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Episode 1 突然な、突然すぎる出来事

七月。


目が覚めた。暑い。まだ七月中旬ぐらいだっていうのに、壁にぶら下がってる温度計は37…ぐらいを示していた。目を凝らすのも億劫なぐらいだ。


「あ…今日で終わりか、学校。」


七月の暑さは布団をこれでもかというほど熱し、それは私を追い出しているかのようだった。



彼女は、長谷川(はせがわ) 香美(かみ)。東京()立天明高等学校に通う、()()()()()高校生だ。なんたって…


「ねね、明日から夏休みでしょう?三日間ぐらい”カミュ”ん家に泊まらせて!一緒にやろうよー!」


「ああ、ごめん、”ミルリア”。明日からはちょっとレベリングに集中したいから…」


今じゃ、かの大手企業「Ninetendon」の代表作、『バクットソード』をプレイしない者など、よほどのガリ勉や流行に乗れない頭の固い大人しか居なかった。

男子だろうと女子だろうと、小学生だろうと教師であろうと、多くがそれをプレイしていた。何でみんなこんなに魅入られているのか、それは謎だ。


そんな時代に、学校ではもはや本名呼びなど存在してはいなかった。彼女…カミュも含め、皆お互いを「バクソー」のユーザーネームで呼び合っていた。



「おーい、カミュ、空いてるか?」


「ああ、”タービン”。明日以降はレベリングするから無理。」


武田(たけだ) 太一(たいち)、タービン。彼も例に()れずバクソーのプレイヤーだった。


「んだよ、まだ何も言ってないだろ?まぁ、この話題の次に言おうとは思ってたけどよ…まあいいんだ、本題はこっちだ。ほら、これ。生徒会が。」


タービンが彼女の机の上に文字の羅列とちょっとした挿絵の入ったプリントを置いた。フォントやデザインの凝られたタイトルは「バクットソード on the GiiU(ジーユー) 四天王トークイベント」と記されている。


「『文化祭でバクソーイベントをやるから、それにスペシャルゲストとして出てくれよ、()()()()も誘って。』


…ってさ。」


「ああ、その話ね。」


「知ってたのか、なら話が早い。勿論……」


「断った。」


「はぁ!?」


彼は驚いた様子だった。無理もない。生徒会に招待されて、生徒の前で、しゃべって、目立つ。彼は目立つのが好きだから、こんな話を断るはずもなかった。それはカミュも同じだろうと思っていたのだ。


「舞台に上がって、カッコイイヘッドセットつけて、()()()でおしゃべりしながらバクソーをプレイする。それだけじゃんか。」


「それが苦痛なの。あんた私と一緒にプレイしたことあるでしょ?」


「あるな。」


「どうだった?」


「…黙り込んでた」


「そういうこと。トークしながらプレイなんてできるわけがないじゃん」


「ンなこと言ったって……」


「で、話すことはそれだけでしょ?じゃ、私帰るから…」


「ちょちょ、ちょっっ、、ちょっと待った!」


「何、まだ何かあんの?」



「熱中症には、気をつけろよ!」



ようやく夏休みが始まったと思うと気が軽い。「四天王」なんて呼ばれずに済むからだ。


突然生徒会がバクソーアンケートなんてやりだすからびっくりしたけど、まさかその次の日から勝手に「四天王」にされるなんて思ってもいなった。

タービンの話によると、学校全体のトップ4のランカーが選ばれて、四天王の称号が与えられた。その中でも私がダントツでトップだったとかなんとか…迷惑な話だ。それ以降、私に休み時間なんてほとんどない。


確かに、私は普通じゃない日常を夢見てた。普通に起きて、ご飯を食べて、学校行って、勉強して…それだけじゃない。小学校行って、中学校行って、受験して、高校にきて。これからまた受験をして、大学行って、就活して、就職して、何もないままおばあちゃんになって、死んでいく…


そんな、”普通”な人生は嫌だ。社会の歯車になるだけの人生は嫌だ。そう思ったことは確かにあったけど、普通じゃないってことはこうも疲れることだとは、考えたことはなかった。ずっと、普通だったから。


だけど、この”四天王となった今”は、もうすぐ”普通”になる。


私は普通と異常の狭間の中で、ようやくそれを知ることとなる。


私はいつも通り、あのゲームを起動した。



光に包まれた。まさにこれが「まばゆい光」ってやつなのだろう。


気が遠のいていく気がした。体も軽い。


ああ、まさか、死ぬのだろうか?


そんな、なぜ、突然?


熱中症だろうか?


ああ、タービンに言われたのにな。


私は すべてに拒絶された色(真っ白) の中で、静かに目を閉じた。



私はしばらくのけだるさから解放された。まるで…夢から醒めたような感じだ。


さっきまでの暑さによる不快さは心地よい風と共に抜けていった。


いや待て、風…?身体全体が風に煽られる。これは明らかに窓から入ってくるような風じゃないだろう。

ここは…屋外なのか?


