのようになった。


「このまま正面に突っ込みます!」


「分かりました!」


二人はそのまま門を破壊し、アジト内へと突入する。


中にはさらに多くの海賊たちが待ち構えていたが、リナの剣とランデルの魔法には敵わなかった。


海賊A:「な、なんだあの二人は!こんなに速くて…」


リナが一閃、海賊Aは地面に倒れる。


海賊B:「どこの馬の骨だ!お前たち、ここが何者のアジトだと思っているんだ!」


ランデルが魔法の力で海賊Bを一撃で吹き飛ばす。


海賊C:「お、おかしら!これはマズイぞ!」


リナ:「次は誰?」


海賊D:「うわぁ、待て待て!こっちの宝物全部やるからさ、命だけは…」


ランデル:「宝物じゃなくて、盗んだ出土品はどこですか?」


海賊E:「お、おい!なんでそんな強いんだよ、お前たち!このっ!」


リナが微笑みながら、海賊Eの攻撃をかわす。


海賊F:「おかしら、これ以上はダメだ!撤退だ!」


海賊たちの恐れと驚きの声が、アジトの中に響き渡る。


次々と海賊たちが倒れていく中、アジトの中心部へと進むランデルとリナ。


アジトの中心にたどり着くと、広い部屋の中央に大きな椅子があり、その上には体格の良い海賊団長が座っていた。


彼の周りには総数十名の海賊たちが待機しており、どれもこれも顔つきが鋭く、普段から数々の戦闘を経験してきたことが伺えた。


「ほう…ここまで辿り着いたとはな。さすがにうちの部下たちを次々に倒してきただけはある。その実力、見せてもらおうか!!」


「目的のものを返してもらえれば、戦わなくても済むのに…。」


団長はニヤリと笑った。


「そんな甘い話、あるかよ!!」


ランデルは杖を構え、リナも剣を抜く。


「リナさん、来ますよ!」


戦闘が始まると、団長の周りの精鋭たちはランデルとリナに向かって突進してくる。


しかし、ランデルの支援魔法により、リナは敵の攻撃を瞬時に避け、逆に一撃で精鋭たちを倒していく。


団長もただ見ているだけの男ではなかった。


彼は巨大な両手剣を振るい、ランデルとリナを圧倒しようとする。


しかし、ランデルの支援魔法とリナの巧妙な攻撃で、団長も徐々に追い詰められていく。


「こ、この力は…!」


「終わりにしましょうか。」


最終的に、ランデルの支援魔法で強化されたリナの一撃が団長に突き刺さり、団長は重傷を負って床に倒れ込む。


「ブルージュエルに関する出土品、どこにありますか?」


ランデルが団長に話しかける。


団長は苦しみながらも答える。


「奥の金庫さ…。だが、その鍵は…」


リナは団長の首元から鍵を取り上げる。


「これですね。」


「ぐっ、ち、ちくしょう…。」



金庫を開けたランデルとリナは、ブルージュエルに関する出土品だけでなく、その他の宝物や貴重品も目の前に広がっているのを見つけた。


宝石、金塊、細工された貴金属、そして数々の武器や防具が所狭しと収められていた。


リナは大事そうに飾られていた両手剣を持ち、軽く振るってみる。


「これ、いい感じかも。」


ランデルは笑いながら言った。


「それは団長が使っていたものみたいですが、君の方がずっと使いこなしてるように見えますね。」


リナはにっこりと微笑んだ。


「そう言ってもらえると嬉しいです。」


二人は金庫の中の貴重品をすべて持ち出し、アジトの中をさらに探索した。


途中で、アジトの中核となる部屋を見つけたランデルは、


「この部屋を破壊すれば、アジトは使用不能になるはず。」


と考えた。


ランデルは、リナに支援魔法を掛けた。


リナはランデルの考えと支援魔法を感じ取り、アジトの巨大な柱を掴んで引き抜いた。


その後、持ち上げた柱でアジトの壁や床を繰り返し打ち続けた。


ランデルも負けじと、自身に支援魔法を掛け、重い石や岩を持ち上げては、アジトの構造を壊していった。


大きな響きとともに、アジトは次第に崩れ去っていった。


