03 おっさんは研究所で無双する。
朝の光がランデルの部屋に差し込み、彼は目を覚ました。
スッキリとした気分で街に繰り出し、まずは情報収集を始めることにした。
街の中心広場や市場でのウワサ、冒険者ギルドの情報ボードをチェックしながら、ブルージュエルに関する情報を探し始めた。
そんな時、
「ブルージュエルのことなら、ショートが詳しいよ。」
と、魚を売るおばちゃんがランデルに教えてくれた。
「ショートさんって、議員の秘書の…?」
とランデルが尋ねると、
「そうそう、あの頭が良くて、いつも情報を集めているショートさんよ。最近ブルージュエルのことを調べているらしいわよ。」
と、おばちゃんは教えてくれた。
ランデルは感謝の言葉を言い、街の議事堂の方向へ急いだ。
広場の一角にそびえ立つ議事堂は、朝から多くの市民で賑わっていた。
彼は周囲を探して、秘書ショートの姿を見つけることができた。
ショートは、小柄で眼鏡をかけた青年で、メモを取りながら何人かの市民と会話していた。
ランデルは勇気を出し、彼の元へと近づいていった。
「すみません、ショートさんですよね?ブルージュエルに関する情報を集めていると聞きました。私もその宝石を探しているのですが、何か情報はありますか?」
とランデルは尋ねた。
ショートは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔になった。
「ああ、ブルージュエルのことですか。最近、私もその情報を集めています。どんな情報を知りたいですか?」
と、彼は興味津々にランデルを見つめた。
「実は、情報収集を始めたばかりなんです。なので、どのような情報でもありがたいです。教えていただけるなら、私にできることであれば何でもします。」
ランデルは正直に答えた。
「ふむ...。実は、私は議員の秘書として忙しく、街中での情報収集に時間がとれないんです。もしランデルさんがウワサの収集を手伝ってくれたら、私が知っている情報をすべて共有しましょう。どうですか?」
ランデルは少し驚いたが、迷わず
「分かりました。私もブルージュエルを探しているので、協力させていただきます!」
と答えた。
ショートは満足そうにうなずき、
「特に聞きたいのは3つのウワサ。それぞれ異なる情報源から得たものです。」
1つ目のウワサは、街の南の花屋で最近話題になっている。
2つ目のウワサは、市場で噂されているもの。
3つ目は、北門の近くの果物屋で耳にしたウワサ。
ランデルは、ショートから得た情報を頼りに、次々とウワサの源を探して街を回った。
しかし、どのウワサもブルージュエルの正確な位置や具体的な情報を得ることはできなかった。
「うーん、収穫なしか。」
ウワサの収集を終えたランデルは、ショートのもとへと急いだ。
街の議事堂に近づくと、彼の姿が見えた。
彼はランデルを待っているようで、目が合うとにっこりと微笑んだ。
「お疲れ様です、ランデルさん。どのようなウワサでしたか?どんなことでも教えてください。」
ランデルは頷き、収集したウワサを1つずつていねいにショートに伝え始めた。
彼は真剣な表情でランデルの話を聞いていた。
2人はそれから、どのような情報がブルージュエルを見つけるための鍵となるのか、じっくりと話し合ったのだった。
話が一段落すると、ショートは深く息を吸い込み、
「…実は、街の使われていない地下道に、旧ブルーローズ秘密研究所という場所があります。長い間放置されていたのですが、ブルージュエルと何らかの関係があるという情報をつかみました。」
「研究所で何が行われていたのですか?」
ショートは少し考えた後、答えた。
「詳細は不明ですが、一部の文献によれば、研究所ではかつて、モンスターや魔法の研究が進められていたとされています。ブルージュエルもその一部か、もしくはその研究の結果生まれたものかもしれません。」
ランデルは目を輝かせて言った。
「なるほど、それならば、そのモンスターや研究所周辺の物から手がかりを探すのは、意味があるかもしれませんね。」
ショートは笑顔で頷き、
「そう思います。しかし、旧ブルーローズ秘密研究所は危険な場所とも言われています。多くのモンスターが住み着いているとのこと。ランデルさん、もし行くのであれば、十分に気を付けてください。」
ランデルは胸を張って言った。
「大丈夫です。何とかなるでしょう。そして、ブルージュエルの手がかりを見つけてきます!」
