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大学の帰り道

作者: 栄啓あい

3限。

私は何か聞いていたようだ。

人を眠らせるのが得意かのような声を持ったおじさんが、何か熱弁している。

そうだ。思い出した。講義を聴きながら|(もともとちゃんと聞くつもりもなかったが)寝てしまったのだ。

一応内容も聞いてみる。

ん?どこやってんだこれ。

周りを見渡してみると、私の見たことないプリントをみんな持っている。

いつ配った?授業開始の時に取りに来いみたいなこと言っていた気がする。

すでにその時眠かったから覚えていない。

とにかく、このままではすることがない。

どうしよう。と思って状況を書きだしたのが今だ。

いつのまにか授業は終わって、レポート用紙が配られた。

そしてt、急に皆が何か書きだした。

先生が高騰で言っていることを写していたらしい。

慌てて私も写そうとした。

どうやら、レポート用紙に課題をメモっていたらしい。

一応メモったが、どういう流れでそうなったのか全然わからなかった。

そのうちに、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

皆が帰る準備をし、それぞれ出ていった。

先生に先ほどのプリントをもらおうとしたが、先着がいたし、いまさらもらうのも面倒だったので諦めた。

室内にはまだ、自分が話したことある人がいた。

しかし、特に仲良くなっているわけでもないので、見ないふりをして一人で教室を出た。

スマホを見ると、1件のLINEがあった。

「一緒に帰らない?」

しかし、それは授業中に来たもの。

「今どこいる?」

そう返すと、

「もう駅まで来ちゃった。そのまま帰るね」

と来た。

いや、こっちは授業に出席してたんだよな。

ほとんど聞いてなかったけど。

まあマイペースな友達はおいといて、本当に眠かったので、直帰したく、いつものようにイヤホンをつけて、音楽をかけ、何も考えずに歩き、電車に乗り、寝た。


突然の虚無。

私はなんで大学という場所に行っているのか。

音楽を聴いても、考えることをしても、何も楽しくないし、救われない。

小説を書こうか、曲を作ろうか。それも面倒くさい。

どこか歩いたり、旅に出たりしてみようか。

それをして何のメリットがあるのかもわからない。

何をもってこの世の中で生きているのだろうか。

自分の存在すらわからなくなった。

こういったことは初めてではない。

むしろ、定期的にあることである。

こうなると、何も考えずに家に帰るしかなくなる。

足が他に動かないのだ。

寝ようとした。

しかしそれも虚無に阻まれて出来ない。

まるで、白濁とした靄に飛び込むように。

そして、消えていくような気持ちになっていく。

そのうちに、家の最寄り駅について、自転車に乗っていたようだ。

周りはまだ明るい。

普段より早く帰ってきてしまったため、夕焼けチャイムが聞こえる。

小中学生が帰っている。

高校生も見える。

私も、年取ったんだな。


大学生になって、自由になっていったのは実感する。

しかし、小中学生の頃はなにをしていただろうか。

今でも思い出したくない。今になって考えたら、私の扱いはひどかった。

私はその中で自由に生きているつもりだった。今思うとおかしいことはたくさんあった。

そして、私には絶対に合わなかった、地元同士のつながり、そしてその場限りのノリで生きているような人と関わっているのはバカらしいと思い、絶対に戻りたくないと思い、記憶とつながりをほとんど絶縁した。しかし、高校の時はどうだっただろうか。

高校でも私は隅にいた。だけど、何もしてなかった。

授業は寝ていたし、人との関わりも最小限にしようとしていた。

運よく仲良くなった友達もいたが、あるきっかけからほとんど全く話さなくなった。

そして私は今まで「話しかける」ことはあっても、「話しかけられる」ことはなかった。

積極的に自分からいかないといけないと思って、いったらいったで、結局踏み込みすぎたり、広げすぎりしてまた失敗した。

そして私は、ネットにおぼれていった。

あらゆるものを許容してくれる世界。ここにハマってしまったらいけない。わかってる。でも、もう戻れなかった。

それが心強かった。

だから、一人で高校を卒業しても、怖くなかった。

そして現実世界も充実していると思っていた。

どうだろう。

やっぱり私は今何をしていたのかわからない。

何から逃げたいのか。何にとりつきたいのか。そんなのはもうわからない。

ただ、自転車を走らせ、どこかに向かっている。どこに向かっているかわからない。赤黒く塗られた闇の世界かもしれない。青白く照らされた虚空の世界かもしれない。

でもやっぱりそんなことはなくて確かに家に向かっていて、その毎日から逃げることが出来ないのである。

こんな現実が好きであり、嫌いである。

私は結局自分というものの結論を出せないまま今日も生きていると思っている。

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