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第12話 ついに……首都に進出です!

 晴れやかな朝。今日から首都ライブツアーがはじまる。


「絶好の興業びよりだわ!」

「今日公演するわけじゃないんだしさ……それにしてもそれはなんだい」


 あ、呆れた顔でラインハルトが見てる。


「私だって分からないようにするって言ったでしょ」

「だからって、それはないんじゃないか?」

「この完璧な変奏に何か文句ある?」

「あるよ! なんで男装なんだよ」


 今、私が着ているのは、紳士服。赤いコートに白いパンツ、そして山高帽。


「そしてさらに、会場に入ったらこの仮面をします」

「はあ……」


 とにかく、しゅっぱーつ! 馬車に揺られて私たちは、首都に向かった。

 このモンブロアから首都まで馬車でおよそ二日でつく。温泉さえあれば、本当は丁度良い距離の保養地だったのよね。

 そして一行は、首都へと辿り着いた。


「わあ……」

「みんなは首都ははじめて?」

「はい!」


 そっか、そしたら驚くのも無理はない。石畳の道にびっしりと並ぶ、様々なお店。大小様々なお屋敷の門、そして立派な庭。


「あそこは博物館よ。それから大神殿」

「うわぁ……何もかも大きくて綺麗で……圧倒されます」


 キャロルは馬車から身を乗り出して外を眺めている。


「こんなところで迷子になったらどうしましょう……」


 逆にセシルは大都市に不安になっちゃったみたいだ。


「さ、それよりみんな。みんながライブをする『スミレ座』がここよ」


 馬車が停まり、みんなを馬車から降ろす。


「はぁー……」


 みんな、お馬鹿さんみたいに口をあけて建物を見上げている。


「大きい……本当にこんなとこでやる気?」


 見かけによらず、気の小さいところのあるクリスティーナが私を振り返った。


「そうでもないわ。ざっとキャパは二百。今までの実力なら十分埋められる」

「ほんとにゃ? プロデューサー」

「ええ。だってここは首都だもの。人の多さが段違いよ。もっと大劇場があるし。ただ……」

「ただ……?」


 モモの耳がぴこぴこ動いている。


「今回のライブは無銭じゃない……つまり、入場料をとるの。そしてこの首都での私たちの知名度は皆無。だから初日は厳しいことになるかもしれない。それは覚悟しておいて」


 私もスミレ座の建物を見上げた。ライブ日程は五日。明日からここが、私たちの戦場になる……!


「さ、それはともかく……。まずは英気を養いましょう! 首都の有名レストランを予約してあるの」

「わぁい!」


 私たちの行く先はいつだって賭けの連続だ。でもその旅路を振り返った時、少しでもいい思い出であって欲しい。と、いうわけで美味しいご馳走いただきましょう。


***


「わわわわっ……こんなところ、大丈夫なんですか?」


 レストランに入った途端、アイラが焦った声を出した。


「大丈夫よ。個室だし、リラックスして」

「いや、そうじゃなくてお支払いとか! うちら地下ドルの来る店じゃないですって」

「ああ、今回は請求は私持ち。沢山食べてね」

「はぁ……」


 というかアイドルはめろでぃたいむしか居ないのだから、地下もなにもないのでは。


「おおお……おいしい……」

「気に入った? イルマ」


 いつもにこにこして、あまり生の感情を表に出すことのないイルマが大興奮している。


「私、お魚が好きなんですけど、どうやったらこんなにふっくらしつつ、しっとりと火を通せるのか……。この皮目を炙ってあるのも食感のアクセントになっていますね」


 イルマはテレビがあったら食レポいけそうね……。


「んぱーっ、プロデューサー! お肉がキタにゃ!」


 モモはお肉を見ると獣人の血が騒ぐみたい。

 私たちは、その後のチーズやデザート、食後のお茶まで大いに楽しんだ。


***


 そして翌日。今日は設営とリハです。朝食を終えてスミレ座に集まった私たちは、モンブロアから運んできた『めろでぃたいむ』の幕を広げた。


「さぁお客様をお迎えする準備をするわよ!」

「はい、プロデューサー!」


 いつも設営は私とスージーでは手が足りないから全員でやる。七人のメンカラで染められたこの幕を劇場の舞台後方に備え付けた。

 そこから入って貰った楽団のメンバーとの音合わせ。今回は気合いを入れてそこそこなの通った演奏者に来てもらったのだ。


「あ……今のところ走りすぎです」


 ここで采配を振るうのはラインハルトだ。ちなみに今回は絶対嫌だ、と言い張ってラインハルトはピアノを弾いてくれないので、細かなニュアンスを慎重に伝えている。


「ま、しょうがないか今親バレする訳にはいかないし」


 それは私も同じことなのだ。なので楽団が劇場入りしてからは私は仮面をつけている。


「じゃんじゃんじゃじゃじゃじゃーん」

「やーっ!」


 よし、ポーズが決まった。やばっ、かわいい。


「どうでしたか! プロデューサー」

「うん、よかった。やっぱり『めろでぃたいむ』は宇宙一尊いよ!」

「ありがとうございます!」


 さー、来てくれ客。首都ライブの成功如何によって、今後の運命が決まると言っても過言じゃない!

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