ショートは感謝の気持ちを込めてランデルの手を握り、彼の冒険が成功することを願ったのだった。
◇
ランデルが街の使われていない地下道を進んでいくと、やがて目の前に巨大な扉が現れた。
それが旧ブルーローズ秘密研究所の入り口であることを、彼はショートから聞いていた。
「さあ、中に入るとしよう。」
息をつき、ランデルは扉を開けると、暗闇の中、薄暗い灯りが点滅していた。
足元からチロチロ…と小さな水の音が聞こえてきた。
彼が研究所の中を探索していると、突然、前から
「ゲギャギャ!」
という声がした。
ランデルの目の前に、ゴブリンが現れた。
しかし、ランデルは動じない。
彼は支援魔法を自分にかけた。
「ふんっ!」
と声を上げると、ランデルの体は輝き始め、強大なパワーが彼に流れ込んできた。
ズドンッ!と、ランデルは杖でゴブリンを殴りつけると、ゴブリンは跡形もなく吹き飛んだ。
「次はどこだ?」
と、ランデルは更に奥へと進んでいく。
すると足音とともに、複数の小さなモンスターが彼の周りを取り囲んだ。
「ハハ、この程度なら!」
とランデルは杖を振り上げ、大きな音とともに、一斉にモンスターたちを吹き飛ばした。
支援魔法の力は、モンスターたちにとって圧倒的だった。
「この調子なら、楽勝だな。」
ランデルは研究所の奥に進んでいき、古びた書物や文書が散らばっている部屋を見つけた。
「これが、ブルージュエルに関する手がかりか…?」
と、ランデルは部屋の中を探索し始めたのだった。
◇
研究所の深部、ランデルは最後の手がかりとして、薄汚れた古文書を見つけた。
そこにはブルージュエルと何らかの儀式について書かれていた。
これで全ての手がかりを集め終えた。
水路を抜け、再び明るい日差しの下に出ると、ランデルは安堵の息をついた。
持っている手がかりを確認しながら、街の議事堂に向かった。
ショートが待っているはずだ。
議事堂の大きな扉を開けると、中で待っているショートの目がランデルに向かった。
「ショートさん、旧ブルーローズ秘密研究所で、これらのものを見つけました。」
ランデルは手がかりとして持ってきたアイテムをテーブルの上に並べながら言った。
「こちらは薄汚れた古文書。ブルージュエルと何かの儀式に関して書かれているようです。他にもいくつかの手がかりを集めることができました。」
彼は目を細めて手がかりを確認し、興奮の色を見せた。
「ランデルさん、これはかなりの成果ですよ!これでブルージュエルの謎に一歩近づくことができるかもしれません。」
「はい、これで少しでも役に立てたなら嬉しいです。」
ランデルは笑顔で返答した。
ショートは手がかりを見つめながら、深く考え込んだ後、ランデルの方へと視線を移した。
「しかし、これらの情報だけでは、まだブルージュエルの真相は掴めませんね。でも、ベレニス議員なら何か知っているかもしれません。」
ランデルは興味津々で返事をした。
「ベレニス議員?」
ショートは頷きながら説明した。
「そうです。ベレニス議員は古代文明に関する研究を長年行っており、ブルージュエルに関する情報も持っているかもしれません。」
ショートは微笑みながら言った。
「彼女とは私も面識がありますので、明日、私が先に議員に経緯を伝えて、あなたとの面会を設定しましょう。その方がスムーズに事が運ぶでしょう。」
ランデルは感謝の意を込めて言った。
「それは助かります。私一人では簡単には会えないはずなので。」
ランデルは彼にお礼を言ってから、街へと戻っていった。
彼は、帰宅する前に街の西門へ行き、夜まで冒険者に支援魔法をかけ続けた。
◇
次の日、ランデルは議事堂の奥へと進んでいった。
彼は長い通路を歩き、ベレニス議員の事務室の前にたどり着いた。
ゆっくりとドアをノックすると、中から
「入って」
という声が聞こえた。
部屋の中に入ると、本棚に囲まれた大きなデスクの向こうに、銀髪の優雅な女性が座っていた。
「こんにちは、ランデルさん。私はベレニスです。話はショートから聞いています。」
「よろしくお願いします。ベレニスさんは、ブルージュエルについて何か知っているのですか?」
ランデルは礼儀正しく問いかけた。
ベレニス議員はゆっくりと立ち上がり、窓の外を見ながら答えた。
「ブルージュエルについての情報を求めるなら、私の元に来て正解でした。しかし、それは簡単に手に入る情報ではありません。お話するかわりに、あなたには頼みたいことがあります。」