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7th BET『精霊を支配する者』 8

 無事に水の都、ベイルーンに到着した二人。


 実は、一番怖かったのは往路ではなく帰路だった。なにせ魔物は相変わらずどこにいるかわからないし、魔よけの水も完全に浄化してしまっていたのだ。

 神剣も、また24時間の休憩に入っているため、魔物に襲われたら今度こそひとたまりもなかったが

今回も幸運に恵まれたようだった。

 人助けをすると運がよくなる。凛の持論もあながち間違いではないかもしれない。


 城に到着すると、二人は手厚い、と呼ぶのもおこがましいほどの盛大な歓迎を受けた。

 と言っても、それは二人を湛えるものではなく、単なるお祭りだった。

 水が浄化されたことにいち早く気付いた城主は、すぐさま水を市民に開放した。町中はお祭り騒ぎとなり、当の立役者である二人に気づく者はいなかった。


 事情を説明するため、二人は城に赴いた。呆れた話だったが、凛と顔なじみの門番はすでに酒が入っているようで、気軽に彼らを場内に通してくれた。

 取次ぎを頼もうと思ったのだが、仕方なく自分たちで場内を散策する羽目になった。


「みんな、凄い浮かれようね」


「無理もないさ。つい今朝がたに水の供給を止めるといった直後に、全開放だからな。パチンコ屋のグランドオープンでもここまでの祭りにはならねえよ」


「きっと、ノーベル賞の受賞でもここまで大騒ぎにはならないわね」


 不意に沈黙が訪れた。

 こういう何気ない会話の中で、改めて二人が生きてきた世界の違いというものを実感するのだった。

 こちらの世界に来てからというもの、息をつく間もないほどの騒動の連続だったのだ。こうやって、落ち着いて普通の会話をする機会などなかったに等しい。


「冴木君。やっぱりあなたって、社会不適合者ね」


「否定はしないさ。でも、先生だってそうだろ?」


「確かに、そうかもしれないわ」


 少しだけ口元が緩む。不思議な感覚だ。

 この世界に来てからというもの、感情の起伏が激しくなっている。実験室に籠ってばかりの生活から、急に新しい刺激だらけの世界にやってきたせいだろう。

 しかもその刺激たるや、地球では経験できないものばかりだった。

 自分の中に起こっている変化に、少しだけ鈴は戸惑っていた。しかし、不思議と嫌な気分ではなかった。

 きっと、目の前にいるこの男のせいなのだろう。


 凛の瞬間記憶力は並ではなかった。一度訪れただけの城内を、その複雑な構造をものともせずに城主の部屋にたどり着いて見せたのだ。


「多分、みんなここにいるんじゃねえかな」


 軽くノックすると、中から顔を出したのは意外な人物だった。


「アル!?」


「おじちゃんに…天使様!!」


 ドアを開けたアルは、二人の顔、というより鈴の顔を認めると輝かんばかりの笑顔になった。


(どうでもいいけど…天使様はさすがに恥ずかしいわね…)


《命の恩人で、目の前で奇跡を起こされました。しかも今度は町まで救われたのです。そう呼ばれても仕方ないのではないですか》


 ヘスのフォロー、というか追撃に、鈴はしぶしぶ現実を受け入れざるを得なかった。

 城主の部屋には、予想通り城主とベルも待っていた。まさか誰の案内もなく、自力でいきなりやってくるとは思ってもいなかったようで、二人は大層驚いていた。

 中でも城主の表情は、完全に感極まったものになっており、今も能力を使っているではないかというほどに息も絶え絶えに感謝の言葉をまくしたてていた。


 城主がようやく落ち着きを取り戻すのを待って、二人は事情を説明し始めた。

 といっても、勝負の経緯などは細かく話すわけにもいかず、結局は持ち帰ってきた『成果』を披露することから始めた。


「というわけで、これがあんたらを苦しめ続けてきた『精霊様』の本体だ」


 ドンっと、豪快に置かれた大瓶の中に浮かぶのは、手のひらサイズの小さなウナギだった。


「「「え…?」」」


 3人とも、理解が追い付いていないようで、一様に目を点にしてその生物を凝視していた。


「ほら、自己紹介くらいしたらどうなんだ?」


 言うと凛は、瓶のふたを開けた。すると声は瓶の中からひっそりと聞こえてきた。


『…初めまして…水の精霊をやらせてもらっています、ウンディーネと申します』


 完全に憔悴しきった様子で精霊が自己紹介をする。

 というのも実は、ここに来る道中ひたすらに鈴の質問攻めにあい続けていたのだった。

 水の精霊の能力が水の電荷操作だということまでは突き止めたが、鈴の好奇心はそれだけでは満足していなかったのだ。

 結局のところ、どういった理屈で水の電荷操作をやっていたのか。そこが分からなければ、突き詰めて言えばそれは科学では説明できない現象、つまり『魔法』と呼ぶ以外になかった。

