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第11話  遠征ライブだドン!

「こんにちは! 『めろでぃたいむ』です!」

「こんにちはー!」


 路上ライブの場所も大体固定化してきた。市役所前、中央公園、教会の前、市場の跡地の四カ所だ。ゴミ拾いなどの奉仕活動をしながら告知をし、週末の休息日にライブをする。


「うあああああ! ウリャ! オイ!」


 その最前で奇声をあげているのが私。テンアゲでいきまーす!


「なんだあの人……」

「光ってる……?」


 今の私は片手に三本ずつ、そして首から一本ペンラを下げ、激しく上下にジャンプをしている。ゆ……指がつりそうなんじゃが! でも、誰か特定の一人を推す訳にはいかない。なぜなら私はプロデューサーだから……。


「「よっしゃー! いくぞー! タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー!ダイバー! バイバー! ジャージャー!」


 このペンラはただいま試作中のもの。中に魔石を入れて、私のスキルに反応して各自のメンバーカラーに輝くようにしてある。ただ少し重いので、まだ改良の余地あり。


「ありがとうございました~。また会おうね!」


 ふう、ライブ終了。次は物販だ。


「この紫のポーチをください」

「ありがとうございます!」


 相変わらず、ちょっとしたバザーみたいになっているけど。それにしても……。


「……年齢層が高い」


みなさん娘感覚、下手すりゃ孫って感じだなぁ。そんな私に、ラインハルトが声をかけてきた。



「リリアンナ、それはしかたないよ。街に若者がいないんだもん」

「そうなのよねぇ……」

「巡業してみようか」

「えっ」

「このモンブロア周辺の街に若者は働きに出ているんだろう? 巡業したら地元懐かしさで足を止めてくれるかも」


 まさかの提案。そうかツアーか……。


「……やりましょう!」


 こうして『めろでぃたいむ』初のツアーが決定した。


***


「ええーん、イルマ! トランクに荷物が入りきらないにゃ」

「よけいなもの入れすぎなのよ、モモ」


 ツアーが決定してから、めろでぃたいむの寮はどったんばったん大騒ぎ。

 日程は、二週間。三つの街を移動して、チラシを配りつつの清掃活動、そしてライブをする予定。いつもライブに来てくれているお客さんにも告知して、お子さんなどに知らせてもらうことにした。


「ちょっといいっすか」


 ツアー直前になって、私のもとにルルがやってきた。


「あの、宿泊先なんですけど」

「ああ、ルルは宿の部屋は別室よ」

「良かった……。着替えとかどうしようかなって思ってました。余計な手間をかけてごめんなさい」

「いいのよ。わたしたちのグループにとってルルは大事な存在だもの」


 他にもセシルとクリスティーナの部屋を分けるとかやってるし。


「ルル! 私たちに合わせようってし過ぎないで。ルルはやりたいことをするためにここにいるんでしょう?」

「……はい!」


 そしてツアーがはじまった。この世界の一般的な服装からは派手で変わって見えるアイドル衣装に、立ち寄った街の人は驚いていたが、ライヴには物珍しさからか、そこそこの人数が集まった。


「こんにちは! 『めろでぃたいむ』です」


 そしてライブが始まる。やはり年齢層が一回り若い。かまわずに私はいつも通りに湧いた。


「イェッ! タイガー!」


「ありがとうございましたー! 私たちは、普段モンブロアのワーズで活動しています。お立ちよりの際には、会いに来てくださいね!」


 キャロルのMCも完璧。そして物販がはじまる。


「この黄色いリボンキーホルダーを」

「はい」

「母ちゃんから、ワーズから女の子たちが来るって聞いてたんですけどかわいいですね」

「でしょう~?」


 お、モモ推しですか? やはり若い男性は反応が違う。これで風向きが変わるといいな。


 こんな風に、街を回りながら私たちの初ツアーは終わった。


「『めろでぃたいむ』です! 次のライブは週末、市役所前で!」


 そしていつものアイドル活動がまた始まった。だけど、少しライブの様子が変わったのだ。


「うちの息子が、なかなか帰ってこなかったのに今日は帰ってきて」

「あら、うちの娘もよ」


 休みがあってもワーズに寄りつかなかった若者が、休日には帰ってくるようになったのだ。帰ってもやることなければ、移動するのも疲れるしね。

 親御さんなファンの皆様は喜んでるし、よかったよかった。


 人知れず、各ご家庭の絆に役立っている『めろでぃたいむ』だが、ひとつクリアすれば次の課題が出てくる。という訳で、今日はミーティング!


「グッズ収入が増えたので、やっとみんなにお小遣いくらい出せるようになりました。でもまだ私の持ち出し分が大半ですし、もっと規模も大きくしたい。ってことは、更に稼がなくてはならないということです」

「そうだね、リリアンナ。モンブロアへの貢献もまだまだささやかなものだしな」

「ええ、これから必要なのは……めっちゃ積むヲタですわ」


 『めろでぃたいむ』はまだ、いける。だってあの輝くメンカラを背負っている子たちですもの! その為に、めっちゃ積むヲタは必要。


「積む……ってグッズとかすごく買うことですよね」

「そうよ、キャロル。そういう強い、重課金ヲタが今後はつかないと」

「でも、皆さん生活もあるし……そんな」


 キャロルは心配そうにしている。彼女の気持ちは分からなくもない。私は重課金ってほどじゃないけど、やっぱりドルヲタするために無理したのが死因だったし。


「大丈夫、世の中には生活を圧迫しなくても、趣味を満喫できる人はいますから」

「……そうなんですか?」

「ほら、貴族とか大商人」

「あ……でも私たちのグループを好きになるでしょうか」


 キャロルの頭の中では貴族ってのは高尚な趣味を追いかけていると思っているようだ。

 でもね、案外貴族って流行追っかけてるものなのよ。暇な人は暇だし。そして商人は大商人であればあるほど、そんな貴族の流行に敏感だ。


「大丈夫! 引きつけちゃえばいいのよ、こっちからね。……という訳で! 首都ライブを決行します!」

「首都ライブ!?」


 ミーティングメンバー全員が驚いてこちらを向いた。


「首都の劇場『スミレ座』を押さえました。私たちのパフォーマンスで天下をとりましょう!」

「ええ!」


 みんなに気合いが入った瞬間、叫び声がした。


「ちょっと待った!」

「……なによラインハルト」

「首都って知り合いばっかりじゃないか。僕は表に名前は出てないからまあいいとして……リリアンナ、一応君は『療養』しているはずだろう? 父上に見つかったりしたら厄介なことになるんじゃないか?」


 そうね。あのお父様のことだもの。今度は座敷牢行きかも。でもね。


「その辺は、考えております」


 勢力拡大、新規顧客を掴むための首都ライブ、絶対に成功させてやりますとも!

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