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01 おっさんは今日も「支援おね」と言われ、支援魔法をかけ続ける。

「ランデルさん、今日もお願いします!」


冒険者の少年が元気よく叫んだ。


彼の背中には大きな剣が、顔には小さな古傷があった。


ランデルはにっこりと笑って、


「もちろんだよ。頑張ってね!」


と答えながら、彼の身体に虹色の光を纏わせた。


「ありがとうございます!まってろよリビングメイル!!」


その冒険者は元気よく、風のような速さで西門を出て行った。


街の西門で、ランデルはいつも通りの場所に立っていた。


そこには、彼の支援魔法を受けたいと待っている人たちの列ができていた。


次に、小さな女の子が二人駆け寄ってきた。


一人はちょっと怖いようで、友だちに手を引かれて目を閉じていた。


ランデルは優しく彼女の頭を撫で、


「大丈夫だよ、怖くないから。」


と言って、彼女にも魔法をかけた。


女の子はキラキラとした目で


「ありがとう、ランデルおじさん!」


と言って、元気に走っていった。


ランデルの周りには、彼の魔法を受けたいと思う人たちが絶えず集まってきた。


彼は、その場所で黙々と支援魔法をかけ続けることで、多くの人々の心に温かい光を届けていた。


ランデルのジョブ適正は魔法使いだが、なぜか支援魔法しか覚えることができていない。


若いころの彼は


「俺、才能ないのかな……。」


そう思って悩む時期もあったが、


「くよくよしても仕方ない!俺ができることをしよう。」


と、街の西門で支援魔法をタダでかけはじめた。


そしてあっという間に20年が過ぎ、ランデルの支援魔法は街でウワサになるほどに強力になっていた。


例えば、彼の支援魔法の効果「物理攻撃に魔法ダメージを一時的に上乗せ」は、通常の剣でさえミスリルやオリハルコンを真っ二つにするような、強い一撃を可能にしていた。


また、「移動速度・攻撃速度を一時的に高める」魔法で冒険者は瞬く間に走り抜け、敵が一度攻撃するまでに何十回も攻撃することができた。


さらに、「最大HPを一時的にアップ」の魔法は、体力が少ない冒険者でも、いつもの数倍の体力を一時的に持つことができた。


そして「防御力を一定時間向上」の魔法では、通常なら痛みを感じる攻撃も、まったくダメージを受けなくなっていた。


ランデルがいる西門は、今では多くの冒険者が訪れる名所になっていた。


毎日、冒険者たちは彼のもとでその強力な魔法を受け、無事にクエストを完了して戻ってきた。


勧誘は一切来なかったけれど、ランデルはそれで満足していた。


彼の目的はシンプルで、ただ人々のために自分の魔法を使い続けることだけだった。


そして、その積み重ねが少しでも誰かの役に立っていると感じることが、彼にとって最も価値のあることになっていたのだ。



ランデルは青空の下、今日も西門近くに立っていた。


彼の近くにはリナという名の新米冒険者がいた。


瞳が大きく、ゆるふわの髪が風になびいていて、リボンがとても似合っている少女だ。


「ランデルさん、今日もよろしくお願いします!」


リナがピンク色の頬を膨らませながら頼んだ。


ランデルは微笑んで言った。


「もちろんだよ、リナ。準備はいいかい?」


彼の杖から緑色の光が出て、リナに触れた。


「うわっ、この力…すごい!ありがとうございます!」


リナは驚いて体を見つめた。


村の外では、リナが普段戦っているスライムがいた。


通常、リナはそのスライムに何回も攻撃をしないと倒せなかった。


そして、攻撃を当てられると、いつも痛みを感じてしまう。


しかし、今日は違った。


ランデルの魔法のおかげで、リナの速度は格段に上がり、一撃でスライムを消し飛ばしてしまった。


スライムからの攻撃も、彼女には全くダメージを与えることができなかった。


リナは興奮して言った。


「信じられない!普段はこんなに楽には倒せないのに!」


夕方、リナはランデルのもとに戻ってきた。


「本当にありがとうございます、ランデルさん!この魔法の力、素晴らしいです!」


