11 おっさんはレプリカの在り処を探す。
「以前手に入れた報告書を読みましょう。」
三人は机の周りに集まり、ランデルが報告書を広げた。
ピラミッドの深部で見つけたその古びた文書には、金色の模様が施され、神聖な雰囲気を醸し出していた。
「これが、あのピラミッドで見つけたもの…」
「何が書かれているのか、早く教えてください、ランデルさん。」
「うん、気になるよな。」
ランデルはページをめくると、ブルージュエルのレプリカに関するセクションを指でなぞった。
「ここによれば、このブルージュエルのレプリカは…」
「どういうことなのですか?」
「ちょっと待って、リナさん。この文書はかなり難解なので、要点を整理してから話しますね。」
「そんなに特別なものなの?」
「ええ、アイラさん。本物のブルージュエルとは異なり、レプリカは人工的に作られたものらしいです。それでいて、その力は本物に匹敵するとか…」
「ほんとうにそんなことが可能なのですか?」
「それが、この報告書にはそう書かれています。しかも、このレプリカには特定の条件下で、特別な力が宿るらしい。」
「特定の条件下って?」
「それは…」
報告書によれば、ブルージュエルは真実のものとレプリカが存在し、レプリカは持つ者の心に天使と悪魔の声を届けるという。
「天使と悪魔の声…それは何を意味するのでしょうか、ランデルさん?」
ランデルは深く考えた後、静かに答えた。
「天使と悪魔、それは持ち主の心に善と悪、どちらの道を選ぶべきかを示すものと解釈できます。」
アイラが興味津々に質問した。
「だったら、レプリカを手に入れれば、自分の心の奥底にあるものが聞こえるようになるの?」
「もしかしたら、そうかもしれませんね。ただの声ではなく、選択を迫る強いものとして。」
ランデルが答えた。
リナが疑問を口にした。
「しかし、この真実のブルージュエル自体が謎に包まれていますよね。レプリカの存在が確認されても、その本物の力や意味についてはまだわかっていない。」
「その通り、リナさん。真実のブルージュエルについての情報は非常に少ない。一方、レプリカについての情報は報告書に詳しく書かれていますが、それをどのように活用するかは慎重に考えるべきでしょう。」ランデルが深く頷いた。
アイラは考え込んで言った。
「レプリカを手に入れることができれば、それが真実のブルージュエルの手掛かりになるかもしれない。」
リナは剣を横に持ちながら返事をした。
「確かに、アイラさん。でも、それを手に入れる前に、このレプリカの詳細やリスクをしっかりと理解する必要があります。」
ランデルが口を開いた。
「まずは、このブルージュエルのレプリカの存在とその詳細について更なる情報を集めること。そして、それを真実のブルージュエルの謎解きの手掛かりとして利用するのが賢明でしょう。」
三人は互いの意志を確認し合い、ブルージュエルのレプリカの謎と真実のブルージュエルの秘密を解明する冒険への第一歩を踏み出すことを決意した。
◆
「この先に、詳しく知っている賢者の家があるみたいですね。」
町のはずれにある小高い丘の上に佇む賢者の家へと向かう三人の姿があった。
町人たちの間で「古の知識を持つ」と噂される賢者の元を訪れるのは、ランデルたちにとって初めての経験だった。
町の通りを進む中、リナが不安そうに語り始めた。
「賢者さんの話、本当に信じていいものなのでしょうか?」
ランデルは微笑みを浮かべて答えた。
「多くの人々が彼の知識を尊敬している。我々もその知識を借りることができれば、ブルージュエルのレプリカに関する手がかりを得られるかもしれませんよ。」
アイラは少し不機嫌そうに言った。
「賢者っていうのは、ただのおじいちゃんじゃないの?」
リナはにっこりと笑った。
「確かに、ただのおじいちゃんかもしれませんね。でも、彼の知識は私たちにとって貴重なものですから。」