 そこに納得するまで、鈴は徹底的にウンディーネを追い詰めた。


―――以下、回想―――


「あなた、それだけ長く生きていて、自分の能力の原理も解明しようとしないなんて…少しは恥ずかしいと思わない?」


『いや、最初からそう言うものだと思い込んでいまして…』


「思考停止もいいところだわ!いい?当たり前だと思っていることに対して、疑問を持つことが科学の重要なところなのよ?それをあなたは何?『そういうものだと思い込んでました』ですって!?わかったわ、今から最初からあなたの能力を検証してあげる。まずは限界まで電荷の偏りを上げるところからやってみなさい」


『勘弁してください…周りの水が少ないと、力がうまく出せないんです』


「じゃあ、どのくらいの水があればどれくらいの力が出せるのか、説明して」


『いや…ちょっと…わかんないです』


「そんなことも検証しないまま、『水の支配者』なんて名乗ってた訳!?」


『あああ、ごめんなさい』


「ごめんなさいじゃないでしょ?いい歳して、って言ったけど、あたしよりもずっと年上なんでしょ?他に気の利いたことは言えないの?」


―――以上、回想終わり―――


 というやり取りが延々と繰り返されたのだった。

 力の大半を奪われた挙句、メンタルまでごっそりと削り取られてしまったというわけだ。


「こんな小さなウナギに、私たちは苦しめられていたってことかい?」


「ああ、残念ながらそのようだ。今でこそこんなに縮こまっちゃいるが、大量の水を支配していた時のこいつは、そりゃあ恐ろしかったぜ」


「私も一度は会ったことがあるからね。その時は、まさかこんなのが本体だなんて思いもしなかったよ」


「思い込みは誰にでもあることよ。でも、一度ネタが割れてしまえば、大したことはないわ」


『このような屈辱、生まれて初めてだ…もう、耐えきれぬ…くっ、殺せ…』


「ちょっと古いうえに、お前が言っても全然需要がねえよ」


 瓶を軽く蹴飛ばしながら、凛は話を続けた。精霊を殺さずにここまで連れてきたのは、何も皆に謝罪させるためだけではなかった。


「道中は逢沢先生の科学の時間で全部使いきっちまったからな。これからは俺たちの尋問の時間だぜ?」


『ヒイイイ、もう勘弁してください』


「「「「「「ダメ」」」」」


 5人の声が見事に重なった。


「まず、邪神について、お前が知る限りの情報を聞こうか?俺は聞き逃さなかったぜ。お前を作ったのは邪神様だって自分で言ってたもんな?」


『…』


 ウナギが沈黙する。よほどそのことを口にすることが恐ろしいのだろうか。


「さっさと言いなさい。さもないと、次はあたしの講義が始まるわよ?」


「それは可哀そうだわ。代わりにワタシが質問に答えてあげるから、勘弁してあげてね?」


 6人目の声が、急に部屋の中に現れた。

 ぞっとするような視線を声のした方に向ける二人のリン。この声には、聞き覚えがあったからだ。

 いつぞやと同じように、人の会話に自然と、しかし突然に乱入してくるこの声は…


「はあい。お久しぶり。元気にしてたかしら?」


「てめえ…!」


「いったい、いつの間に?」


 旧知の知人に挨拶するような気軽さで、《混沌の邪神》ケイオスは突如として領主の部屋に現れたのだった。

 その気配に、凛は慌てて領主たちに警告を発した。


「領主様、ベルさん!間違ってもこの女に手を出さないでくれよ…!」


 忠告しながら振り返ると、そこには呆然と立ち尽くす3人と一匹の姿があった。

 呼吸すらしていないようだが、死んでいるようでもない。それはまるで、時でも止められたかのようであった。


「ワタシ達だけの大事な時間よ?他の人達には邪魔されたくなかったから、少しだけ止まってもらったわ」


「どういう意味?きちんと説明して頂戴。時を止めるなんて、そんな馬鹿げた話を信じろというの?」


「あのねえ、逢沢鈴。こう見えてもワタシは神様なのよ?これくらいのことはできても不思議じゃないでしょ。それに、前に会った時にもいったわよね?質問にいちいち答えてくれるほど、世の中は甘くできていないわよ」