彼女の目はキラキラと輝いていた。


ランデルはうなずき、ほほえみながら言った。


「それを聞けるのは嬉しいよ。冒険者の皆さんがもっと楽にクエストをこなせるように、これからも支援魔法をかけていくよ。」


太陽が沈む頃になっても、ランデルは街の西門に立っていた。



別のある日、リナはランデルから支援魔法をもらい、森の中のモンスターと戦っていた。


彼女の髪は太陽に輝きながらゆるふわに揺れていた。


緑のリボンが髪にキラキラと輝いていて、まるで小さな勇者のよう。


「よーし、今日も頑張るぞ!」


とリナは元気に叫んだ。


ところが、スライムを何匹か倒すと、リナの動きが少しずつ鈍くなり、彼女の攻撃もだんだんと弱くなっていった。


そして、スライムに囲まれてしまった!


「うっ、もう…力が…!」


彼女は思わず肩を落とし、目を細めた。


その時、リナはランデルの支援魔法の力を思い出した。


彼女は力を振り絞り、森を駆け抜け、街の明るい西門に向かった。


「ランデルさん!支援お願いします!」


息を切らしてリナが叫びながら走ってきた。


ランデルはにっこりと笑って言った。


「もちろんだよ、リナ。」


彼の杖から緑の光が出て、リナの体を包み込んだ。


すぐにリナの体に力が戻ってきた。


「ありがとう、ランデルさん!」


リナは目を輝かせて言った。


リナは再び森へ戻り、スライムたちを何匹も倒した。


彼女は戦闘が終わった後、ランデルにお礼をいい、手を振って街に入っていった。


夕方、ランデルはまだ西門に立っていた。


彼の周りには「支援おね!」と叫ぶ冒険者たちが並んでいた。


ランデルは一人一人に支援魔法をかけ、彼らの冒険をサポートしていた。



夜の酒場は、冒険者たちで賑わっていた。


中には、今日もランデルの支援魔法を受けた者たちが多数いた。


木のテーブルと椅子がぎっしりと並ぶ中、あちらこちらで賑やかな会話が交わされていた。


「あのランデルの支援魔法、マジで助かるよな!」


と、鎧を着た大男が友達に話しかけていた。


「本当にそうだよ。あの魔法があれば、怖いモンスターも怖くないわ!」


と、隣に座っている女のシーフが笑顔で答えた。


リナも友達と酒場の隅で話していた。


「今日もランデルさんのおかげで、大量のスライムを倒せたよ!」


と、彼女は嬉しそうに話していた。


「リナ、お前もランデルの魔法を受けたのか?」


と隣の席から声がかかった。それは、町で有名な剣士だった。


「ええ、もうランデルさんなしでは考えられない!」


と、リナは笑顔で答えた。


剣士もにっこりと笑って言った。


「俺たちもだ。ランデルさん、本当にすごいよな。」


そんな中、バーテンダーがグラスを磨きながら、微笑んでみんなの会話を聞いていた。


「ランデルさんは、本当にこの街の宝だな。」


と、彼は心の中で思った。


酒場の中は、ランデルの支援魔法のおかげで、今日も一日を乗り越えた冒険者たちの笑顔と楽しい声であふれていた。



酒場から数ブロック先、小さな家の中でランデルは日が暮れるとともに、ベッドに横になっていた。


部屋はシンプルで、家具はほとんどなかった。


壁には、数冊の古い魔法の書や、使い古した杖がかけてあるだけだった。


酒場でのにぎやかな声や、彼をほめる声は、彼の耳に届くことはなかった。


彼はただ、その日に支援魔法を求めてきた冒険者たちの顔を思い出していた。


「今日もたくさんの冒険者に支援魔法をかけることができたな。彼らが少しでも安全に、そして効率よく冒険できたのなら、嬉しいな。」


ランデルは、自分の魔法がどれほど人々に影響を与えているのかも、どれほど規格外になっているのかも知らなかった。


彼にとって重要なのは、ただ一心に人々の役に立ちたいという気持ちだった。


「ちょっとでも役に立てたらよかったな。よし、明日も西門で支援魔法をかけよう。」


そう決意しながら、彼はゆっくりと目を閉じて、深い眠りに落ちていった。


次の日は、彼にとって運命の日になった。

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