04 おっさんは美少女新米剣士を仲間にし、遺跡の中で無双する。
ランデルは頷きながら答えた。
「何でもお手伝いします。どんな調査をして欲しいのですか?」
ベレニスは地図を広げ、一箇所を指差した。
「こちら、街の西門を進んだ先の街道に、古びた遺跡があります。以前、私のチームが調査に行った際、モンスターの被害に会い、調査を中断せざるを得なくなったのです。その研究所がブルージュエルと関係があるかもしれません。」
ランデルは気を引きしめた。
「わかりました。その研究所に行って、ブルージュエルに関する手がかりを探し出します。」
ベレニスは感謝の意を込めて言った。
「ありがとうございます、ランデルさん。あなたのような有名な実力者が助けてくれると、安心できます。」
ランデルは微笑んで言った。
「これまでのこの街のためにしていただいたサポートを考えれば、これくらいは僕の役目です。」
約束を交わし、ランデルはベレニス議員の元を後にした。
◇
街の中心広場で、ランデルは考えごとをしていた。
「少し遠いし、どんなモンスターが出るのか分からない。できれば、仲間とパーティを組んで行きたいな…。」
その時、以前聞いたことのある可愛らしい声が聞こえてきた。
「またモンスターにやられちゃった…」
視線の先に、新米冒険者のリナが立っていた。
彼女はゆるふわの金髪に大きなリボンを結び、瞳は深い緑色の剣士である。
その瞳は普段の明るさとは裏腹に、少し落ち込んだように見えた。
「やあ、リナさん!」
ランデルは彼女の元へと足を速めた。
リナは落ち込んだ顔から少し元気になり、少し気まずそうに答えた。
「あっ、ランデルさん!。実は、モンスターとの戦いで手こずってしまって…剣士としては、まだまだ未熟なようです。」
ランデルは、彼女の話を聞きつつ、提案を思いついた。
「…リナさん、もしよろしければ、私と一緒に研究所の調査に行きませんか?」
ランデルは少し照れくさい笑顔を浮かべながら、彼女の目をじっと見つめた。
「リナさんの剣技と私の支援魔法を組み合わせれば、きっと強力なコンビになれると思うんです。」
リナはランデルの提案を聞いて、うれしそうに目をキラキラさせた。
「いいんですか!?よろしくお願いします!私も、ランデルさんと一緒に冒険したいです!!」
「決まりですね!よし、それじゃあ、一緒に買い出しに行きましょう。」
二人は装備と食料を揃え、出発する準備を始めた。
ブルージュエルの手がかりを求め、二人の冒険が幕を開けた。
◇
ランデルの支援魔法により、二人の足元が七色に輝き、風を切って研究所へと駆け抜ける。
森の中、突如、大きなイノシシのようなモンスターが二人の前に立ちはだかったが、リナはその刀を振り下ろし、ズバンッと真っ二つに切り裂いた。
「うわぁ!ランデルさんの支援魔法、やっぱりすごい…。こんなに強く素早く動けるなんて、本当にすごいです!」
リナは目を輝かせながら感嘆の声をあげた。
ランデルはほほえんで言った。
「リナさんの剣技と組み合わせると、さらに強力になりますね。」
「えへへ、これからもよろしくお願いします!」
その後すぐ、先ほどよりも大きな熊のようなモンスターに遭遇し、リナが剣を構える。
「リナさん、さっきよりも強そうなモンスターだけど、大丈夫ですか?」
「はい!ランデルさんの支援魔法があれば大丈夫です!えいっ!」
彼女の可愛らしいかけ声とは裏腹に、その剣技は鋭く、モンスターは一瞬で倒れた。
「さすがリナさん、見事ですね。」
モンスターを倒したリナの顔は、まるで花が咲くように明るく輝いていた。
「ありがとうございます!でも、ランデルさんの魔法がなければ、こんな風に戦えないと思います。」
「相性がいいんだろうね。」
リナは嬉しそうで、瞳はキラキラと輝いていた。
◇
研究所の建物は古びており、どこか暗い雰囲気をしていた。
リナは緊張して、ランデルの服を握りしめていた。
「この場所、ちょっと怖いです…」
「大丈夫、リナさん。一緒にいる限り、何も心配することはないよ。」
リナは、ランデルの言葉に元気づけられて、少し顔をゆるめた。
「ランデルさんの言葉、とても心強いです。ありがとうございます。」
「ハハ、どういたしまして。さあ、支援魔法をかけ直したら、行こうか。」
「はいっ。」
リナの瞳は、不安から希望へと変わり、彼女の笑顔が再び戻ってきた。
研究所の内部は、湿った空気とうす暗さに包まれていた。
「気をつけて、リナさん。もう敵が近くにいる感じがします。」
リナは剣を構えて警戒しつつ、応じた。
「わかりました。ランデルさんも、お気をつけください。」
コボルトが角を曲がって現れるや、リナが一瞬で剣を振るってコボルトを一刀両断にした。