町を抜けると、小道を進んで賢者の家へと続く坂道が現れた。
途中、色とりどりの花々が道端に咲いていて、心地よい香りが漂ってきた。
「この辺りは本当に静かですね。」
と、リナが心地よさそうに言った。
ランデルも同感で、
「賢者がこの場所を選んだ理由、少し分かる気がします。」
やがて、小高い丘の上に建つ賢者の家が見えてきた。
三人はドアをノックすると、賢者が出迎えてくれた。
ランデルはブルージュエルのレプリカについて調べていると、賢者に伝えた。
「…ふむ。よく知っているね。あなたがたが探しているブルージュエルのレプリカ、かつて古代の神殿で重要な儀式に使用されていたものだよ。」
リナは目を輝かせながら質問した。
「その儀式とは、どのようなものでしたか?」
賢者は遠い昔を思い出すように話し始めた。
「その儀式は、神との対話を目的として行われていました。レプリカのブルージュエルはその際、中心として使われていた。」
アイラが興味津々で聞いた。
「その神って何者なんだ?」
賢者はゆっくりと答えた。
「それは古代の文献にも明確には書かれていませんが、神と人との間の橋渡しとして、ブルージュエルが役立っていたことは確かです。」
ランデルは深く感謝の意を表した。
「この情報、非常に助かります。」
アイラが最後に言った。
「じゃあ、次は古代の神殿に行くのか?」
ランデルは頷いた。
「そうだね。その場所を見つけるため、さらに情報を集めてみよう。」
三人は賢者の家を後にし、次の目的地へと向かうことを決意した。
◆
古代の神殿の場所を特定するため、三人は町の図書館へ向かった。
古文書や地図が所狭しと並ぶ中、リナは手にした書物に興味津々で目を通していた。
「こちらに、古代の神殿が山のふもとに隠れるように存在していたと記されています。しかも、特定の星座の下でのみ入口が現れるという…」
ランデルがうなずきながら言った。
「賢者の言っていたことと合致していますね。では、その星座が次に現れるのはいつなのでしょうか?」
アイラは不安げに口を開いた。
「そんなものを待っていたら、他の冒険者たちに先を越されちゃうかもよ。」
リナは目を輝かせて返した。
「その心配は不要みたいですよ。ここに、今夜その星座が現れると書かれています!」
三人は図書館を後にし、山のふもとに向かうことを決意した。
夜の山道は薄暗く、不安を感じる場面もあったが、ランデルの支援魔法の光が安心感を与えてくれた。
道中、リナが突然立ち止まった。
「ここ、何か感じませんか?」
アイラは疑念を抱きつつも、確認するように周囲を見渡した。
「確かに、何か異様な雰囲気だ。」
ランデルが魔法の杖を構えた。
「皆、警戒してください。」
やがて、影から幾つかの影が現れ、三人を取り囲んだ。
彼らの姿は、古代の守護者のようだった。
リナは両手剣を取り出し、戦闘の構えをとった。ランデルも支援魔法を唱え、リナとアイラの能力を飛躍的に向上させた。
「こいつら、邪魔する気だな!」
アイラは叫びながら、矢を何本も放った。
リナの両手剣は、一撃で守護者の一人を地面に倒した。
守護者たちは数で圧倒してきたが、ランデルが唱えた支援魔法の効果で、アイラとリナの動きは鋭くなり、二人は迅速に守護者たちを倒していった。
ランデル自身も杖を振りながら、守護者たちと戦った。
数分の戦闘の後、守護者たちは全て倒れ、周囲は再び静寂に包まれた。
リナが息を整えながら言った。
「これが古代の神殿の試練なのでしょうか?」
ランデルはうなずき、アイラに感謝の言葉を述べた。
「二人のおかげで乗り越えられましたね。」
アイラは小さく笑って返した。
「何を言ってるの。これも一緒に戦う仲間としての役目だよ。」
三人は再び神殿の入口を目指し、夜の闇の中を進んでいった。