 なおも食い下がろうとする鈴を背後に押しやり、凛はケイオスに話しかける。


「どうした?この前のギャンブルなら、まだ続行中のはずだぜ?」


 凛は懐からルーレットを取り出して見せた。確かに、投擲した球は磁力にとらわれたまま盤上で静止していた。


「そのようね。前に一度赤のマスに入賞したところまでは覚えてるわよ?下界にドラゴンを連れてくるわけにもいかなかったから罰ゲームの内容は書き換えておいたの。お気に召したかしら?」


「ああ、おかげで先生と情熱的な一夜を共にできたからな…!」


「ちょっと冴木君!?あなたやっぱり何かしたの?」


 話がそれかけたところで、ケイオスは本題を切り出した。


「ワタシがやってきた理由は、さっきの逢沢鈴の質問に答えるためよ。前に別れ際に言ったでしょ?ワタシの生み出した精霊たちに勝負で勝てば、ワタシの正体を教えてあげるって」


「律儀なことで…本当に神様と言えど、勝負と契約は絶対、みたいだな」


「さあ、何でも質問してちょうだい?ただし…」


 ケイオスは虚空をくすぐるように、一本の指を立てた。


「ただし、質問は一つだけ。それに『YES』『NO』で答えられるような内容に限る。わかったかしら?」


「『あんたの正体を教えて』なんて質問ではなく『あなたの性別は女か?』といった質問しか受け付けないってことね?」


「その通り。理解が早くて助かるわ…」


 ふと、何かを思い出したかのように目を軽く開き、いたずらっぽい笑みを浮かべてこう付け加えた。


「そうそう。前回みたいに延々と作戦タイムで待たされるのも嫌だから、質問を考える時間は1分までにしてね?」


「邪神様は、随分とせっかちであられるなあ」


「さあ、あと50秒よ…?」


 ケイオスのカウントダウンを聞いて、鈴は即決した。


「冴木君。あなたに任せるわ。あたし、短期勝負の思考には向いてないの」


「…」


 いわれるまでもなく、凛の頭の中では無数の質問が飛び交っていた。最適な質問を探り、思考が疾走を始める。


(でも、『神の正体を探る』質問とは、いかなる問いなのかしら)


 神は、神である。それは、逢沢鈴が逢沢鈴であることと同じように、当たり前であり、疑問の余地のない事実のはずである。

 知るべき事実はどのような内容なのだろうか。身体的特徴?趣味趣向?それとも出身地か?しかも、その問いはYES/NOで答えられるほど具体的でなくてはならない。

 いざ考えてみると、途方もなく難しい問いかけであることが分かる。この難問に、凛は如何に挑むつもりなのか?

 目も閉じることなく、一心にケイオスを睨みつけたまま、凛はついに口を開く。


「あんたは初めて会った時にこう言ったな『50日後にこの世界を滅ぼす』って。それは本当か?」


 その問いに驚愕したのは、むしろ質問を聞いていた鈴だった。

 質問を受け取ったケイオスは、鈴の反応を楽しむように、じっとりとした間を取った後にこう返答した。


「YES」


「わかった。どうやら、俺たちは本当に戦わなくちゃいけないみたいだ。違った出会い方をしていたら、きっとデートに誘っただろうにな。残念だぜ」


「あら?またほかの精霊と勝負することがあれば、いつでもデートしてあげるわよ。楽しみに待っていて」


 そう言い残すと、ケイオスは現れた時と同じように唐突に姿を消した。

 下手をすれば、その場にいた全員が同じタイミングで瞬きをし、それに合わせるように消えたのではないか。そう思わせるほどに、一連の動作は自然で無駄がなかった。

 邪神の気配が完全に消えたのを確認し、凛は大きくため息をついた。しかし、息をつく間もなく鈴が詰め寄ってきた。


「冴木君。何であんな質問をしたの?あの女を倒すためにあたしたちはここに呼ばれたの。戦うための動機なんて、どうでもいいでしょう?」


「そんなことはない。俺は一番重要な質問をしたつもりさ。あの問いに『NO』と答えたのなら、少なくともそんなに慌ててあいつと戦う理由はなくなるんだ。制限時間の有無は、何よりも大事な情報だと思うがね」


「…」


 凛の返答に、鈴はしばらく黙考して吟味した。

 過ぎたことを非難する必要はない。何より、今回の質問を凛に託したのは他ならぬ鈴自身だった。それに、違和感が多少残るが、それほど無意味な質問ではなかったのも確かだ。

 鈴は深呼吸して、結論だけを告げた。


「次の質問は、あたしに任せてよね?」


「ああ、何事も順番は守らなきゃな。よろしく頼むぜ」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 突如として現れた嵐のような時間の後、すぐに領主たち3人と一匹の意識は元に戻ったようだった。