同時にダークマジシャンが魔法を放とうとしたが、ランデルが高速で近づき、杖で目にも止まらぬ一撃を食らわす。
倒されたコボルトとダークマジシャンは、溶けるように消えていった。
「さすが、リナさん!」
「ランデルさんも、すごいです!」
リナは、敵がドロップしたアイテムや魔石を手際よく拾ってバッグにしまった。
その後、ビッグラットやゴブリンも次々に現れるが、二人の連携により、すぐに倒された。
「これが全部ですね。」
「お疲れ様、リナさん。この調子で進もう。」
◇
研究所の深部に進むと、壁に古びた絵や文字が刻まれた長い廊下が現れた。
廊下の先には重そうな扉が見えていた。
ランデルとリナはお互いにうなずき、扉を開けた。
中には、大きな資料室が広がっていた。
「これが資料室か...。手がかりがここにあるはずだ。」
リナは目を輝かせながら古びた本の山を見つめた。
「こんなにたくさんの古文書が...。うーん、どれから調べればいいんでしょうか。」
ランデルは手を伸ばして一冊の古文書を取り上げた。
「とりあえず、目に付くものから調べてみましょう。リナさん、この棚の文書を調べてもらえますか?」
「わかりました。でも、文字が古すぎて読めないかもしれません...」
「大丈夫、わからないものは俺に見せてください。」
二人は各々の場所で古文書を手に取り、熱心に調べ始めた。
そしてついに
「これだ!」
とランデルが声をあげた。
「見つけましたか!?」
「はい、これにブルージュエルに関する情報が書かれています。」
リナは興奮しながら彼のそばにかけよった。
「それは良かったです!これでまた一歩前進ですね。」
ランデルは微笑みながら文書をリナに見せた。
「ありがとう、リナさん。君が一緒にいてくれて本当に助かります。」
「いえいえ、私の方こそ、ランデルさんと一緒に冒険できるのは幸せです。」
◇
帰り道、ランデルとリナは出口を目指して進んでいた。
しかし、その先の開けた場所で二人の前に大きな影が立ちはだかる。
それは、研究所に住み着いていたボスモンスター、巨大なホブゴブリンだった。
リナはつい後ずさりしてしまった。
「あれは…ホブゴブリン!? こんな巨大なの、見たことない…」
ランデルは杖を構えた。
「大丈夫、リナさん。一緒に戦えば、きっと大丈夫です!」
ホブゴブリンは二人に向かって唸り声を上げながら進んできた。
その途端、リナは剣を抜き、身構えた。
「ランデルさん、支援魔法を!」
ランデルはリナに支援魔法をかけると、彼女の周りに虹色の輝きがまとわりついた。
リナはその力を受けて一気にホブゴブリンに向かって突進し、切りつけた。
しかし、ホブゴブリンはその攻撃を受けてもなお、立ち上がってきた。
ランデルは
「任せて!」
と叫び、自らに支援魔法をかけると、身体中から輝く七色の光が放たれ、その勢いで全力でホブゴブリンに突進した。
杖でホブゴブリンの腹を思い切り殴りつけると、その衝撃でホブゴブリンは後ろへ吹き飛んでいき、壁に激突した。
その際、壁が大きく壊れて、煙とほこりが部屋中に舞い上がった。
視界が悪化する中、リナは心配そうに声をかけた。
「ランデルさん、大丈夫ですか?」
しばらくして、煙とほこりが晴れると、ホブゴブリンは壁のガレキの中に埋まり、完全に倒れていた。
ランデルはリナに向かって微笑んだ。
「大丈夫だよ、リナさん。これで安心して研究所を出られますね。」
リナはランデルに感謝の言葉を述べた。
「本当に、ランデルさんはすごいです。おかげで無事に出られそうです。」
◇
ランデルとリナは、支援魔法を使って高速移動し、驚くほどの短時間で街に戻った。
2人はすぐ、ベレニス議員の所へと向かった。
ベレニス議員はすでに彼らの帰還を待っていたようだった。
「ランデルさん、ご苦労様でした。そちらは、パーティの方ですね。」
リナは礼儀正しく一礼した。
「無事任務を完了することができました。こちらが古文書です。」
ランデルは古文書を提示し、簡潔に中身を報告した。
ベレニス議員は満足そうにうなずき、
「ありがとうございます。古文書の内容で有益なものがあれば、お伝えしますね。これは私からのお礼と、新たな情報です。」
ランデルはベレニス議員から手渡された情報を確認した。
「…港町のギルドがブルージュエルについて調査しているのですね。」
「はい。」
とベレニス議員は続けた。
「彼らなら、私達の知らない手がかりを知っているかもしれません。それを探るためにも、港町を訪れてみてはいかがですか?」
ランデルは深く頷き、リナとともに議員にお礼を述べ、事務所を後にした。
2人の次なる目的地は、南東の港町に決まった。