二人の破壊活動が終わる頃には、かつてのアジトの面影はほとんど残っていなかった。


リナは息を切らしながら、ランデルに微笑んだ。


「はぁ…はぁ…これで、この場所を悪用する者はいないでしょうね。」


ランデルは満足そうに頷き、


「そうですね。さて、もどりましょうか。」


と提案した。


そして、二人は再び南東の港町へと足を進めた。



港町に戻ったランデルとリナは、すぐさまギルドの建物へと足を運んだ。


ギルド長マックスのもとへと通されると、ランデルは要塞の状況や、金庫の中身について詳しく報告した。


ギルド長はランデルたちの報告を驚きの目で聞き入れた。


「あんたら、本当にやるじゃねえか。」


ギルド長はデスクの引き出しから一束の書類を取り出し、ランデルとリナに差し出した。


「これが、我々がこれまで集めたブルージュエルに関する情報をまとめたレポートだ。」


ランデルはレポートを受け取り、ざっと中身を確認した。


「これは助かります。情報が詳しくて、まとまっていますね。」


ギルド長はニヤリと笑った。


「それだけじゃない。情報収集の場も教えてやろう。砂漠を越えた先にあるオアシス都市がオススメだ。商人や冒険者、さまざまな者たちが集まる場所だから、ブルージュエルについての新たな情報も得やすいだろう。」


リナが目を輝かせて言った。


「オアシス都市、聞いたことがあります。そこが新しく目指す先になりそうですね。」


ギルド長は頷きながら、


「あんたらなら、きっと何もかも乗り越えて、真実を掴むことができるだろうさ。」


と励ましの言葉を送った。


ランデルは微笑みながら言った。


「ありがとうございます。アジトで手に入れた金庫の中身は、この町の被害者たちへの補填と、これからの冒険者のために使ってください。」


リナも頷き、


「私たちが必要な分はもうもらってあります。それに、もう十分な報酬を手に入れました。このお金で町の人たちや、冒険を始めたばかりの者たちのサポートをしてください。」


ギルド長はしばらくの沈黙の後、深く頷いた。


「わかった。信じられないようなことを成し遂げてくれて、ありがとう。あんたらのおかげで、この町の未来は明るくなった。」


彼らの行動により、港町は再び平和を取り戻し、未来の冒険者たちにも希望が灯るのだった。



ランデルとリナは、ギルドを後にし、港町の賑やかな通りを歩きながら、次の目的地について話し合った。


リナは地図を広げながら言った。


「砂漠は危険も多いと聞きます。特に、昼と夜の気温差が激しいので、対策が必要ですね。」


ランデルは頷いて、


「砂漠用の装備や、水筒、日よけを用意しないと。幸い、支援魔法で体力や耐久性を向上させることができるから、それを活かすといいでしょう。」


通り沿いの商店で、二人は砂漠用の装備を揃え始めた。


長袖の布地で作られたローブ、頭を覆うターバン、そして大量の水筒。


ランデルは特に日差しを遮る大きな傘も手に入れた。


リナが楽しげに言った。


「オアシス都市への道のりは長いですけど、新しい場所での冒険が待っていると思うとワクワクしますね!」


「そうですね。」ランデルが笑顔で返した。


「新しい情報や、未知の冒険が待っています。目指すはオアシス都市です!」


荷物を整え、新たな装備を身につけた二人は、港町を後にして、オアシス都市へと足を進めた。


~第2章 完~



【作者より】

この章は、このお話で終わりです。

小説をお読みいただき、ありがとうございます。


もし気に入っていただけたら、フォローや★で称えていただけると嬉しいです。

これからも読み手の皆様に楽しんでいただける作品を目指して参ります。


ランデルと仲間の冒険は、まだまだ続きます。

今後とも、どうぞよろしくお願いします。

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