 まるで何事もなかったようにウンディーネに問い詰めようとするその姿に、鈴は本当に時を止めることができるのはないかと疑いを持たざるを得なかった。


 いずれにせよ、二人は一瞬の間にどっと精神力を使い果たしてしまった。

 ウンディーネへの質問どころではなくなり、なにも事情を知らない3人に説明するわけにもいかず、静かにその様子を見つめるしかできなかった。


 時が止まる直前の、鈴の問いかけにウンディーネが答え始める。


『私が創造主である邪神に生み出された際に与えられた能力、というか特性は3つです。一つ目は、触れた水を自在に操れる。二つ目は、契約によってその能力を他者に貸し与える。三つ目は、純粋な水の中でしか生息できない。私はこの世界の水源に産み落とされ、それ以降は、自分の巣を自分の能力で浄化してきて生きてきました』


「こいつの言ってることは、たぶん本当だ。水を汚されると、本当に苦しんでやがったからな」


「なんだか、そんな説明をされると、こいつもただ普通に生きてきただけなんじゃないかって思えてくるね」


 ベルが少し同情するような声を上げる。


「いいえ、こうやって小さな瓶に入っていればそれなりに生きていけてるのよ。周りに迷惑をかけずとも、生きる方法はあったはず。このウナギは、結局は自分の力に溺れたのよ」


「お、うまいこと言うねえ」


 断罪する鈴の言葉に、調子はずれの合の手を入れる凛。二人も、少しずつ調子を元に戻しつつあるようだった。


『私が創造主について知っていることは、多くはありません。名前は<ケイオス>。混沌をつかさどる神だと聞いています。主は、神界と呼ばれる場所で私を生み出し、この世界に放ちました』


「…はた迷惑な話ですな…」


 城主は心底疲れたようなため息をついた。

 つまりこの世界の仕組みを簡単に説明するとこうだ。邪神は空から魔物を降らせ、その魔物を退治するために人は精霊と契約を結ぶ。

 しかし、その精霊もまた、周囲を苦しめるための性を持って邪神によって生み出された存在だった。


「なんか、カジノの胴元をつぶしたと思ったら、さらに後ろに胴元を締め付けているヤクザがいました、みたいな話だな」


「言いえて妙ね。冴木君の言うとおりだわ。結局は、あの女がすべての元凶じゃないの!」


 憤慨する鈴。彼女は、どうやら凛とは違って利他的な面があり、他者に迷惑をかける行為を非常に毛嫌いする性格のようである。


「他に知っていることは?」


『…ありません』


「みたいだぜ?さあ、どうする?」


 聞きたいことを聞き終えると、凛は3人に問いかけた。


「俺は別にこいつに恨みも何もない。終わった勝負にあとでグチグチ言うような性分でもないしな。だが、あんたらは違う。ある意味、こいつのせいで散々苦しめられてきたんだからな」


 精霊が息をのむのが気配でわかった。

 つまり、凛はこう言っているのだ。『精霊の処遇は、町の皆に委ねる』と。


「生け捕りにしたのには、そんなわけもあったのね?あくまで裁きは被害者に権利がある、と」


「それもそうだが、他にも理由はあるさ。そもそも俺は生き物を殺すのが好きじゃないんだ。運気が下がっちまうからな」


「また、そんな非科学的な話をする…」


「もう一つは、こいつを殺すデメリットはあっても、メリットがなかったってのもあるな」


「それは、どういうこと?」


 鈴の疑問に答えたのは凛ではなく、城主達であった。3人は3人なりの答えを用意していた。


「儂は、そなたを罰しようとは思わぬ。そなたにもそなたなりの生きる理屈があったと理解できたからな。ただし、この場で新たに契約を結んでほしい。『二度とこの町の水に関わらない』と」


『…はい』


 ベルが続く。


「別に、あんたを恨んだことはないね。もともとそういう条件で納得して契約したんだ。騙されてたわけじゃないし、あんたの力のおかげで、町は魔物から守られていたのも事実さ。これはトークスにも言ったことだけどね。なんの代償もなしに、そんな力を行使できると思う方がおかしいんだよ」