恐る恐る起き上がって、辺りを見回した。


ここは、


どこだ?


いや、この景色はよく見知っている場所だ。


しかし、そこに広がっているはずもない景色だった。


ここは、


ゲームの世界…?


いや、まさかそんな、あり得ない。こんなのは夢に決まっている。今までだって何度か、夢に見たことがある。ここまで、はっきりとした感触はなかったが。


とりあえず、こんなところで寝っ転がってるだけじゃ勿体ない。なんせこんなにリアルなバクソーの世界の夢を見ているんだ。探索しなければ勿体ない。


そう思い歩いていると、街の外に出た。


ああ、なんと、美しいのだろう。


画面の向こうにしかなかった世界が、今、私の目の前に広がっている。太陽が、まぶしい。なのに、暑くはない。当たり前のような青い空も、木々や草原すらも美しく見えた。何もかもが現実とは違っていた。


そうやって景色にばかり気を取られて、前方が不注意になっていた。敵対モブである『ハムンバーガー』に遭遇してしまったのだ!


【ハムンバーガーが行く手を塞いできた!】


カミュ:でも、ハムンバーガー程度なら経験値の足しにもならない…って、武器がない!?


【カミュは武器も防具も装備していない!カミュは攻撃ができなかった!】


カミュ:まずい…!


【ハムンバーガーの攻撃!カミュは防具を装備していないので防御ができない!】


カミュ:う、やだ、いやあぁああ!!!


【メートが攻撃を引き寄せた!メートには全然効いていない!】


カミュ:え…?


メート:下がっててください!すぐに決着をつけますカラ!


【メートの反撃!ハムンバーガーに大ダメージ!】


【ハムンバーガーに勝利した!メートは経験値1を得た。】


謎の青年は、ハムンバーガーを撃破するなり、私の方へ歩いてきて、手を貸してくれた。私はその手を取り、立ち上がる。


「怪我は、ありませんか?」


「だ、大丈夫です……あなたは?」


「ボクはメート・アルタイル。メートって呼んでくださいネ。」


青年、メートは爽やかな笑顔を見せた。こんな良い男が、私の周りに果たしていただろうか……


「ところで、カミュさん、でしたっけ?あなた、”この世界の人”じゃないっスよネ?」


「え、あ。そう、だと思います」


妙だな。メートが、もし、「この世界の人」だというのなら。バクソーに「メート」なんていうCPUのキャラは歴代のシリーズ全体でも居なかったはずだ。

まあ、きっと。どうせこれは、私の、ただの夢なのだから。その程度はきっと、誤差なんだろう。


「……装備、武器も防具も持ってないっスよネ?そんなんで街の外から出たら、今みたいにいつモンスターに襲われるか分からないっスから。よかったら、この二つ。使ってください。」


彼は、見慣れない剣と盾を差し出してきた。強そうな見た目ではあるが、受け取っていいのだろうか…?


「そんなに身構えないでください、何か仕込んでるとか、後から代金を請求するとかしませんカラ、安心してください。」


彼の笑顔を見て、私はその裏に悪心が無いことを確信した。そして、


【カミュはテムの剣、テムの盾を手に入れ、そのまま装備した!】


「それで……もし、良かったらなんですが、ボクを一緒に連れて行ってもらえませんか?」


「連れて行く…って!?」


まさか、装備品までくれた上に、仲間になってもらえるなんて。目先のメリットのみに惹かれ、私はすぐにYESの選択肢を取った。


これから、壮大な冒険が始まっていくのだろう。何度もクリアしたゲームではあるが、実際に体験するなんて全く別の話だ。


そんな壮大な物語のスタートを飾るのは、最初の街を侵略しようとする、ボスモンスターだった。


「フフハハハハ……遂に私はこの街を乗っ取った!さあ人間どもよ、私を敬えよ!讃えよ!!」


「面白くなってきたじゃん、やるねぇ、私の夢…!さあメート、行こう!」


「あっ、ちょっほまっへふらはいね……あ、カミュさんも食べます?」


「…なんです、それ?」


「ぽっくり饅頭です。」


――――こうして、カミュとメートの冒険は始まった!!


「饅頭うま」

はじめましての方ははじめまして。はじめましてじゃない方はとまにちは(?)、トマTメイトことまとせぴという者です。

さて、この作品は中一の頃から書き始めた「ゲームのバグってどういう原理?」のリリメイク版です。皆さん私の作品を読んだことはありますか?ないことを願います。あんな今より拙い文章を延々と見せるのも私としてもお恥ずかしいものですので、思い切って一話から書き直しちゃおうということで今に至ります。

原作(?)で読むのをやめた方にも、戻ってきていただきたい、そのために書いた作品です、相変わらず拙い文章なのは変わりませんが、何とか、原作よりは良くなっているのではないかなあと思います。どうか、今後ともよろしくお願いいたします。では、またいつか。

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