『…ありがとうございます』


 精霊は、なぜか感謝の言葉を告げていた。


 最後のアルは、想像を絶する言葉を選んでいた。


「それじゃあ、僕とも契約してよ!」


「「「「『は?』」」」」


 精霊を含む全員が、間の抜けた声を上げた。

 当の本人はいたって真面目な顔である。むしろ、何に驚かれたのか理解できていない様子だった。


「だって、ウナギさんが死んじゃったら母さんも、そして他の精霊騎士も能力が使えなくなっちゃうんでしょ?そうなったら、困る人もいるんじゃないかな?」


「あ…!」


 鈴は、ようやく凛が精霊を生け捕りにした理由を理解した。

 というか、ベルの説明の時点で気づくべきであった。精霊の力以外に、人は魔物に立ち向かう術を持たないのだ。

 それを、アルは天性の勘の良さで理解していたのだった。


「父さんだって旅の途中で急に力が使えなくなったら危ないじゃないか。それに、僕もいつかは精霊と契約して騎士になりたかったんだ!」


「ちょっと待ちな、アル。あんたにはまだ早い…説明を聞いてたんだろ?こいつとの契約の代償は想像以上に苦しいんだからね」


「そんなことは分かってる。でも、僕もなりたいんだ。そして、父さんを探しに行くんだ!!」


「…!」


 アルの言葉には、年齢や経験を超えた強い説得力があった。


(子供の成長ってのは、いつも親の想像を超えていくもんだね)


 こんな状況でも子供の成長を感じてしまうのは、親の性であった。止めようという意志が、成長への感動にすり替わってしまっていた。


『少年、お主の父も私と契約したのか?』


「うん。今は神剣っていう、とても偉い武器を探しに旅に出ちゃったんだけど、僕も父さんの役に立ちたい!二人で一緒に、神剣を探すんだ!!」


 確固たる意志で、自分の夢を語るアル。

 精霊は、不思議そうな声で語る。


『神剣なら、そこの男がもっているだろう?何を探しに行く必要があるのだ?』


「「「!?」」」


 今度は、3人の驚愕の視線が凛に殺到する。


(しまった…口止めするの忘れてた…!)


 痛恨の表情で、凛は天を見上げた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 3人の慌て様と言ったら、鈴の正体がばれた時の比ではなかった。

 しかし、当の本人にとってはいい迷惑であった。なにしろ、3人の質問に答える術が全くなかったのだ。


「どこで手に入れたのですか?」

(この世界に召喚された際に、急に目の前にありました)


「前にここに来たときは持っていなかったけど、いつのことなんだい?」

(ここに来る前に、借金のかたに質屋に入っていました)


「凄い凄い!使って見せてよ!」

(あと20時間くらい待ってください)


 適当な嘘をつくのも面倒になるほど、3人は興奮し、恐縮しきっていた。

 それほどまでに、凛の手元にある使いづらくてしょうがない生意気な剣は、この世界で有名なのだった。


 嵐のような時間が過ぎ去って、出た結論はシンプルなものだった。


「頼む。アルをあんたたちの旅に同行させてくれないか?」


 アルの父は、神剣を探す旅に出たのだ。本物を持つ凛の噂が広まれば(そんなことを望む凛ではなかった。何より目立つことを好む性格ではないのだ)おのずと出会える確率も高くなるだろう。

 それに一人旅よりも、伝説の武具を持つ二人と一緒ならば安心というものだ。

 最後に、精霊との契約は凛の交渉で決着がついた。


「おいウナギ。お前の新しい主はこのアルだ。せいぜい尽くすことだな!」


『はい…承知いたしました…』


「わかってるんでしょうけど、今までとは主従関係が逆なのよ?呼吸を奪うとか、そんなことやったらあたしが許さないわよ?」


『レートはなるべく軽くしておきます』


「よろしくね、ウナギさん!」


『…よろしく頼む』


 年端のいかぬ少年にはせめて威厳を保ちたかったようで、精霊もそれなりの言葉づかいでアルに接していた。


「それじゃあ、アルをよろしく頼んだよ!」


「ああ、任せてくれ!必ず一流のギャンブラーに仕立ててやるぜ!」


《この純粋な少年が、お主のように育ったとしたら、世も末じゃの》


「任せてください。あたしが必ず一流の科学者に育てて見せます!」


《我が主、ベル殿は別に家庭教師を求めているわけではありませんよ?》


「よろしくね!おじちゃんに、天使様!」


 こうして、新たな旅の仲間を迎え、邪神討伐の旅は続くのであった。




もっと面白い話を書くため、ご協力をお願いします

率直な印象を星の数で教えていただければ幸いです


つまらなければ、遠慮なく星1つつけてやってください


感想も、「ここが分かりにくい!」「科学には興味ない!」など厳しい意見をお待ちしています

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― 新着の感想 ―
[一言] でもこの世界なら強い勝負師に育てるのは完全に間違いではないんじゃないかなぁ
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